あなたside
まるで、絵の具のシミみたいに
私の腕に滲んだ幾つもの痣。
そして、その傷の上から又付けられた傷。
もう、此処に私の大好きなお母さんは居なかった。
けれど、悲しそうに、寂しそうに私を傷つけるお母さんが
如何にも可哀想に見えて、私を傷つけるお母さんから離れることは出来なかった。
愛のムチ、とはこの事なのだろうか。
私達を反射するフローリングに滴り落ちる血液も
日に日に増え、消える前にまた増える痣も。
私を愛するが故なのだろうか。
涙を流して、私を曖昧に抱きしめるお母さん。
ごめんなさい、と呟くけれど、それは上辺だけ。
シャッターで遮られた、電灯でのみ
照らされた薄暗い部屋で、小さく呟いた。
只、子供でしかない私は其処に居ない者に縋るしかなかった。
キィ、と扉が軋む音がして目が覚める。
気がつくと私は自室のベッドに居て
昨晩の事は夢だったのではないかと感じてしまう程に自然だった。
けれど矢張り痛む身体が、昨日の夜にあったことを
無理矢理にでも思い出させようとする。
この部屋の軋む扉みたいに、私の痛む身体を起こす。
無理矢理起こした身体が、悲鳴を上げるけれど、
そんな事を言った所で何も変わりはしないので、洗面台で顔を洗って、髪をとかす。
映った。
鏡に、ハッキリと。
もしかしたら、私の大嫌いなお姉ちゃんは、生きていて
公安の都合で、死んだことにされていて……
もしかしたら、逃げてきて…
助けて
お姉ちゃん
夢から醒めたみたいに、私はお母さんの声で我に帰る。
私は、何をしていたのだろうか、
と自分の部屋へ戻りながら考える。
中々思い出せない、私は姿見の前で制服に着替える。
紺色の、少し汚れたセーラー服のスカート。
無意識顔が歪む。
苦虫を噛み潰したような顔
とはこんな感じなのだろうか。
私はそう言って、スクールバッグを片手に家を出た。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。