返事をする前に、気づけば包丁は渡っていた
誰かが口を開く間もなく、あいつの心臓目掛けて体を動かしている
数秒後視界に映ったのは、腕から軽く血を流すあいつと腰が抜けたように座り込む君の姿だった
不快なナイフが突き刺さり、勇気を出した反発心が壊されてゆく
殴られ続ける痛みに謝り耐えることしか出来ない
稲荷の父だから当然似ているし、まるであの時の自分を見ているよう
漂う恐怖は着々と僕の勇気を蝕んでいた
固まろうとする足を動かし、手に出来る距離にあるもので唯一凶器と言える裁ち鋏を取り出した
庇えるように君の前に立つ
赤い液体が垂れているのだって、本当は見たくなかった
思い切り刺しに行くが、やはり体格差というものは大きい
自分より大きいものに立ち向かおうとすると嫌でも恐怖心が増す
何も話せなかった
何か言いたくても言葉が出てこず、もし何か言えばこの場で倒れ込んでしまいそうな感覚
無言を貫きながら立ち向かう
この状況を法律で裁かれるなら、捕まるのは僕らの方
そう思うとなんとも言えない感情が湧くのを感じた
汚い声と共に汚い血が溢れる
いむくんが持ってた包丁を拾ったらしく、上から降る刃物が傷を増やしていた
それでも腸を切り裂いていく
腕、肩
頬に少しの傷がつく頃にはあいつは息絶えていた
念の為力なく倒れる肉の首裏を僕の血に塗れたそれで切る
あたりに飛んだ赤は綺麗なんて言葉に程遠かった
混沌としたリビングらしき部屋を見渡す
端に居たいむくんは、綺麗な血が垂れる腕を押さえていた
その言葉を信じられる見た目をしていない
着ていた服を脱ぎすぐに縛った
ふと自分の腕に目をやる
理解していなかったのか、痛みは見た瞬間にやって来た
浅いから自傷行為をしたようにも思えそうだ
先に深く刺したからかあいつの力が強くこもらなかったのは不幸中の幸いだろう
あいつが普通の力で同じだけ僕に刃を当てていたとすれば、肉の塊に成り果てるのは僕だったかも知れない
倒れ込むように君の隣に座る
出来る限りすぐにこの場から離れるべきなのだろう
頭ではわかっていても行動はそれに反していた
2人して空気を見つめる
僕らをここに留めているのは疲労感でも痛みでも無い
ゲームをクリアした時のような、ありきたりな達成感だ
痛みは酷いのに気分は高揚する
早く動かなきゃいけないけど、もう少しだけこうして居たい
君を解放出来た達成感に浸っていたかった
殺人シーンを書く小説なくせして殺人シーンが苦手です( )
駄作感拭い切れないけど見てくれていてありがとうございます!
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。