第3話

File - OO2
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2025/08/08 09:36 更新





























  立ち並ぶ店や街灯が照らす道を


  隊長と並んで歩く。









  
  時刻は20時を回っていた。






  いくらか人通りは少なく、


  普段賑やかな街並みは静かで、


  靴底がコンクリートを鳴らす音がよく聴こえる。















あなた
今日はどこに行くんですか?

Stanley
ん?
Stanley
いつもんとこだよ

あなた
……好きですね、ブリトー

Stanley
美味いかんね















  この人今日の昼もブリトーじゃなかったっけ。


  と、任務中の昼下がりを思い出す。

































  



  いつもの道を辿り、


  いつものメキシコ料理店へ入る。






  緑色のドアを押し開ければ、カランコロンと


  ベルが控えめに鳴った。






  店内には年配の男性が1人と若い男女、


  カウンターを見れば店主が居て料理の下準備を


  している様だった。
























Stanley
奥の席でいいか?

あなた
はい


















  店の奥にある2人用の席につく。


  奥が隊長、手前に私。

  
  テーブルを挟んで向かい合う様に

  椅子に腰をおろす。


 
  先客がいなければ、私たちが座るのは決まって

  この席だ。


  
































.
やぁ、また来てくれたのかい
今日は何にする?






  水が注がれたグラスを2人分持って、


  店主が私たちに話しかける。





  白髪に赤いバンダナが印象に残る

  気前のいいおじいさんだ。


















Stanley
ブリトー1つ、いつものな
Stanley
あなたの名前(カタカナ)は?

あなた
じゃあ…私も同じのを




.
はいよ





























Stanley
珍しいね、いつもは違うの食うじゃん


あなた
気分ですよ


Stanley
ふーん



























  少しの間沈黙が流れる。



  スマホを触ったり、意味もなくメニュー表を


  めくったりして料理が届くまで時間を潰す。





  他の人とだったらきっと居心地の悪い、

  この気不味いであろう時間も、


  この人とであれば今となっては気にならない。















  ………あ、そうだ















あなた
…前から聞きたかったんですけど、


Stanley
?
Stanley
何よ










  私の声に、隊長は

  スマホに落としていた視線を上げ、


  私と目を合わせた。













あなた
何で私を食事に連れて行くんですか?
あなた
隊長は誰かと食事とか好きなタイプ
じゃないと思ってたんですけど…










Stanley
………

















  私の問いかけに、隊長は少し間を置き、



  灰皿に煙草を押し付け口を開いた。
























Stanley
まぁ、…好きではないね


あなた
でしょう?





Stanley
ただ、アンタとだったら悪くねぇ
Stanley
そんだけだよ








あなた
………
























  隊長は片手で口元を隠し肘をつく。


  目は合わない。


















あなた
……私と他の人、
何か違うとこがあるんですか?


Stanley
女はすぐ写真撮りたがんじゃん
Stanley
けどあなたの名前(カタカナ)、アンタにはそれが無い

Stanley
どっかの科学屋みたく論文解説とかもな






あなた
科学……あぁ、
あなた
ゼノさん…でしたっけ、
幼馴染なんですよね


Stanley
あぁ、アイツの科学解説は始まったら長えかんね


あなた
……前それ知らずに聴いていたら止めらんなくて気づけば2時間経ってました
あなた
もっと早く教えてくださいよ…

Stanley
ハハッ!マジ?
Stanley
悪いね










  絶対悪いと思ってない。


  というか分かってて黙ってたなきっと。








  隊長は意外と笑う人だ。


  ここ数ヶ月、徐々に笑顔を見る回数が

  増えてきている。



  


  初めてタッグを組んだ日は怖かったなぁ。


  表情は変わんないしずっと煙草吸ってたし。


  





Stanley
ゼノの科学話が始まる時んはスイッチがあんだろ?
Stanley
どんなワード出したんよ?


あなた
何だっけなぁ……
あなた
弾速…がどうとか…?


Stanley
そりゃあ入んぜ、ゼノのスイッチ

あなた
というか何話しても全部科学に
繋げるでしょう?

Stanley
そりゃそうだな













  隊長の幼馴染のゼノさん。


  NASAの科学者という凄い人だ。

  


  以前、隊長の紹介で初めてお会いしたけど、


  それはもう色々な意味で凄い方だった。



  それにその日は隊長が用事があると言って

  途中で退室。



  私からすれば上司の親友、

  ゼノさんからすれば親友の部下、


  どちらにせよお互い初対面だ。





  それなのに何食わぬ顔でこの人は部屋を出た。

























Stanley
そんじゃ、俺は用事があるかんね
Stanley
また来っからよ


あなた
………えっ隊ちょ

  バタン。



  私の呼びかけは拾われること無く、


  無慈悲に閉められたドアにぶつかった。






Dr.Xeno
おお、すまないね
Dr.Xeno
スタンはああ言う男だ

あなた
………


Dr.Xeno
スタンから君の話は度々聞いているよ
Dr.Xeno
優秀な部下だとね

あなた
え、いや私はまだ全然…

Dr.Xeno
あのスタンが言うんだ、
自信を持って良いと思うよ

あなた
…ありがとうございます





Dr.Xeno
それより、君は科学に興味はないかい?

あなた
……へ、科学、ですか
あなた
興味…というか、関わりはあります…多分
あなた
弾速とか…?


Dr.Xeno
おお、弾速!
Dr.Xeno
弾丸の速度というのは、単に“速い”か“遅い”で片付けられる話じゃないんだ。
あなた
……はい?

Dr.Xeno
まず考慮すべきは口径と薬室圧力、それからライフリングによる回転安定性。
Dr.Xeno
発射直後の初速は火薬の燃焼効率とバレルの長さに左右される。それに空気抵抗はマッハ1を境に性質が大きく変化する。さらに、弾頭形状によっては____

あなた
………




 始まってはいけない何かが始まってしまったようだ。




Dr.Xeno
________、____、____________

あなた
……






  あまりに生き生きと言葉を紡ぐので


  止めようにも止められなく、


  そのままズルズルと隊長が戻って来るまで

  科学の徹底解説はノンストップで続いた。







































  懐かしいな。


  今思えば聴いていて損は無かった話だ。



  もう一度会って違う話を聴いてみたいかも。




























.
はい、ブリトー2つね









  ゼノさんと初めて会った日を思い出していると


  店主がブリトーの乗った皿を2つ、


  隊長の前と私の前に並べた。













  クリーム色の陶器皿に、


  こんがりと焼き色のついたトルティーヤで


  包まれたブリトーがふんわり湯気を立てて 


  乗っている。




  香ばしい香りが鼻を擽った。








あなた
ありがとう、じゃあお代を
Stanley
コレで頼むぜ






  
  やられた…!


  と思った時にはもう遅く、2人分のお代を

  隊長から受け取った店主は既にカウンターへと

  戻っていっていた。






あなた
……

Stanley
まだまだだね、あなたの名前(カタカナ)

あなた
くっ……







  隊長はこちらを見て目を細めフッと笑い、

  いつの間にか吸っていたらしい煙草を

  口元から離し、灰皿で火を消した。









あなた
今日こそは払うって言ったのに……






  今日はほんとに負けないと思って

  懐にお代を忍ばせてまでいたのに……


  つい口から言葉が溢れる。







Stanley
……





















  反対側から手が伸びてきて、


  ぽん、と頭に乗っかった。














Stanley
アンタはまだガキだかんね、
大人しく奢られとけばいんだよ

あなた
………

Stanley
早く食いな、冷めんぜ

















  …払われてしまっては仕方ない。


  次があった時の作戦を考えながら、

  ブリトーを両手で持ち上げる。






  熱さを警戒しつつ、角の方から一口齧った。







あなた
!
あなた
おいひい…!


  そう思わず口に出してしまうほどには

  美味しいものであった。


  あの隊長がリピートするのも頷ける。



  次からここに来るときはブリトーを注文しよう。












Stanley
……フハッ、
Stanley
誰も盗んねえよ、ゆっくり食いな

あなた
っん゛




  ナプキンで口元を拭われた。


  夢中で口元にソースがついているのにも

  気づかなかったらしい。







Stanley
……小っちぇえ一口だな

あなた
?
あなた
何ですか?


Stanley
……お子さまだなってさ

あなた
はぁ?














伸びろ〜〜

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