遂にゴールデンウィークがやってきた。
コーチ軍が挨拶をしている中、私達は少しジャンプの練習をしていた。
シャアッ!!
私は助走をつけて、勢いよくスケーティングをする。
5回転ルッツ+4回転サルコウ!
シャアッ!
先制パンチ成功。
スプリングFSCのスケートリンクで練習するということは、この高難度のジャンプを当たり前に成功させることが求められるんだよ、中学生。
シャア!
舌打ちせんでもええやん、とは思ったけど……まあ、一稀がいつも通りで安心はしたかな。
一稀に私の声が遮られてしまった。
和美はいつも通り笑っているけど、多分……、
そう言って私は、和美の手を引っ張って、第5体育館の外に連れ出した。
まだ5月なのに、私達をジリジリと照らす太陽の下。
蝉が激しく鳴いている。まるでそれぞれの楽器の均衡のとれていないオーケストラのように声が混じりあっている。
スっと、蝉の声が止まった。
これは、蝉が一斉に泣き止んだからではない。私たちの世界に完全に入り切ったから、私達二人の耳の中に雑音なんか入ってこないんだ。
和美は明るくそう笑った。
今から、少し和美の生い立ちを話そうと思う。
和美は、生まれた時から心臓が弱かったらしい。
私が言った”てつろーさん”とは、和美の実の父親の方に引き取られた、和美の生き別れの兄”黒尾鉄朗さん”のことである。
今、和美は母親の旧姓である”垣根”という名字だが、元々は”黒尾”という名字だった。
和美は母親の方に引き取られたが、和美は今、母親と別居している。
それは、母親の実家からの虐待が理由。
元々、和美の両親の離婚の原因は、母親のはたらきもせず家事への無関心の態度に愛想を尽かした父親から別れを切り出したことからだった。
和美の母親の実家は名家であり、”離婚”という見聞を気にした母親の実家は、和美を引き取ろうとする父親から無理やり和美の親権を取った。
その後、和美は母親の実家で暮らしていたが、そこでの親族からの暴力や、心無い言葉により心を病んだ。勿論、母親は無干渉だったらしい。
その時、唯一垣根家で和美の味方だった叔母から勧められたフィギュアスケートにのめり込み、叔母にも協力してもらってフィギュアスケートの世界にのめり込んだらしい。
そして、てつろーさんによると、最近和美の動悸が激しくなってたことが気になり病院に行ったところ、持病が悪化していることが分かったらしい。
その件で、てつろーさんは、和美が東京へ引っ越すことを進めとるようやけど、スケートのことがあるから結局学校の寮に住んどるらしい。
……と、私が知っている和美の生い立ちはここまで。
さあ、本題だ。
私はキッパリ言った。
私は和美に真剣な目を向けてこう言った。
そうして、私たちは第5体育館へと戻って行った。
挨拶を各クラブ同士した後、3クラブ合同のペアを決めて練習することになった。
ちなみに、ペア決めの後はすぐに私達の歓迎のアイスダンスが行われる。
そう言って、明るいコーチと選手は元気よく去っていった。
びっくりした、オリンピック銀メダリストなのに、この人本当謙虚だからオーラが気づきにくい。
2回転アクセルか。
まあ、ちょっとペアとして狙ってた狼嵜光ちゃんは、得意技が私のジュニア時代の課題だったルッツだって言ってたからペアにはならないだろうとは思ってたけど、正直狼嵜光ちゃんと練習したかったな。
なるほど、ルッツ得意同士で組んだな。
そう言って理凰君は、笑顔で深々と頭を下げた。
私は理凰君と目線を合わせるために、膝を曲げて体制を低くした。
私はこの人と接してみて、腰が低すぎるのも悩む所だな、と思った。
ちなみに、ペアは
私と鴗鳥理凰君。(和美が居ない時は、途中からいのりちゃんも参加)
一稀と狼嵜光ちゃん。
和美と結束いのりちゃん。
佳奈と八木夕凪ちゃん。
百恵と蓮太郎。
となった。
そして、次は一大イベント、アイスダンスだ。
アイスダンス、何度も練習したから、絶対成功させよう。そう意気込んだ私だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。