第5話

言えなかった想いを言葉にする勇気
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2025/10/15 06:42 更新
舞台が終わった直後。
拍手の余韻がまだ残る中、私は舞台袖の暗がりで立ち尽くしていた。
鼓動が、まだ高鳴ったまま。
けれど、目には涙が浮かんでいた。
舞台上ではあれほど輝いていられたのに。
照明が落ちて、静けさに包まれた瞬間、胸の奥からこみ上げてきたものは、
彩風咲奈
彩風咲奈
……いた。
不意に背後から聞こえた声に振り返ると、
そこには、汗を拭いながら安堵の笑顔を浮かべた彩風さんがいた。
私は、何か言おうとした。でも言葉が出ず、視線を落とした。
彩風咲奈
彩風咲奈
……すごく良かった。ほんとに、光ってたよ。
そう言われた瞬間、ポロッと、涙がこぼれた。
(なまえ)
あなた
(だめ、見せたくないのに……。)
でも止められなかった。
私は顔を覆って、小さく震えながら泣いた。
(なまえ)
あなた
ごめんなさい……ずっと……ずっと、怖かったんです。
彩風咲奈
彩風咲奈
……うん。
(なまえ)
あなた
自分なんかって思って、ずっと逃げて、でも……ほんとは……
言葉が詰まりながらも、私は小さく、けれどはっきりと声にした。
(なまえ)
あなた
……彩風さんが、好きなんです。
彩風さんの瞳が、そっと揺れた。
(なまえ)
あなた
憧れとか、尊敬とか、そういうのだけじゃなくて……。
1人で稽古していた時に、初めて声をかけてくださったこと……今でも忘れられません。
あなたの下の名前の声はかすれていたけど、どこまでもまっすぐだった。
彩風さんは一歩近づき、私の頬に流れる涙を指でそっとぬぐった。
彩風咲奈
彩風咲奈
……ありがとう。
その言葉に、私の心が少しだけ解けた。
それ以上は何も言わず、ただ静かに、2人はしばらくその場に立っていた。
互いの鼓動だけが聞こえる、静かな舞台袖で。
数日後。
劇団の内外で、ある噂が広がり始めた。
組子
咲奈さん、そろそろ……なんて話、聞いた?
トップになってから長いし、次の公演が……。
私の耳にも、その言葉が届いた。
胸が、ギュッと痛くなる。
(なまえ)
あなた
(……まだ、何も伝えきれてない。)
あの日、想いは告げた。
でも、それ以上のことは何も言えなかった。
それが魔法の言葉だけで終わってしまうのが、どうしても嫌だった。
だから私は、もう一度、自分の気持ちを言葉にしようと決めた。
(なまえ)
あなた
ちゃんと……好きって、言いたい。
憧れでも、感謝でもなく。
一人の人として、彩風さんを好きなんだと。
それが、たとえ報われなくても。
言わなかったことを、後悔したくなかった。
私は、手のひらをギュッと握った。
数日前と違うのは、自分を信じてるということ。
(なまえ)
あなた
(あの舞台に立てた自分なら、きっと言える。)
舞台が終わっても、夢は終わらない。
今度こそ、心からの本当の一歩を、踏み出す時だった。

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