今年は桜が早く咲いたらしい校庭。
風に舞う花びらが、目の前を通り過ぎていく。
胸に残る熱い気持ちは、ただ静かに散っていく。
言おうと思っていた言葉は、喉元で消えた。
さよならも言えなかった
ありがとうも言えなかった
「好き」も、言えなかった。
まだここで高校生でいたかった。
まだ、先生の生徒でいたかった。
叶わないと分かっているのに、胸の奥で何度も願う。
近づきたかった。
でも、近づいてはいけなかった。
桜の花びらは静かに、ただ落ちていく。
まるで、告げられることのないまま終わってしまった恋のように。
青春は最も美しい瞬間で、 何も残さず、静かに幕を閉じる。
それでも────確かに、ここにあった。
体育祭の歓声も、あの冬の朝も、先生と過ごしたすべての瞬間も。
胸の奥に静かに。
でも鮮明に残ったまま。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!