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第1話

この子の名前は
67
2023/03/20 03:00
────この世のどこかで目を覚ますひとつの生命体



脳の奥で聴こえる何か
それは誰かの声のようだった



20××planetBS1992-2001-2023
earthandblackspin??????????
birth5206typeAO+companionJ
planetBS1992-2001-2023 0127???
earthandblackspin!!!!!!!!
birth5206typeOOO+companionJ



数字……言語…………
声は聴こえるというより
語りかけてくるように脳に響いた
Youare……survivor
uesreusereducerecycle……
Runtorunbeyondthestars
ID100252061633.14159265358979
No.1nooshisaikopsychonanaeco
……anotherworld_fromearth_intokyo
Kawausomitainakawausonoakachan
aroundthetwentyyearsbirthdayhajune……
www.uchujinhirateandyurina/no.mono.gatari
……Ambivalentaboutdosurebaiindakonolove
Iknowyouknowyouareksgkbabybbbxoxo
Iwantyouineedyouyurinayurinayurinayurinayuri.....
雑音のような音に混じるその声は
何を言っているのかはよくわからなかった

だけどなぜかこの言葉だけがハッキリと聴こえた
「Save this world」




……世界…………救う……この世界を……








そして、再び目を閉じた



















───20××年 planet××××


Jによって丁寧に抱えられるソレは
微かに呼吸をしていた


J
J
今夜は静かな夜だといいな
S
S
そうですね…
でも奴らはまた必ず
ここを攻めてくるでしょう
J
J
この子が大きくなったら
……その時にはきっと、
S
S
……ソレ
J
J
ん?
S
S
本当に、生きてるんですか?
拾ってきたって聞きましたけど
どう見ても、もう……


弱々しく脈を打つ小さなソレは
生命と呼べるほど確かな重さはないが
宙に舞う塵ほど軽いものではなかった


泣きもしなければ目を開けることもせず
ただ静かに息をしている


彼の手の中で眠るその子は「生きたい。」と
そう強く願っているように思えた


J
J
あぁ、生きてるさ
生きようとしているのさ
S
S
……

遠くで星たちが光っている


光り輝くそれらは自らぶつかり合い
砕け散っては離れ、またどこかの塊と繋がる


この光景を2人は何度も見てきた


自然という名の破滅も奇跡も、崩壊も誕生も、
終わりも始まりも……






J
J
君はもう行きなさい
S
S
……
J
J
こんな惑星(ところ)に
長くいるもんじゃない
家族が待ってるんだろう?
S
S
……
J
J
さぁ、ほら
S
S
でも、、
J
J
……
S
S
自分がここを離れたら……
SはJと、抱えられたソレを見た
J
J
心配ないよ
私が責任をもって育てるさ
S
S
……
J
J
どうせあと何年だって
生きられはしない
S
S
……そんなこと
言わないでください
J
J
いつかあの暗い闇の空に
飲み込まれてしまえばそのときには
皆塵となって同じことさ
そしていつかまた生まれる
いつかは分からんがな?ははは
暗い空を指さしながら
Jは笑って話し続けた

しばらくして黙って聞いていた
Sが口を開いた
S
S
最期まであなたの元で
お力になると約束したのに……

やはり、ソレはもう諦めて私たちと、


ゴォォォォズドン……ドカン……ゴゴゴゴゴゴ………



Sの言葉を遮るように
すぐ近くで爆発音が響くと
地面が激しく揺れ始めた

J
J
君と会えて良かった
楽しかったよ、本当に楽しかった
ありがとう、元気でな
S
S
……自分もです
あなたと共に闘えたことを
誇りに思います
どうか……お元気で
Sは涙を堪え震える声で礼を言うと
その場で深くお辞儀をした

走って船に乗り込む背中を見て
Jは感心していた
J
J
おぉ……若いもんはいいなぁ
なんとも足が速い、いててて
不自由な右足を庇いながら歩いていると
先程よりも大きな爆発音がした

J
J
よしよし大丈夫だぞ
そうだ、お前に名前をつけてやらんとな
小さな生命体がゆっくりと目を開けた
J
J
名前……う〜ん
そうだ、この惑星(ほし)には
花がなかったな
ソレは向きを変えJを見つめた
J
J
おおお
目を覚ましたんだな?
なんて綺麗な目をしとるんだ
大きくなったら美しい顔になりそうだ
性別があれば女の子かもしれん
よし、可愛い名前にしよう
興奮するJに反応するかのように
口をパクパクとしながら何かを訴えている
J
J
お?何か話せるのか?
……ゆ、、り?ユリ!
ユリと言ったぞ、そうかそうか
ユリと言うと目をくりくりと光らせた
J
J
お前の名前はユリだ
よしよし
ユリと名付けられた赤ん坊は
うれしそうに笑うと再び眠りについた









───×××年後



それからユリはすくすくと育ち
あっという間に逞しく美しい宇宙人女性になった


この世界を救うため
日々色んな惑星を飛び回っており
これまで幾度となく危険な目にも遭ってきたが
任務中に出逢った恋人とも結ばれ
これから新たな家庭を築くこととなった


Jはその姿を見ると安心した顔で
自分の役目を終えたかのように静かに眠りについた


シワシワの手を握るユリは涙を流しながら
自分を育ててくれたJに感謝の言葉を伝え続けた

「ユリ、そろそろ」
「うん」



手を繋ぎ宇宙船へと乗り込む2人


瓶に供えられた花は
まるで飛び立つ彼らを見送るかのように
いつまでも、いつまでも、上を向いていた














感動的なBGMとエンドロールが流れる
















※この物語は事実にもとづくフィクションです。



画面の下に表示される最後の文章を見つめながら
余韻に浸っていると隣から鼻で笑う声がした

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