第24話

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2026/09/12 11:00 更新










数日が経った頃、友人とは手紙のやり取りをしなくなった。

友人からは何通か手紙が送られてきていたけど、

私は返事を返さなかった。

返したら、またあの苦しみがやってくる。

それに、そんなことをせずとも大統領は私の部屋に来る度に腹を蹴った。

ストレスが溜まっているらしい。

私の腹には醜い痣ができていた。

大統領
おい、何でそんなこともできないんだ
友達
ご……ごめんなさい………
ガウル
ガウル
……


かつての友人が叱られているところを遠くから見ることしかできない。

そこには何の感情もなかった。

本来湧くはずの哀れみも、大統領への憎しみも、なぜか感情が湧かない。

前の私なら横入りして助けていたかもしれないのに。

大統領
お前はもう必要ない
大統領
下のランクに下がってもらう
友達
それだけはやめてください………!


懇願する友人。

もっと下のランクは確か………地下で、死と隣り合わせのさらに厳しい訓練が行われていると聞いた。

毎日何十人もの死人が出ているらしい。

大統領
私に口答えをするな


大統領は友人を訓練所から引っ張っていった。

他の人もその様子を見届けている。

その時、友人と目が合ってしまった。

しかし、私は顔を逸らし、全てを捨てた。

その後の友人の顔は見ていないけど、きっと私と同じく絶望していただろう。






ひと月ほど経てば、もう私は大統領好みの完全なる殺人兵器と化していた。

感情もないし、敵であれば無差別に人を撃つ。

大統領
よし、完璧だ
大統領
これからお前には特殊部隊の隊長として動いてもらう
大統領
レイ という情報屋をつけるから2人で何とかやってくれ
ガウル
ガウル
分かりました
大統領
敵であれば全員殺せ
大統領
少しでも情が湧いた場合、お前の命はない
ガウル
ガウル
………はい


ガウルには、まだ少し恐怖という感情が残っていた。

ガウルにとって最も恐ろしいのは大統領であった。


こうしてガウルは、不本意ながら、"悪魔"と呼ばれるようになった。






ガウル
ガウル
………思い出した


ガウルは訓練所に入ってからの全ての記憶を思い出した。

しかし、それでどうなるなどはない。

ガウル
ガウル
ヒョンソはもういない……私が殺したから………


人生で二度目の絶望だった。

ガウルは一人一人着実に残った兵士達を殺して行った。

このままI国に進み、I国の兵士も全滅させるだろう。









ヒョンソ
ヒョンソ
(ウォニョンオンニ……大丈夫かな)


一通り今日の作業を終えたヒョンソは、

ウォニョンの心配をしていた。

一息つき、地面に座り込むと

懐かしい声が聞こえてくる。

ジウォン
ジウォン
ヒョンソー!
ヒョンソ
ヒョンソ
ジウォンオンニ!?
ヒョンソ
ヒョンソ
早かったですね?


ジウォンはヒョンソの前で止まると、

激しく息切れをしていた。

どうやら物凄い勢いで走ってきたらしい。

ジウォン
ジウォン
はぁ………はぁ………
ジウォン
ジウォン
ヒョンソ!街の様子、見た!?
ヒョンソ
ヒョンソ
え?街の様子………?
ヒョンソ
ヒョンソ
こんな感じで……変わらずですけど………


ヒョンソは周りを見回した。

しかし、ジウォンはそういうことじゃないというように首を横に振った。

ジウォン
ジウォン
あの……ガウル?とかいう人が兵士達を全員殺そうとしてるの!
ヒョンソ
ヒョンソ
え?ガウルさんが………?
ジウォン
ジウォン
はぁ………もう………だから嫌なのに………


ジウォンは頭を抱えた。

ヒョンソは理解ができない様子でぽかんと口を開けていた。

ジウォン
ジウォン
ヒョンソ、あの人はやっぱり危険だよ
ジウォン
ジウォン
近づいちゃダメ
ヒョンソ
ヒョンソ
………私……行かなきゃ
ジウォン
ジウォン
え?どこに?
ヒョンソ
ヒョンソ
ガウルさんのところに


ヒョンソは無心で立ち上がり、

ジウォンの身体を押し退けてガウルを探しに行った。










ガウル
ガウル
ヒョンソはもういない………


自分に言い聞かせるように唱えながら

街をひたすら歩き回るガウル。

兵士がいればすぐに銃を向け、容赦なく殺す。

敵や味方など、ガウルには関係ない。

ヒョンソ
ヒョンソ
ガウルさん………!!


背後からヒョンソの声がして、振り返ってみた。

そこにはヒョンソと同じ容姿の女の子がいた。

ガウル
ガウル
ヒョンソ………?


一瞬目を疑ったが、幻かと思い、すぐに顔を前に戻した。

ヒョンソがいるはずない。

私が殺したのだから。

ヒョンソ
ヒョンソ
ガウルさん!!何してるんですか?


ヒョンソは私の名を呼び、叫んでいる。

いつになく、怒っているような言い方だ。

ガウル
ガウル
幻………?
ガウル
ガウル
もしかして、霊?
ガウル
ガウル
私が殺したから呪いに来たの?
ヒョンソ
ヒョンソ
もう!何言ってるんです?


まるで薬物に依存してしまったかのように、

ガウルはブツブツと何かを呟いていた。

ヒョンソは呆れた様子で腰に手を置き、その様子に痺れを切らした。

ガウル
ガウル
ヒョンソは私が殺したはず………
ガウル
ガウル
この手で………ナイフで………
ヒョンソ
ヒョンソ
生きてます……!
ヒョンソ
ヒョンソ
勝手に殺さないでください
ガウル
ガウル
生きてる…………?そんなわけ………
ヒョンソ
ヒョンソ
もう………本当にどうしちゃったんですか?


ヒョンソはガウルに近づき、

今にも顔のどこかがくっついてしまいそうな程密着した。

ガウルは1歩身を引き、目を丸くした。

ガウル
ガウル
近づかないで…………!
ガウル
ガウル
ヒョンソじゃない………ヒョンソはもういない


普段、人とこんなに至近距離で近づかないガウルは、

思わずヒョンソの肩を押してしまった。

尻もちをついたヒョンソは、痛そうにしながらも顔を上げた。

すると、ガウルは今までに見たことがないほど冷たい目で銃を向けていた。

ヒョンソ
ヒョンソ
ガウルさん…………?
ガウル
ガウル
私のことを陥れるために仕組まれた罠だよね?
ガウル
ガウル
私は絶対に騙されないから


そう言い切ると、ガウルは引き金を引いた。

ヒョンソ
ヒョンソ
う゛っ……………


足を撃たれたヒョンソは、

血が流れる傷口を必死に手で抑えていた。

ヒョンソ
ヒョンソ
痛い…………………


痛い どころの騒ぎではない。

傷口は熱く、あまりにも苦しい。

足が動かない。

これじゃ、ガウルさんに何もしてあげられない。

ガウル
ガウル
……………っ


ガウルさんは、しばらく私の様子を見つめた後、

何かから逃げるように走り去っていった。

どうしよう。

手当をする道具も何も持ってきていない。

こんなところで、恥ずかしい。

ウォニョン
ウォニョン
ヒョンソ………!?
ヒョンソ
ヒョンソ
ウォニョンオンニ………?
ヒョンソ
ヒョンソ
帰ってきてたんですね!
ウォニョン
ウォニョン
そんなことより、早く治療しないと………!
ヒョンソ
ヒョンソ
すみません………
ユジン
ユジン
この銃弾、ガウルオンニのものだね


突如現れたユジンは、地面に転がっていた銃弾を手に取り、じっくり観察した。

ヒョンソはユジンの姿に目を丸くした。

ヒョンソ
ヒョンソ
え?ユジン……さん?
ユジン
ユジン
こんにちは
ウォニョン
ウォニョン
私も国に帰りたいとか言い出すから……連れてきたの
ウォニョン
ウォニョン
ユジンさんは元々こっちの国の人なんだって
ヒョンソ
ヒョンソ
そうなんですね
ユジン
ユジン
ところで、ガウルオンニにやられたの?
ヒョンソ
ヒョンソ
はい………でも……何か様子がおかしくて………
ユジン
ユジン
様子がおかしい?
ヒョンソ
ヒョンソ
はい……ヒョンソは私が殺したとか……ヒョンソはもういないとか………
ヒョンソ
ヒョンソ
まるで幻覚を見ているかのように接してくるんです
ヒョンソ
ヒョンソ
それで……撃たれちゃいましたし……
ユジン
ユジン
誰かに薬を入れられてるかもしれない
ユジン
ユジン
………


その時、ユジンは記憶を思い出した。

レイに無理やり飲まされた薬のことを。

きっと、ガウルとはまた少し違った薬であろう。

しかし、レイの目的があまりにも謎だ。

ユジン
ユジン
ガウルオンニを探しに行こう
ユジン
ユジン
このままじゃまずい
ユジン
ユジン
兵士どころか、国民まで殺してしまう


ユジンは立ち上がり、遠くを見つめた。

まだ戦争は終わっていなかった。

厄介な相手が残っているみたいだ。










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