走っているせいで、肩に掛けている鬼車が
激しく揺れる。俺はその振動を服越しに
感じながら、広い商店街を駆け抜けた。
政府の城の門には、兵士が2人立っていた。
門は全開で、今にも飛び込めそうだった。
俺はその時、自分でも感じたことが無い位、
早く、速く走っていた。
翔が、鈴星がいなくなった悲しみから来る焦りの
せいか、目頭が熱を帯びていた。意識が朦朧とする中、
俺は城の門の中に、いや、青い闇の中に飛び込んだ。
羽「おん………?よぉ坊主。お前が今回の"血まみれ"
かあい?」
鋼「……………」
体は不思議と疲れていなかった。見た限り、
羽 輪浮は、"青い羽の眷族"だった。
この国は、"青い羽の眷族"を汚物呼ばわりするくせに、
自分たちに都合がいい奴だったら構わないんだろうか。
こいつの名前、よく思い出せば聞いた事がある。
[青い目の輪浮]
目の前のやつはそう恐れられていた。でも今は
そんなことどうでもいい。
鈴星をどう助け出すかが重要だ。もちろん条件は、
目の前の羽 輪浮を倒すことだけ
そして倒さなければならない。
耳障りな中継者の声が、俺と羽、国王、そして
鈴星がいる城の闘技場内に深くこだまする。
国王が持っている青い皿が落とされ、地に着いて
割れたら回線の合図だ。
目頭が熱を持ち、鬼車に緊張が伝わる。
俺は背中に奇妙なものを感じながら、
鬼車の封印解放呪文を唱えた。
「パリン」
皿が落ちた。
さあ、開戦だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!