「相変わらずユウリ絶好調だね〜!」
オーナーに声をかけられる
絶好調?そんなわけないでしょ
「ユウリ以外の奴らもがんばってくれてるのはわかるんだけどさあ、なんかダメなんだよなあ...」
「そーだねえ...まあユウリこれからもがんばれよ!店背負ってるんだからな!」
「じゃあまた明日な!お疲れ!」
夜風が冷たい
店を出た瞬間は、まだ大丈夫だった
歩けるし、視界も普通
ヒールの音もちゃんとまっすぐ響いてる
駅に向かう途中、急に胃の奥がひっくり返る感覚が来た
反射で路地に入る
壁に手をついた瞬間、限界が来た
喉が焼けるみたいに痛くて、呼吸が浅くなる
膝が落ちそうになるのを、腕で無理やり支える
個性の反動だって分かってる
疲労
ストレス
痛み
何人分も吸った日は、こうなる
大丈夫だ、慣れてる
勝己は何も言わないで状況だけを見ている
吐いた跡
壁に手をついてる姿勢
揺れてる呼吸
私は口元を拭いて、小さく笑った
嘘
でも半分本当
勝己は何も返さず、踵を返した
そのままコンビニに入る
数分後、ペットボトルを持って戻ってきた
受け取って、口をゆすぐ
冷たい水が喉を通ると、少しだけ楽になる
勝己が何も言わないから
夜の音だけが遠くで鳴っている
勝己がポケットに手を突っ込んだまま言った
その言い方が、少しだけ昔と同じで
胸の奥が変に揺れる
嘘じゃない
本当でもない
無理なんて、ずっとしてる
少しだけ眉を寄せる勝己
昔からそうだ
この人には誤魔化しが効かない
懐かしくて、ちょっと笑いそうになった
会話はほとんどないけど苦じゃない
それが不思議で、少しだけ怖い
胸の奥が、少しだけうるさくなった












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!