第12話

#12
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2024/03/02 11:00
__それから数日…



私は西のヒーローの家で毎日、ご飯を作ったり、部屋の片付けをしたり


たまにロウたちの帰りがすごく遅い時もあるが朝になると家にいるので朝ごはんを作って待っていたり



なんやかんやこの生活に慣れてきた



「じゃあ、いってらっしゃい」


最近は玄関先まで見送るようになって眠そうな目をしたままみんなを送り出す


小柳「おう」


星導「今日は早く帰りますよ〜」


伊波「じゃあね!ミレイ!」


しっかりと一人一人挨拶を返してくれる


3人が外に出たあと、少し遅れてやってきたカゲツが玄関より私の方へと駆け寄ってくる


叢雲「ミレイ!僕今日焼きそば食べたい!」


「焼きそばね、わかった」


了承を得ると目をキラキラさせて「ありがとう!」と玄関へ向かっていった


子供みたい…



自分より年上のはずなのに何故か幼く見えてしまう



それもカゲツのひとつの魅力なのかもしれない


叢雲「行ってくる!」


ぶんぶんと手を振られたので控えめに手を振り返す



勢いよく扉を開いて外へ出ていった


「ふぅ…」


眠い…


思わずため息をついてしまう


今日は焼きそばかぁ


「あ、」



空の冷蔵庫を思い出す



「材料買ってこないと」







前回同様のスーパーへと向かう


今日は少し混雑していてそこそこの人が居た


「今日は焼きそば、明日は…ハンバーグにしよっか」


次の日、また次の日の献立を考える





「あぁ…重たっ…!」


レジを通して買い終わった荷物は両手いっぱいに塞がるほど多い


(人が居なくなったら弦に手伝ってもらんだから…)


5人の1週間分の食事を1人で運ぶのはさすがにキツイ


スーパーから少し歩くとかなり人通りの少ない住宅街を選んで思い足取りで歩く


目の前には小学生ぐらいの子どもがまだ2人ほど歩いていた


女の子1「今日うちのにゃんちゃん見に来るでしょ?可愛いんだよ!」


女の子2「もちろん!昨日から約束してたじゃん!」


楽しそうだ


前の2人を見ると私の幼少期はあんな明るいものでは無かったなと切なくなる



そして…この世界が物語上のものだということすら



日に日に実感が無くなってくる


今一緒に過ごしているロウやカゲツ…ライとショウまでも…


重たい荷物を再度つかみ直す


そして2人が角を曲がった後の事だった


女の子1「きゃぁぁぁぁ!!!」


大きな叫び声が住宅街を突き抜けるように響く


叫び声を聞いて小走りで先の角を見る


その先には目を見張るものが居た



「っ…!まさか、これって!」


手前で座り込んで震えている女の子達の前には大きなKOZAKA―Cが3体、立ちはだかるように居座っている


しかしその手には刃物のような武器



女の子2「あ……っ……!誰か……助け」


座り込んでしまった女の子は凍ったように足が震えて動けていない


恐怖により思ったように声を出せない様子だ


先程の叫び声で住宅街から人が出てくる


すると「こ、KOZAKA―Cだ!早く、ヒーローを!」を言ったっきり家の中へ戻って行ってしまった


目の前に子供がいるって言うのに…!


何をやっているんだここの大人は!!


しかし騒ぎで人が集まってくるが皆それを見るなり知らないフリをして逃げていくだけだ


KOZAKA―Cがどんどん近づいてきている


それと同時に子供達の泣き声と叫び声も大きくなっていく


(式神を…)


使え…ない…?


これを一般の人に見せたらどう思われるんだろう


みんな呪術について知識があるのかな


でもロウは知ってた


この情報が本部へ行けば"私"は…



ダメだ!


余計な心配と考えが浮かんでしまう


結局、私は所詮一般人だ


なんも強くなんかないのだ


自分のことを1番に心配して、自分の事しか考えられない





ヒーローなんか、向いてない






そう思っていたのに




KOZAKA―Cが彼女たちに刃を振りそうとした瞬間





気づいた時には私の足は勝手に動いていて





両手に握っていた荷物は放り投げて女の子の前へと立ち塞がっていた




後ろを守るように両手を広げる



女の子1「え…?」




ぎゅっと、覚悟をして目を瞑った

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