莉緒の頬に綺麗に整えられた爪が食い込みます。赤い三日月の跡が残りました。痛そうです。
「ねぇこの子、まだ自分が佐藤くんの彼女とか言ってるんだけどやばくない?」
「別れ話されてないから続いてると思ってるだ、かわいそ〜」
「頭使いなよ。 佐藤くんは優しいから言えないだけで、あんたみたいなのとは別れたいに決まってんでしょ」
キャハハ 、と甲高い笑い声が教室に響きます。
どうやら莉緒がまだ亮雅の彼女なのか否かで揉めているようです。
普通に考えて関係はもう終わっているでしょう。
莉緒みたいな、言ってしまえばいじめられっ子を彼女にしておきたいとはいくら優しい彼だって思わないはずです。
莉緒も誰かに縋っていないとやっていけないんでしょうね。
腕、足、腹、身体の至る所につけられた紫色の痕。
光のささなくなったくすんだ瞳。
あぁ、さっきの金属音はこれだったんだ。無造作に切られた長さの揃わないスカート 。
ここまでされても此処に来るのは何故?
以来、抵抗をみせなかった莉緒が珍しく声を上げました。
「いやっ!やめてっ」
逃げようとしても意味がありません。
腕を掴まれて、羽交い締めにされます。
その髪にハサミが触れました。
以前 友人と話していたのを聞いたことがあります。彼はロングヘアが好きだから、伸ばしていると。
手入れの行き届いた綺麗な黒髪。
「やめてっ、いや!やだ!!!」
ぶんぶんと首を振って、抵抗を見せます。
今までどれだけ騒いでも見て見ぬふりを貫いたクラスメイトも莉緒の必死の抵抗に目を向けました。
「やめなよ」
なんて声が飛ぶ訳もなく。
ジャキン。
質量のある音がなると、暴れていた体から力が抜けました。
そして、代わりに頬に透明が伝います。
髪は女の命。
彼女の糸も切れてしまったようです。
あぁ、可哀想に。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。