リーヴは表情を変えないまま少し間を置いて、笑顔を作ってから話し始める。
人のことは言えないがフィルが明らかに困ってるの分かるだろ…?どうしたんだ…
しかし、リーヴは表情一つ変えずに続ける。
そうしたら本人もを知らず知らずのうちに原因が悪化して、結局魔法使う前より完治が難しくなるってことか。
確かに思い返してみると、彼女は回復魔法を使えるはずなのに前に行った村でも看病の指導を行って薬を出すだけだった。
地道に治すことでもっと自分の身体を大事にしてもらいたいという思いの現れだったのかもしれない。
地味で大人しい感じのやつなのに、この時は眩しく見えた。
そうして、フィルの回復魔法の特訓が始まった。
2人が魔法特訓用の人形に手を当てているのを、私は椅子に座ってただじっと見ている。
額に汗が伝う。
あの簡単な呪文で噛むとか大丈夫だろうか…
さっきから何回も挑戦しているが、ずっと失敗している。明らかに顔にも疲労の色が見え始めていた。
彼女が差し出したものはクッキーだった。
フィルはなにか思い出に浸っているようにクッキーを見つめる。
そうして、来る日も来る日も
放課後に来ては、特訓を続けた。
メイはかれこれ1週間も眠ったままだった。
けれど、私達以外誰も見舞いになんか来なかった。
相変わらず酷く顔色が悪い。保健室の人によると、点滴をはしたがこのままでは日に日に痩せ細っていってしまうだろうということだった。
自然に、自分の手を握っていた。
ただ見ていることしかできないけど、それでも、成功することを願っていた。
フィルは、メイの額にそっと手を触れ、呟く。
その瞬間、ふわっと辺りが明るくなる。
だんだんと、フィルの魔力がメイに吸い込まれていき、彼女の顔は血色を取り戻していく。
その光景は、星を散りばめたようにキラキラと輝いていた。
よっぽど疲れたのだろう。彼は、ゆっくりと額から手を離した後、膝から崩れ落ちる。
そう言われて、何か言おうと思った。
けど言葉が、いや、声が上手く出せなかった。
ただ、何かが頬を伝うのだけがわかった。
そう言われてハッとした。泣いてたんだ、私。
なんで泣いたのか自分でも分からなくて、止めようと思ってもどうにもすることもできなかった。
私達は保健室を出て、ドアを閉める。
そのまま学校を出て、適当なところにテントを張って、すぐ寝てしまった。
朝。いつも通りうるさい鳥の声と彼女の声。テントから引きずり出され、また次の街に向かって歩みを進めていく。
次の街に行く時、あの学校の前を1度だけ通った。
もうあんな場所には二度と行きたくない。登校途中の生徒達が話す陰口がいやに大きく聞こえた。
そんな中、手を繋いでいる2人が見えた。前を歩いているのが昨日まで見ていたあの大人しい少年だとは思えないほどたくましく見えた。その力強い足取りを見るに、これから教師達に訴えにでも行くのだろう。こんな場所が変わるかは分からないが、少なくとも2人はきっと良い方向に進んでいけるだろう。
そうして私達は港町に向かうことになった。
リーヴはまだ謎だらけだが、まあいい。
残り1ヶ月もないが、綺麗な世界を見るために、
私はまた1歩歩いた。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!