【テサン。1週間後お前にはこの家を出て、王の元に嫁いでもらう。いいな?】
「はい。父上」
背が高く、絹のように綺麗な肌をした少年はなんの感情も持たない目を向けてそう返事する。
【お前は良い子だ。私を失望させない。】
頼んだよ、と言うと直ぐ部屋から出ていった。
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taesan side
コンコンッ
父上が出ていって、ようやく1人になれたと思ったらまたもや戸を叩く音がした。今日は朝から頭が痛くて辛いのに....
「.....だれ.....?」
そう問うも返事はない。もしやまだ父上が何か....
とか思いながら恐る恐る戸を開けた。
「お前たち....っ.!!」
するとそこには、
〔....テ....てさにひょん..っ!!!〕
(てさに.........)
僕の兄弟が居た。
「リウヒョン....うなぎ....」
「....どうしたの...?ㅎ」
ウナギが僕に駆け寄り腰に縋り付く。
正直何をしに来たかなんて分かってはいたけど、なんとなくその話はしたくなかった。
(....来週....行くんでしょ....?)
そんな僕の希望に反する様に2人は話し出す。
「...ん....そうですよ.....」
〔ひょんっ!!!いやです!...そんなのいやだっ!!泣〕
「そんな事言われたって....こればっかりは仕方ないんです....」
〔だって...あっちに行ったらもう帰って来れないって...!!泣〕
僕が何を言おうと"いやいやっ"と言って聞かない弟に苛立ちを覚えた。
ただでさえ頭が痛いって言うのに。
この怒りを2人にぶつけてしまう前に帰ってもらおうと扉へ誘導した。
「....ぁの...今日はもう、帰ってくださ」
(テサニはそれで良いの?)
「.........ぇ...?」
何を言い出すのかと思ったら、
(あんな無理矢理なお見合い承諾して良かったの......??)
「..................」
無理矢理なお見合い.........
それはおそらく国のお偉いである父上に敵国との外交役でBNDLANDへ着いて行った時の話だろう。
僕の容姿を見て向こうの国王が一目惚れしたと、そのまま流れでお見合いし、婚約が決定したのだ。
元々両国は長い間争い合っていたが、近年こちらの国が弱体化し国家破産しそうになってしまった為、和解を試みようとしていた。国を建て直すには他国の協力が必要不可欠だった。
僕を嫁に貰う事を条件に、和解は承諾すると。
父上は好都合だと、喜んで僕を差し出した。
「父上が...承諾したのなら仕方ありません...」
そう僕は父上に逆らえない。
(父上父上って、お前自身はどうなの...??)
「.....................」
(結婚するんだよ?家族になるの)
(そんな見ず知らずの奴を愛せる?ましてや、その先の事も出来る??)
愛せるか?そんなの僕には分からない。
だって僕は自分の事さえも愛せないんだから。
でも、それでも
「子供の産めないΩの僕をあの大国の国王が嫁に迎えてくれるんですよ...?」
「....こんなのこの国を守るチャンスでしかないっ.....」
(テサナ.....お前の本音を聞きたいんだよ?)
もうやめて..
(お前が我慢して父上の言いなりになってるの見たくないんだよ)
お願いっ
(俺から何とか頼んでみるから....な?)
聞きたくない
〔...ぅ"..グスッ.てさにひょん!!居なくならないでぇ!!泣〕
ほんとにっ..
「....やめて!!!」
気がついた時にはもう遅かった。
こんなに声を張り上げたのは久々だ。
頭に血が昇って、ズキズキする。
でも、この感情をどこに仕舞えば良いのか分からない。
「僕は今までどんな事にも冷静に対応して来た...っ」
「母さんが亡くなった時もっ、Ωだって発覚した時も」
「子供の産めない役立たずだって.....好きな人にも抱いてもらえなかった時だって」
「僕は.....今までこうやって生きて来たんだ....っ」
「だからこれからも...きっと大丈夫.....」
「お節介はやめてください...」
自分で言った事なのに、やけに胸の辺りがチクチクと痛む、
僕は一通り言い切ると何も言えなくなった。そして2人の顔さえも見れない。
2人は急にたくさん喋り出した僕に驚いているのか、何も話さない。さっきまでわんわん泣いていたウナギも泣き止んでいる。
あぁ、こんな事言わなければ良かった。
もう少しで会えなくなるのに.....
しばらく沈黙が続いて気まずかったが、リウヒョンが一言言い捨ててウナギと帰っていった。寂しい反面ほっとしていた。
(こんな嘘まみれな国の為に自分の身を売るなんて馬鹿げてる)
馬鹿げてる....か、
でも、僕にはこれしか役に立つ方法がないから。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。