真白は、資料室を出た後も胸のざわつきが消えなかった。
手に残るポラロイド写真の感触と「非公式記録」という文字。
そして、月神音羽の兄、月神和音の名前。
廊下を歩きながら、真白はスマートフォンを取り出した。
画面には通知が一件。
件名 :監視体調のログに異常あり。
発信者:K‐05記録分析室
捜査一課に所属する極秘の記録分析チーム。
そこからの直接の通知など、一度も受けたことがない。
胸騒ぎを覚えながらファイルを開くと、そこに記されていた監視対象の名前を見て、真白は凍り付いた。
ーー監視対象:真白 雪
自分。
しかも、アクセス者不明。
記録の改ざん履歴まである。
再編集のログは、深夜0時27分。
ちょうど自分が資料室にいた時間帯。
だが、真白はその時間、自分が何をしていたのか細部まで思い出せなかった。
ポラロイド写真を見つけて……その跡、どれほど時間がたったのか覚えていない。
その時、スマホがもう一度震えた。
真白はすぐに通話ボタンを押す。
柴咲の声は、珍しくわずかに動揺していた。
真白の背筋に氷の張りが突き刺さったような気がした。
だが、言葉に自信が持てなかった。
資料室で感じたあの”声”、過去の断片、そして自分を見つめるもう一つの視線。
通話が切れた後も、真白はその場から動けずにいた。
静まり返った廊下。
微かに蛍光灯が鳴る。
ふと、スマホの画面が勝手に点灯する。
ーー「M」
赤い文字が浮かび、すぐに消えた。
スマホを床にたたきつける。
液晶がひびを描くが、今の真白にはどうでもいいことだった。
その時、背後に気配を感じて振り返るが、そこには誰もいなかった。
だが、部屋の窓ガラスに映った”自分”が微かに笑っていた気がした。
静かに嘲笑う、鏡の中の自分。
耳の奥で。その声がささやく。
真白は両手で頭を押さえる。
だが、心の奥底で何かが確実に目を覚ましつつあった。
資料室に残された断片、改ざんされた記録、そして”M”の文字。
三人の死にかかわる何かが、再び自分を試そうとしている。
真白はゆっくりと息をつき、震える足を一歩踏み出した。
その時、何処かで嗤う声が響いた。
それは外からではない。
自分の中から聞こえた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。