第3話

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2026/01/07 21:27 更新
目を開けたとき、
最初に見えたのは白い天井だった
しばらく、ここがどこなのか分からなかった
ーーあ
思い出した瞬間、喉がきゅっと縮む
声を出そうとして、やめた
出ない
というより、出してはいけない気がした
ゆっくり首を動かすと、
点滴のスタンドとカーテン
病室だった
イレイザーヘッド(相澤消太)
…起きたか
低い声
そちらを見ると、ベッド横の椅子に、
あの男の人が座っていた
ゴーグルは外していて、眠そうな目をしている
ーーあのときの
身体が、びくっと震える
イレイザーヘッド(相澤消太)
安心しろ
イレイザーヘッド(相澤消太)
ここは病院だ
イレイザーヘッド(相澤消太)
もう、あいつはいない
あなたは、布団の端をぎゅっと掴む
喉が、ひくひくと震えた
イレイザーヘッド(相澤消太)
…声、出ないか
図星だった
小さく、こくんと頷く
イレイザーヘッド(相澤消太)
無理するな
イレイザーヘッド(相澤消太)
医者には“個性の反動による一時的な失声”って話してある
淡々とした声
でも、どこか気を遣っているのがわかった
イレイザーヘッド(相澤消太)
数日は安静だ
イレイザーヘッド(相澤消太)
…スマホ、使えるか
そう言われて、あなたはゆっくり頷いた
相澤は、少しだけ間を置いてから言った
イレイザーヘッド(相澤消太)
…後で、少し話を聞かせて欲しい
イレイザーヘッド(相澤消太)
無理のない範囲でいい
“聞かせてほしい”
その言葉に、胸がチクリと痛んだ
その日の午後
個室に移されて、ベッドの横の簡単なテーブルで、
あなたはスマホを握っていた
相澤は、壁にもたれて立っている
イレイザーヘッド(相澤消太)
俺は相澤消太
イレイザーヘッド(相澤消太)
プロヒーローだ
名乗られても、
あなたは小さく頭を下げることしかできない
イレイザーヘッド(相澤消太)
お前の名前は?
少し迷ってから、スマホに打ち込む
(なまえ)
あなた
📱音無あなた
画面を見せると、相澤は一度だけ頷いた
イレイザーヘッド(相澤消太)
…あそこで、お前を使ってた男について
あなたの指が止まる
胸の奥が冷たくなる
イレイザーヘッド(相澤消太)
無理に全部話せとは言わない
イレイザーヘッド(相澤消太)
ただ、今後の保護のために最低限は必要だ
しばらく画面は白いままだった
それから、ゆっくり、
少しずつ、文字を打つ
(なまえ)
あなた
📱ずっと言わされてました
(なまえ)
あなた
📱動くな、とか
(なまえ)
あなた
📱眠れ、とか
(なまえ)
あなた
📱男の人の任務の手助けをさせられてました
相澤は、何も言わずにそれを読んでいる
(なまえ)
あなた
📱言わないと
(なまえ)
あなた
📱脅されました
指が、少し震える
(なまえ)
あなた
📱逃げようとすると
(なまえ)
あなた
📱殺すぞって
(なまえ)
あなた
📱男の人は、視界に入っている物は触れたことがあればいつでも爆発させられる個性だったから
(なまえ)
あなた
📱私のイヤリング、触れられたことがあったから…
そこまで打って、止まった
続きが、打てない
相澤は、スマホから目を離して、静かに言った
イレイザーヘッド(相澤消太)
…十分だ
それから、少しだけ声を落とす
イレイザーヘッド(相澤消太)
…お前の個性、相当無茶な使い方されてる
あなたは、何も返せない
イレイザーヘッド(相澤消太)
もう、戻る必要はない
イレイザーヘッド(相澤消太)
戻らせない
その言葉を聞いても、すぐには信じられなかった
だって
今までも、
「大丈夫」って言葉は、
たくさん聞いてきたから

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