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第1話

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103
2021/09/28 09:09
紗奈
紗奈
里穂・・・ちょっと聞いて欲しいことがあるの
里穂 
里穂 
どうしたの?
紗奈
紗奈
その・・・不思議なことがあってね、今
里穂 
里穂 
不思議なこと?
紗奈
紗奈
タカのこと・・・覚えてるよね?
里穂 
里穂 
タカ・・・って。五年前に亡くなった、紗奈の彼氏のタカヤのこと?
紗奈
紗奈
うん
里穂 
里穂 
勿論、覚えてるよ
タカヤくんが、どうしたの
紗奈
紗奈
 実は、さっき手紙が届いて
里穂 
里穂 
手紙?
紗奈
紗奈
タカヤからの、手紙だったの
里穂 
里穂 
・・・どういうこと?
あ、タイムカプセルみたいなやつ?そういうサービスあるって私きいたことある
それで届いたのかな
紗奈
紗奈
うん、そうだと思う
里穂 
里穂 
タカヤくん、紗奈のこと本当に好きだったもんね
紗奈
紗奈
うん
なんか嬉しいね、懐かしい・・・泣いちゃった
里穂 
里穂 
紗奈・・・
なんて書いてあったの?
紗奈
紗奈
うん、優しい言葉ばっかりだったよ。私のこと、思ってくれてて。入院中、一生懸命書いてくれたんだね。
???
???
紗奈へ
五年後の紗奈は元気かな?
年を重ねた紗奈を見れないのは残念
後少ししか時間がないから言うね
恥ずかしいけど・・・愛してる
俺がいなくなっても笑っていてね
一人で思いつめないでね。
人生、短いけど幸せでした
ニコニコ笑う紗奈が大好きでした。
死んだ後も、紗奈の幸せを願うよ。
手紙 読んでくれてありがとう。
タカヤより
紗奈
紗奈
・・・だって
里穂 
里穂 
優しいね、タカヤくん
紗奈
紗奈
うん・・・
でも、なんか手紙だと雰囲気違うんだなって思った
里穂 
里穂 
そうなの?
紗奈
紗奈
タカにしては、ちょっとポエムっぽいというか。本当は、他にも言いたいことあったのかなって。
里穂 
里穂 
他にも言いたいこと?
紗奈
紗奈
うん、タカ怖がりだし寂しがりだったから、本当は弱音吐きたかったのかも
里穂 
里穂 
紗奈のために、我慢して書かなかったのかもね
紗奈
紗奈
そうなのかな。そうだとしたら、余計泣けちゃうね
里穂 
里穂 
よかったね、紗奈
紗奈ももうすぐ結婚するんだし、タカヤくんのことは思い出として大事にしようね
紗奈
紗奈
うん・・・里穂、ありがとう
<数時間後>
里穂 
里穂 
・・・紗奈??
紗奈
紗奈
?里穂、どうしたの
里穂 
里穂 
手紙のことなんだけどさ、
紗奈、気づいた?
紗奈
紗奈
気づいた、って何に?
里穂 
里穂 
やっぱり、気づいてないんだ
紗奈
紗奈
え・・・?さっきから何言ってるの
里穂 
里穂 
さっき、紗奈が手紙だと雰囲気が違うって言ってて、なんとなく手紙の内容読み直してたの
紗奈
紗奈
そしたら、
タカヤくんが本当に言いたかったこと?っぽいのが書いてあって・・・
紗奈
紗奈

どこ?
どこに書いてあるの?
里穂 
里穂 
手紙、頭文字だけ読んでみて
紗奈
紗奈
頭文字?
五・・・年、後、恥・・・俺、一、人 に、死、手・・・
里穂 
里穂 
これって
五 年 後 は 俺 一 人 に し て 
って読めるよね・・・?

紗奈
紗奈
あ、
里穂 
里穂 
私には、いまいち意味がわからないんだけど
一人にして、ってどういう意味だろう・・・?
紗奈
紗奈
やだ

里穂 
里穂 
・・・紗奈?
紗奈
紗奈
あ、え・・・どうしよ
里穂 
里穂 
紗奈?
紗奈
紗奈
タカ、知ってたんだ、全部・・・
怖い
どうしよう
怖い
里穂 
里穂 
紗奈、落ち着いて
どうしたの?
紗奈
紗奈
私・・・私
浮気してたの
里穂 
里穂 
・・・え???
紗奈
紗奈
タカの病気が分かる少し前から、同じサークルの男の子と
タカは、ずっと気づいてないって思ってた
よくない、とは思ってたんだけど
里穂 
里穂 
え、じゃあ
この【俺一人にして】・・・って
紗奈
紗奈
うん・・・
里穂 
里穂 
俺一人だけと、付き合ってね・・・って意味?
紗奈
紗奈
そう・・・だと思う
里穂 
里穂 
待って、でも
じゃあ、【五年後は】って・・・どういう
紗奈
紗奈
わかんない、怖い、怖いよ
里穂、どうしようタカが怒ってるんだよきっと
死んだあとも、私のこと許してないんだ
里穂 
里穂 
待ってよ紗奈、落ち着いてってば
紗奈、タカヤくんはもう亡くなってるんだから
里穂 
里穂 
何も起きないよ!大丈夫だから!
???
???
<着信:タカ>
紗奈
紗奈
!!!!
里穂 
里穂 
どうしたの?
紗奈
紗奈
いま、今
タカのLINEから着信あった
里穂 
里穂 
え!?
なんで・・・
紗奈
紗奈
タカのLINEアカウントは、ずっと残ってたの・・・でも・・・
なんでこのタイミングで
里穂 
里穂 
紗奈、今家に一人でいるの?
紗奈
紗奈
一人だよ、どうしよう、怖いよ
タカが怒ってるんだ
絶対そうだ
やだ
どうしよう、里穂、どうしよう
里穂 
里穂 
紗奈、いったん落ち着こう
着信は偶然だよきっと、家族の誰かが操作したのかもしれないし
一旦落ち着こ、大丈夫だから
紗奈
紗奈
でも・・・
里穂 
里穂 
今から家にいいくから、紗奈は何もしないで待ってて!
私がこんなこと言ったから、怖い思いさせちゃったよね
ごめん
でも、全部想像だから、紗奈の
紗奈
紗奈
うん・・・
里穂 
里穂 
すぐ向かうから、今日は二人でお酒でも飲んで寝よ
紗奈
紗奈
ありがとう・・・里穂・・・
<数十分後>
里穂 
里穂 
紗奈、いま最寄りで降りたよ
あと10分くらいでつくと思う!
紗奈
紗奈
え?
里穂 
里穂 
ん?
紗奈
紗奈
どういうこと?
里穂 
里穂 
なに?どうしたの?
紗奈
紗奈
さっき里穂、私に電話してきたよね?
里穂 
里穂 
え?
してないよ?
紗奈
紗奈
嘘、
さっき里穂から電話で『あと五分でつく』って
え?なに?どういうこと?

インターホン鳴ってる
里穂 
里穂 

紗奈
紗奈
怖い、怖いよ里穂
里穂 
里穂 
紗奈、大丈夫だよ!もうすぐ着くから
紗奈
紗奈
タカだよ、タカが迎えにきたんだ絶対
どうしよう、どうしよう
里穂 
里穂 
私が行くまでインターホンは出ないで
紗奈??
紗奈!
<後日談>
里穂 
里穂 
奈からの返事が途絶えたあと、私は急いで彼女の家に向かいました。
部屋の鍵が締まっていたので、管理室に行って事情を話し、部屋に入ると・・・そこには、恐怖のあまり失神したのか、紗奈が倒れていました。
幸い紗奈の体に異常はなかったのですが・・・ひどく憔悴していたので、数日間紗奈は入院することになりました
後日、二人であの手紙を持って御祓いに行き、その後タカヤくんのお墓参りをしました。
紗奈はずっとごめんなさい、ごめんなさいと繰り返し、泣きながらタカヤくんのお墓に謝っていました。浮気していたことを、心から反省したようです。
結局、あの日の出来事は一体なんだったのか・・・私には未だに謎のままです。

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