数日が経った頃、友人とは手紙のやり取りをしなくなった。
友人からは何通か手紙が送られてきていたけど、
私は返事を返さなかった。
返したら、またあの苦しみがやってくる。
それに、そんなことをせずとも大統領は私の部屋に来る度に腹を蹴った。
ストレスが溜まっているらしい。
私の腹には醜い痣ができていた。
かつての友人が叱られているところを遠くから見ることしかできない。
そこには何の感情もなかった。
本来湧くはずの哀れみも、大統領への憎しみも、なぜか感情が湧かない。
前の私なら横入りして助けていたかもしれないのに。
懇願する友人。
もっと下のランクは確か………地下で、死と隣り合わせのさらに厳しい訓練が行われていると聞いた。
毎日何十人もの死人が出ているらしい。
大統領は友人を訓練所から引っ張っていった。
他の人もその様子を見届けている。
その時、友人と目が合ってしまった。
しかし、私は顔を逸らし、全てを捨てた。
その後の友人の顔は見ていないけど、きっと私と同じく絶望していただろう。
ひと月ほど経てば、もう私は大統領好みの完全なる殺人兵器と化していた。
感情もないし、敵であれば無差別に人を撃つ。
ガウルには、まだ少し恐怖という感情が残っていた。
ガウルにとって最も恐ろしいのは大統領であった。
こうしてガウルは、不本意ながら、"悪魔"と呼ばれるようになった。
ガウルは訓練所に入ってからの全ての記憶を思い出した。
しかし、それでどうなるなどはない。
人生で二度目の絶望だった。
ガウルは一人一人着実に残った兵士達を殺して行った。
このままI国に進み、I国の兵士も全滅させるだろう。
一通り今日の作業を終えたヒョンソは、
ウォニョンの心配をしていた。
一息つき、地面に座り込むと
懐かしい声が聞こえてくる。
ジウォンはヒョンソの前で止まると、
激しく息切れをしていた。
どうやら物凄い勢いで走ってきたらしい。
ヒョンソは周りを見回した。
しかし、ジウォンはそういうことじゃないというように首を横に振った。
ジウォンは頭を抱えた。
ヒョンソは理解ができない様子でぽかんと口を開けていた。
ヒョンソは無心で立ち上がり、
ジウォンの身体を押し退けてガウルを探しに行った。
自分に言い聞かせるように唱えながら
街をひたすら歩き回るガウル。
兵士がいればすぐに銃を向け、容赦なく殺す。
敵や味方など、ガウルには関係ない。
背後からヒョンソの声がして、振り返ってみた。
そこにはヒョンソと同じ容姿の女の子がいた。
一瞬目を疑ったが、幻かと思い、すぐに顔を前に戻した。
ヒョンソがいるはずない。
私が殺したのだから。
ヒョンソは私の名を呼び、叫んでいる。
いつになく、怒っているような言い方だ。
まるで薬物に依存してしまったかのように、
ガウルはブツブツと何かを呟いていた。
ヒョンソは呆れた様子で腰に手を置き、その様子に痺れを切らした。
ヒョンソはガウルに近づき、
今にも顔のどこかがくっついてしまいそうな程密着した。
ガウルは1歩身を引き、目を丸くした。
普段、人とこんなに至近距離で近づかないガウルは、
思わずヒョンソの肩を押してしまった。
尻もちをついたヒョンソは、痛そうにしながらも顔を上げた。
すると、ガウルは今までに見たことがないほど冷たい目で銃を向けていた。
そう言い切ると、ガウルは引き金を引いた。
足を撃たれたヒョンソは、
血が流れる傷口を必死に手で抑えていた。
痛い どころの騒ぎではない。
傷口は熱く、あまりにも苦しい。
足が動かない。
これじゃ、ガウルさんに何もしてあげられない。
ガウルさんは、しばらく私の様子を見つめた後、
何かから逃げるように走り去っていった。
どうしよう。
手当をする道具も何も持ってきていない。
こんなところで、恥ずかしい。
突如現れたユジンは、地面に転がっていた銃弾を手に取り、じっくり観察した。
ヒョンソはユジンの姿に目を丸くした。
その時、ユジンは記憶を思い出した。
レイに無理やり飲まされた薬のことを。
きっと、ガウルとはまた少し違った薬であろう。
しかし、レイの目的があまりにも謎だ。
ユジンは立ち上がり、遠くを見つめた。
まだ戦争は終わっていなかった。
厄介な相手が残っているみたいだ。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!