【三つ目の夜:りうら、いふ(りういふ・ぴよまろ)】
駄々こねる子供か、とりうらがツッコんでも、返ってくるのは「いやだぁ」のみ。
無言を貫く抜くいふに、なんで、と尋ねる。彼が微かに口を開けた。
りうら過去一ツッコミしてるかも、とため息をつく。彼がここまで奥手かつヘタレだったとは。
自覚はあります、と重く頷かれた。「だったら直せ! 今すぐに!」と怒鳴りたかったが、もう気力がない。
そう素っ気なく呟くしかなかった。
プライバシーに対する配慮の欠片もない案を、いふが即座に否定する。
少々トゲのある言い草を難なく躱すように、りうらが布団の中に入った。こちらに背を向けているため、表情は読み取れない。
何か言いたげだったが、それ以上は聞くまいと言わんばかりに、おやすみ、とだけ告げ、りうらは眠りについた。
以降、いふが喋ることはなかった。諦めて寝たのだろうか。少し冷たい言い方だった自覚がある故、申し訳なさを感じる。
心の中でほくそ笑む。
寝返りのフリをして、布団を深く被る。
メンバーは知らない。りうらの「初恋」相手が彼だったこと。自身の失恋と意中の相手の恋心を悟り、彼のために動いていることを。
正直、寝る相手の変更は内心嬉しかった。好きだった彼と同じ空間で過ごし、朝までそれが維持される。
起きてる気配が感じられなくなった時、自然と口が言葉を紡いでいた。
感情の分からない水が瞳から溢れ、りうらの枕を少し濡らした。
__それぞれの夜を超え、日が昇り始める。いれいすのシェアハウス生活、記念すべき一日目が幕を開けた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。