iw side
朝からわくわくるんるんで仕事に向かう。
調子よく仕事をこなしてお昼になった。
最近は社内の雰囲気がますます変化して、俺自身も話し掛けられるようになって、休憩室でも誰かと話す事が前より多くなったし、オフィスが活気づいた気がする。
昼ごはんを誰かと一緒に食べる人も増えた。
俺はと言えば実はお昼はふっかと過ごした事が無い。
いつも誰かしらと一緒に居るし、話し掛けるのも申し訳ないと思って。
でも今日は話し掛けてみようかな、なんて思ってふっかの方を見ると、お昼の時間になっても黙々と作業をしている。
お、チャンスかも。
ふっかが席を立つまで俺も仕事しようと思って同じくパソコンに向かっていると、話し掛けてきたのはTとはまた別の同期。
断ろう、と思って何となくふっかの席の方に目を向けようとすると、2メートルくらい離れたところでふっかがはっとしたような顔をしていて、大丈夫大丈夫と口パクで言うと、オフィスを出ていってしまった。
多分何か用事があったんだろうけど俺がこの人と話してるから気を遣ってくれたんだろうな。
そう言うと自分の弁当を引っ掴んでふっかを探しに俺もオフィスを出た。
もう誰かと合流しちゃってるかな
大体いる場所は予想がつく。
料理が出来ないって言ってたからきっと会社の食堂だ。
うちの会社にはいくつかのチェーン店の店舗の協力によって、社内に結構立派な食堂がある。
お弁当派は自分のデスクで、外食派はそっちで食べる事が多い。
お弁当を食堂のテーブルで食べる事も可能ではあるけど滅多に見かけない。
そこでは部署の垣根を越えて色々な人が集まるからあまり敵対意識が無く、この会社で唯一交友関係を築けると有名だったけど、いつも先延ばしにして行ったことが無かった。
ふっかを探すと珍しく1人で席取りをしていて、そこに慌てて走っていく。
声を掛けるとびっくりしてこっちを振り向いた。
そう言うふっかにうん、と頷く。
ガラス張りの自動扉から外へ踏み出すと、たっぷりと春の温かさを含んだ空気に体を包み込まれて幸せな気持ちになる。
ふっかはどこのベンチにしたら喜ぶかな。
あ、ここにしよ
見初めた場所に腰を下ろすとふっかを待った。
テイクアウトしてきたラーメンを持ってふっかが小走りに近付いて来る。
さっき俺も近付いて読んだんだけど、この花壇は季節に沿って年中花が植え替えられるらしい。
誰が見る訳でもない場所でひっそりと芽吹いて命を繰り返しているんだよきっと。
そう言うふっかの目が遠くを見ているようで
なあ、今何考えてんのって聞いてもいい関係性のはずなのに
何となく聞いたらダメな気がして、食べかけの弁当のおかずに箸を運んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!