雲が月を断ち、微かな光が差す夜、杖をついた老婆が独り喫茶店に入っていく。
カランカラン…
【あなたを待っている】
暫く沈黙が訪れる。
この店主さん、どこかで見た事がある、あるはずなのに思い出せない。
その記憶だけ、真っ黒のクレヨンに塗りつぶされてしまっているようだ。
カチャ
【俊一】
たった二人の、他愛もない会話だけが、静かに喫茶店に響いた。
…続いてのニュースです。
先日から行方不明になっていた帆上弥生さん(72)が、遺体で見つかりました。
付近に落ちていた遺書には、
『俊一さんに会いたい
今そっちに行くから待っててね』
と書かれていたそうです。
これで深緑樹海行方不明事件の被害者は十一人目となりました。
警察は現在も調査を進めています。…
全ての伏線と意味は次回。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!