「お疲れ様でしたー!」
長い長い夜が終わって時刻は深夜1時
帰りながら営業LINEして...家に帰ってメイク落として...お風呂入って...客にまた営業LINEして...
「ねえねえユウリ!始発までどっかで時間潰さん?」
「えー残念...今度行こうね!」
その時間あるなら営業LINE一本でも送れよ
遊んでる余裕あるなら数字作れ
今月の売上見えてる?
その甘さでこの店残れると思ってる?
ああ、スキンケアまた手抜きだ
メイクで誤魔化してるけど、崩れ方が雑
汚い
冷えた空気に頬を撫でられながら、コンビニでアイスを買う
夜明け前のこの街は、妙に静かだ
ネオンだけがまだ働いてる
溶けないうちに帰ろう、と袋を揺らした、そのとき
「……おい」
やけに昔の記憶を叩く声
振り返って、最初は誰かわからなかった
ヒーローのコスチューム
逆立った金髪
刺すみたいな視線
名前が口を出た瞬間、時間が歪んだ
幼馴染
中学まで、同じ空気を吸ってた人
でも、いつからか話さなくなって
高校に入って
気づいたら――連絡も途切れた人
視線が私の服とメイクとネオンと街をまとめて舐める
昔から変わらない
不機嫌そうで、真っ直ぐで、嘘がつけない目
爆豪勝己
ヒーロー名はなんだったかな、忘れた
ヒーロー
私とは、まるで違う道を選んだ人
袋を少し持ち上げる
どうでもいい会話
どうでもよく見せるのが、癖だ
でも彼は一瞬だけ、眉をひそめた
この人はきっと気付いた
私の中に溜まった「なにか」
削れ続けてる部分
ヒーローは、そういうのを嗅ぎ分ける
それ以上、言わせなかった
すれ違おうとした瞬間
手首を掴まれた
強いけど、どこか迷ってる力
昔からそうだ
爆豪勝己は、いつだって不器用だ












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。