あれから数年後、
私達は何事もなく平和に過ごせていた。
あの日が来るまで。
アルゴットは村人に捕まって、私達は離れ離れになった。
そして、次に会えたのは村の中央でだった。
それはとても痛々しかった。
彼女の体には傷があり、血だらけだった。
弱々しく笑う彼女をみて、さらに胸が痛くなる。
そして、やっと理解する。
彼女は、
物語通りに、殺されてしまう。
『ごめんね。』
もう声も出せないのか、諦めたのか、
私に向かって口をそう動かした。
そして。
『ヒナタだけでも、幸せに生きて。』
それだけ言い残し、静かに涙を流しながら燃えていった。
翌日、再び村の中央を訪れると、
真っ黒に焼け焦げてしまった、
ほぼ原型のないアルゴットがそこにいた。
縛り付けられたままで、
足元にある薪からは生暖かい煙が立ち昇っていた。
私はショックで数日間動けなかった。
数日後
私は初めて、あの頃が恋しくなった。
自由なんてここには存在しなかった。
私のせいで、私のせいで……
いつの間にか、目の前に私くらいの女の子が立っていた。
みーたん?
名前にしては妙に違和感があった。
もっとこう、名前らしい名前が……
……もう考えるのも疲れた。
それは、急な誘いだった。
ただ、ヘラヘラと笑い、事実を言っているのは確かだった。
もうここには私の希望はない。
……だったら。
それが、作者との出会いでした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!