side 廉
『…っ』
「ほらぁゆーたやろ?無理すんなって」
2日後
案の定最悪の顔色で楽屋に入ってきたかぐ
「熱測ったん?」
『36.7やから大丈夫やって』
「そりゃコロナではないやろうけど」
平野「おはよ…って…あーやっぱり」
次に入ってきた紫耀も"やっぱり"という顔でかぐの隣に座る
平野「どこがしんどい?」
『大丈夫だって』
「大丈夫な人間はそんな辛そうな顔せんと思うけど?」
『熱ないじゃん。大丈夫』
平野「将来医者になる人が分からないわけないと思うけどさ、熱なかったら本当に大丈夫なの?」
『…』
恐らく痛いところを疲れたんやろ
たとえ熱がなかったとしても自分の身体が悲鳴を上げていることくらい医学部2年のかぐには絶対わかってて
でも
『大丈夫やから』
その言葉はもう、かぐにとってのおまじないみたいなもんなんやろうな
気を抜いたら倒れそうなくらい行き詰まってるから、でも倒れている場合じゃないから
"大丈夫"
そういう自分へのおまじないをかけてる
でもさあ…な?かぐ。
「俺らの前では無理せんでええねんで?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!