そっと机に置かれた未完成の茶番ちゃんを見る。
あれから10年。私はもう大人になった。
あの日、私が彼らから逃げた日。無事クラレ先生達と海外に逃げ先生の人脈を頼りに生計を立てた。
私は先生のご好意でこの場所にいる。本当に先生様々だよ。
彼らは、あれから裏社会の立派な住民になってしまった。wrwrdという名前の秘密結社を立て、かなりの勢力があるそう。
私たちは拠点を転々としている。それは彼らに居場所を特定されたり、クラレ先生の追っ手が来たりだったり様々だけれど、常日頃から私たちは狙われている。
彼らは諦めることを知らないのか、今でも私の事が本気で好きらしい。
らっだぁが撃たれたあと、ナタリーさんが的確な応急手当をしてくれたおかげで命に別状はなかった。
今は私たちと、ここに来るまでに出会った五人と一緒に行動している。
らっだぁ運営設立だー!なんて騒いでいたのが懐かしい。今ではセキュリティ管理にとても助けられている。
厳重に保管しているチップを手に茶番ちゃんを思い出す。
最初は敵と思って恨んでいたけれど、茶番ちゃんはいつも私を支えて、未来へ導いてくれた。
絶対にまた、一緒に話そうね。
そう深く心に誓った。
真夜中、沢山のパソコンの前に私は座っている。
薄暗く、ブルーライトがほんのり照らす部屋にはキーボードの音だけが響いている。
珈琲を飲んでふとカレンダーを見る。
そうだ、今日は……。
キィっと椅子を軋ませゆっくり後ろを振り向く。
拝啓別世界の過去の私へ
私は今元気にやっています。最愛の家族を失い、仲良かった友達も失い、親友も失いました。
まともな青春も送れませんでした。
きっと今あなたは、知らないアプリやプロフィール、茶番ちゃんという怪しい存在に日々困惑しているでしょう。
とても楽な人生とは言えないけれど、頑張って乗り越えた先には楽しく、大変な日々が待っています。
だから___
あなたには、やってもらわないといけない使命があるから。
願わくば、あなたの未来に幸おおからんことを。
__END













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。