舞台が終わった直後。
拍手の余韻がまだ残る中、私は舞台袖の暗がりで立ち尽くしていた。
鼓動が、まだ高鳴ったまま。
けれど、目には涙が浮かんでいた。
舞台上ではあれほど輝いていられたのに。
照明が落ちて、静けさに包まれた瞬間、胸の奥からこみ上げてきたものは、
不意に背後から聞こえた声に振り返ると、
そこには、汗を拭いながら安堵の笑顔を浮かべた彩風さんがいた。
私は、何か言おうとした。でも言葉が出ず、視線を落とした。
そう言われた瞬間、ポロッと、涙がこぼれた。
でも止められなかった。
私は顔を覆って、小さく震えながら泣いた。
言葉が詰まりながらも、私は小さく、けれどはっきりと声にした。
彩風さんの瞳が、そっと揺れた。
あなたの下の名前の声はかすれていたけど、どこまでもまっすぐだった。
彩風さんは一歩近づき、私の頬に流れる涙を指でそっとぬぐった。
その言葉に、私の心が少しだけ解けた。
それ以上は何も言わず、ただ静かに、2人はしばらくその場に立っていた。
互いの鼓動だけが聞こえる、静かな舞台袖で。
数日後。
劇団の内外で、ある噂が広がり始めた。
私の耳にも、その言葉が届いた。
胸が、ギュッと痛くなる。
あの日、想いは告げた。
でも、それ以上のことは何も言えなかった。
それが魔法の言葉だけで終わってしまうのが、どうしても嫌だった。
だから私は、もう一度、自分の気持ちを言葉にしようと決めた。
憧れでも、感謝でもなく。
一人の人として、彩風さんを好きなんだと。
それが、たとえ報われなくても。
言わなかったことを、後悔したくなかった。
私は、手のひらをギュッと握った。
数日前と違うのは、自分を信じてるということ。
舞台が終わっても、夢は終わらない。
今度こそ、心からの本当の一歩を、踏み出す時だった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。