第14話

12話 水曜日
506
2024/06/01 22:00
iw side
朝からわくわくるんるんで仕事に向かう。



調子よく仕事をこなしてお昼になった。




最近は社内の雰囲気がますます変化して、俺自身も話し掛けられるようになって、休憩室でも誰かと話す事が前より多くなったし、オフィスが活気づいた気がする。
昼ごはんを誰かと一緒に食べる人も増えた。



俺はと言えば実はお昼はふっかと過ごした事が無い。



いつも誰かしらと一緒に居るし、話し掛けるのも申し訳ないと思って。







でも今日は話し掛けてみようかな、なんて思ってふっかの方を見ると、お昼の時間になっても黙々と作業をしている。
お、チャンスかも。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
岩本さん!お昼食べに行きません?
ふっかが席を立つまで俺も仕事しようと思って同じくパソコンに向かっていると、話し掛けてきたのはTとはまた別の同期。

断ろう、と思って何となくふっかの席の方に目を向けようとすると、2メートルくらい離れたところでふっかがはっとしたような顔をしていて、大丈夫大丈夫と口パクで言うと、オフィスを出ていってしまった。
多分何か用事があったんだろうけど俺がこの人と話してるから気を遣ってくれたんだろうな。
岩本照
岩本照
すみません、今日先約あるんで行けないです。
また誘ってください!
そう言うと自分の弁当を引っ掴んでふっかを探しに俺もオフィスを出た。

もう誰かと合流しちゃってるかな
大体いる場所は予想がつく。

料理が出来ないって言ってたからきっと会社の食堂だ。
うちの会社にはいくつかのチェーン店の店舗の協力によって、社内に結構立派な食堂がある。
お弁当派は自分のデスクで、外食派はそっちで食べる事が多い。
お弁当を食堂のテーブルで食べる事も可能ではあるけど滅多に見かけない。
そこでは部署の垣根を越えて色々な人が集まるからあまり敵対意識が無く、この会社で唯一交友関係を築けると有名だったけど、いつも先延ばしにして行ったことが無かった。

ふっかを探すと珍しく1人で席取りをしていて、そこに慌てて走っていく。
岩本照
岩本照
ふっか!
声を掛けるとびっくりしてこっちを振り向いた。
深澤辰哉
深澤辰哉
うわ!びっくりしたあ
深澤辰哉
深澤辰哉
あれ?さっきの人は?
岩本照
岩本照
居ないよ?
深澤辰哉
深澤辰哉
お昼誘われたんじゃないの?
岩本照
岩本照
そうだけど、今日はふっか誘おうかなって思ってたから
深澤辰哉
深澤辰哉
俺の事好きすぎでしょ
岩本照
岩本照
さっき何か用事だった?
深澤辰哉
深澤辰哉
え、あ……
深澤辰哉
深澤辰哉
いや、お昼一緒にどう?って聞こうと思ってた
岩本照
岩本照
ふっかも俺の事好きじゃん
深澤辰哉
深澤辰哉
ふふっ、まあね
深澤辰哉
深澤辰哉
てか照弁当だよ、ね?
そう言うふっかにうん、と頷く。
岩本照
岩本照
だからここで弁当食べようかなって
深澤辰哉
深澤辰哉
じゃあさ、外行かない?
深澤辰哉
深澤辰哉
俺テイクアウトするから
岩本照
岩本照
良いの?
深澤辰哉
深澤辰哉
むしろそうしたい
岩本照
岩本照
分かった
岩本照
岩本照
じゃあ俺先に外行っとくわ
ガラス張りの自動扉から外へ踏み出すと、たっぷりと春の温かさを含んだ空気に体を包み込まれて幸せな気持ちになる。

ふっかはどこのベンチにしたら喜ぶかな。



あ、ここにしよ


見初めた場所に腰を下ろすとふっかを待った。
深澤辰哉
深澤辰哉
おまたせ。
テイクアウトしてきたラーメンを持ってふっかが小走りに近付いて来る。
岩本照
岩本照
ラーメンまであるんだ。しかもテイクアウト。
深澤辰哉
深澤辰哉
それ美味いの?って思うでしょ?
深澤辰哉
深澤辰哉
美味いんだよこれが。
深澤辰哉
深澤辰哉
いい席だね。花が見える。
岩本照
岩本照
春だからチューリップ咲いてる
深澤辰哉
深澤辰哉
綺麗。
深澤辰哉
深澤辰哉
季節変わったらただの土だけになんのかな
岩本照
岩本照
看板ある。
さっき俺も近付いて読んだんだけど、この花壇は季節に沿って年中花が植え替えられるらしい。
深澤辰哉
深澤辰哉
へえ、季節によって変わるんだ。
岩本照
岩本照
らしいね
深澤辰哉
深澤辰哉
会社の人がこの花見ることあんのかな
岩本照
岩本照
分かんないけど皆知らなさそうじゃない?
誰が見る訳でもない場所でひっそりと芽吹いて命を繰り返しているんだよきっと。
深澤辰哉
深澤辰哉
見つけて貰えてよかったなあ。
そう言うふっかの目が遠くを見ているようで


なあ、今何考えてんのって聞いてもいい関係性のはずなのに

何となく聞いたらダメな気がして、食べかけの弁当のおかずに箸を運んだ。

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