賢三side
奏音とも仲直りをし、平和な日常が戻ってきた。
前のように彼女と毎日話してるし、一緒に帰るようにもなったし。
でも、そんな日常ももうすぐ終わりを告げる…かもしれない。
進級が、近づいてきている。
俺は今2年生だから、進級すると3年生……すなわち受験生になるのだ。
卒業までには振り向かせようと思ってたけど、多分現実的に厳しいよな……。部活引退までに頑張った方が良いのかも。
今は3月だから……タイムリミットまで後4ヶ月…!?
思っていたより時間がない。
まあでも、頑張ろう。
今はきっと平和な時間を楽しんでいるだけでも良いだろうから。
今日は修了式。登校している途中、奏音に会った。
平和。
この時間を漢字2文字で表すとしたら、この単語しかないと思う。
やっぱり、奏音と話しているのはとても楽しい。
奏音が少し不安そうな顔をする。
そういえばそんなものもあったな。
たしかに仲良い先生がいなくなったら寂しいか…今の担任の先生とか面白いし。
大丈夫大丈夫!と軽めに肩を叩くと、彼女が笑顔を見せた。
良かった。奏音が笑顔になって。
でも、俺がこの笑顔を守れなくなるだなんて……このときはまだ、知る由もなかったんだ。
体育館で全学年集まって行う修了式を終え、俺は一斗の方に駆け出した。
一見冷たそうだけど、本当は嫌がっていないことを俺は知っている。
だから特に気にすることもなく、高めのテンションで返した。
離任式の準備って意外と早いんだなと驚きつつ、きょろきょろと体育館中を見回すと、一斗が人さし指を出した。
指された方向を見ると、たしかに先生方が数人並んでいる。とは言え、誰がいるのかあまり見えないな……。
じっと目を凝らして見ようとしたら、離任するであろう先生方が壇上へ上がったのが見える。
か、という言葉を思わず飲み込んでしまった。
俺は、自分の目を疑いたくなった。
指先が震え、顔から血の気が引いていくのがわかる。
異変に気付いたのか、一斗が心配してくれた。
大丈夫と言いたいけど、今の俺にはそんな余裕すらなかった。
だって、列の中には。
──列の中には、俺が大好きな若葉先生がいたから。























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!