第12話

第12話 未開封
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2026/02/11 07:54 更新
放課後。


珍しく、タイミングが重なった。
葛葉達は職員室。
教室には、二人。
俺と――あいつ。
黒瀬依央
黒瀬依央
(今だ)
胸がうるさい。
ポケットの中の冷たいペットボトル。
ちゃんと未開封で、キャップも閉まってる。


何もしていない。本当に何も。
なのに、心臓が罪悪感みたいに脈打つ。
黒瀬依央
黒瀬依央
なぁ
声が少し掠れる。
あいつが振り向く。
(なまえ)
あなた
あれ、黒瀬
笑うな、そんな顔で。
黒瀬依央
黒瀬依央
これ
黒瀬依央
黒瀬依央
余ってたから
嘘だ、余ってない。
あいつは一瞬だけボトルを見る。
それから、俺を見る。
(なまえ)
あなた
くれるの?
疑いゼロ。
その目が、たまらない。
黒瀬依央
黒瀬依央
いらないなら別に
逃げ道を作ってこいつを試す。
受け取るかどうか、信じるかどうか。
数秒。
あいつは、
(なまえ)
あなた
ありがとう
受け取り、指が触れる。


一瞬。
黒瀬の思考が止まる。
黒瀬依央
黒瀬依央
(受け取った)
本当に、疑わずに。
キャップに手をかけ、開けようとする。


その瞬間。
俺の胸が、なぜかぎゅっと縮む。
黒瀬依央
黒瀬依央
(待て)
なんで、なんで止めたくなる。
さっきまで、それを望んでたのに。
黒瀬依央
黒瀬依央
……今飲むの?
無意識に出た。
(なまえ)
あなた
あ、あとで飲もうかな?
軽い調子で笑う。


黒瀬はほっとした自分に気づく。
安堵、罪悪感、独占欲。
全部が混ざる。
黒瀬依央
黒瀬依央
(俺、何したいんだ)
支配したい?従わせたい?
それとも、ただ“特別扱い”されたいだけ?


ドアが開く。
葛葉
葛葉
おい
空気が変わり、視線がペットボトルに落ちる。
葛葉
葛葉
それ何
(なまえ)
あなた
あ、黒瀬がくれた
教室が静まり、葛葉の目が、黒瀬に向く。
冷たい。
葛葉
葛葉
……へぇ
叶も入ってくる。
叶
珍しいね。黒瀬から?
俺は平然を装う。
黒瀬依央
黒瀬依央
余ってただけ
叶
葛葉は近づき、そして。
葛葉
葛葉
飲むなら俺も一本買ってくる
黒瀬依央
黒瀬依央
え?
試すような目。
俺の喉がひくりと動く。
…別にいいけど
強がり、葛葉はペットボトルをひょいと持ち上げる。
葛葉
葛葉
未開封だな
確認するようにキャップを触る。
カチ、と小さな音。


何も異常はなく、当然だ。
何もしていない。
でも、空気は張り詰めている。
(なまえ)
あなた
後で飲むよ
あいつが言ってカバンにしまった
黒瀬はそれを見て、胸の奥が妙に熱くなる。
黒瀬依央
黒瀬依央
(持ってる)
俺が渡したものを、カバンの中に。
今日一日、あいつのそばに。
その事実だけで、満たされてしまう自分がいる。


怖い、、、でも、やめられない。
葛葉が低く言う。
葛葉
葛葉
黒瀬
(なまえ)
あなた
葛葉
葛葉
余計なことすんなよ
視線がぶつかり静かな火花。
黒瀬依央
黒瀬依央
してない
俺は笑う。優等生の顔で。
でもその夜。
俺は思う。
次は、もっと確実に、もっと近くで。
“俺の影響”を残したい、と。
そして物語は、あの“〇〇ー〇〇〇〇”へと繋がっていく。

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