放課後。
珍しく、タイミングが重なった。
葛葉達は職員室。
教室には、二人。
俺と――あいつ。
胸がうるさい。
ポケットの中の冷たいペットボトル。
ちゃんと未開封で、キャップも閉まってる。
何もしていない。本当に何も。
なのに、心臓が罪悪感みたいに脈打つ。
声が少し掠れる。
あいつが振り向く。
笑うな、そんな顔で。
嘘だ、余ってない。
あいつは一瞬だけボトルを見る。
それから、俺を見る。
疑いゼロ。
その目が、たまらない。
逃げ道を作ってこいつを試す。
受け取るかどうか、信じるかどうか。
数秒。
あいつは、
受け取り、指が触れる。
一瞬。
黒瀬の思考が止まる。
本当に、疑わずに。
キャップに手をかけ、開けようとする。
その瞬間。
俺の胸が、なぜかぎゅっと縮む。
なんで、なんで止めたくなる。
さっきまで、それを望んでたのに。
無意識に出た。
軽い調子で笑う。
黒瀬はほっとした自分に気づく。
安堵、罪悪感、独占欲。
全部が混ざる。
支配したい?従わせたい?
それとも、ただ“特別扱い”されたいだけ?
ドアが開く。
空気が変わり、視線がペットボトルに落ちる。
教室が静まり、葛葉の目が、黒瀬に向く。
冷たい。
叶も入ってくる。
俺は平然を装う。
葛葉は近づき、そして。
試すような目。
俺の喉がひくりと動く。
…別にいいけど
強がり、葛葉はペットボトルをひょいと持ち上げる。
確認するようにキャップを触る。
カチ、と小さな音。
何も異常はなく、当然だ。
何もしていない。
でも、空気は張り詰めている。
あいつが言ってカバンにしまった
黒瀬はそれを見て、胸の奥が妙に熱くなる。
俺が渡したものを、カバンの中に。
今日一日、あいつのそばに。
その事実だけで、満たされてしまう自分がいる。
怖い、、、でも、やめられない。
葛葉が低く言う。
視線がぶつかり静かな火花。
俺は笑う。優等生の顔で。
でもその夜。
俺は思う。
次は、もっと確実に、もっと近くで。
“俺の影響”を残したい、と。
そして物語は、あの“〇〇ー〇〇〇〇”へと繋がっていく。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!