第40話

39.扉を開けるとそこは地獄でした。
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2024/03/26 15:00 更新
私の手を取ろうとして、天使に切られていたアラスター。私はあの時、手が届かなかったアラスターの顔が、忘れられない。
悲しまないで欲しかった。
私のせいでそんな顔をしたら、だめだよ。
背面に突如現れた扉はドアを開け、あなたを飲み込んだ。










(なまえ)
あなた
う……
見覚えのある、場所だった。
……何故。




ここに《また》やってきてしまったんだ??
(なまえ)
あなた
うそ……
そこは、道路。

もう、ずっと前に、タクシーのおじさんに、乗せてってもらった。死に場所を探しに通った道。
(なまえ)
あなた
うそ、うそうそうそうそ
私は走った。
夜道で車は全然走っていない。でも、分かる。
ここが地獄では無いこと。
私が、《元の場所》に戻ったこと。
(なまえ)
あなた
はぁっ、はぁっ、はぁっ
こんなに動悸が激しいのは、こんなに息が苦しいのは、走ったせいだけでは無い。
(なまえ)
あなた
あ、...あ、
(なまえ)
あなた
アラスタァァァあーー!!!!
あなたの声は真っ暗な空に吸収される。この世にただ1人であるかのような絶望感にあなたは膝をつき泣き崩れた。







空は暗く、誰もいない。
こんなに叫んでいるのだから、1人くらい気づきそうなものだが、あなたの声は静かな空に溶けていく。



涙が枯れる。

喉が焼けたように痛い。

手も、痛い。


天使の手を切った時に、自分の手首も切ったのだった。
ドクドクと血が出ていて、これ以上血が出たら死ぬ、と思う。

ここに留まるくらいなら死にたい。



あなたは目を閉じた。







その時、


また、










扉が、現れた。
(なまえ)
あなた
……ぐずっ……う……なに……?
それは

地獄に足を踏み入れた時と同じ扉

と、

違う、扉。
(なまえ)
あなた
なんで、2つ……、あ……
夢の内容と、似ていて私は気づいた。
(なまえ)
あなた
…聞こえますか、この扉を用意してくれた方。
(なまえ)
あなた
私、これからどんなに人を助けて、優しくして、感謝されて、みんなを救うヒーローのような人に、なったとしても、
(なまえ)
あなた
地獄に、いきたい
(なまえ)
あなた
どんなに徳を積んでも、天国には彼はいないの
(なまえ)
あなた
だから、私を、
(なまえ)
あなた
すぐに、地獄に堕としてください。
“...いいんですか?お父様とお母様、おばあ様もこちらで楽しく過ごしていますよ?もう少しそちらで励んでみませんか?”

そんな声が、脳に伝わる。
私は首を振った。
(なまえ)
あなた
だったら、殺します。
???
???
それはもう、殺人鬼になりえるほど、計画的に、綿密に犯行を犯す。私は愛していないモノに触らせる体は持ち合わせていない。1人ずつ殺していこう。殺したい奴らの場所は把握している。だったら、
???
???
今、私を、地獄に落とした方が、この世の為ではないですか?
脳内に響く声の主はため息をついた。そして、パチンッ、と指を弾く音がしたかと思えば、ひとつの扉は消えてしまった。残った扉は見知った扉だけ。
(なまえ)
あなた
ありがとうございます
私はお礼を述べると、ドアを力一杯押し開いた。

早く、早く、彼の元へ!!!

走って中へ入る、と




空中に、ドアはあったようで、


私は落下した。




(なまえ)
あなた
ひ、やぁあああああ?!!!
一方で、地獄の方では。

アダムが倒され、エクスターミネーションは中止、ホテル側の完全勝利を収めた。
しかし。皆の顔は、浮かない。

ホテルの家族を『2人』失った。






アラスターはラジオ塔の中に篭っていた。
切られた身体の前面、頬を引き裂く爪、その物理的な痛みは全く感じない。引き裂かれるように痛むのは、外傷など一切ないこの心臓部。
アラスター
アラスター
あなた……
私を置いて、行ってしまった。
なぜ、手が届かなかった?なぜ、扉が現れた?なぜ、彼女は、ここにいない???
アラスター
アラスター
あなた、あなた、あなた…、あなたっ……
呼んでも彼女は、ここに居ない。
……あァ、そうか。
アラスター
アラスター
Haha……隠れているんだな?
アラスターは笑顔を貼り付け影に潜るとチャーリー達のいる瓦礫の山に姿を現す。
アラスター
アラスター
彼女がどこに行ったか、知りませんか?
チャーリー
チャーリー
アラスター……
アラスター
アラスター
あァ、失礼、あなたのことです。どなたかご存知ない?
エンジェル
エンジェル
……アラスター、あなたは
ハスク
ハスク
あの男に、空から落とされて
みんな見ていたのだ。アダムの手を刺し、空から落ちていく所を。
しかし。



ガシャンッ!!!


アラスターの影の触手が、瓦礫を粉砕する。歪んだ笑みを浮かべるとハスクたちに向き直った。
アラスター
アラスター
あなたが、死んだとでも?
ハスク
ハスク
ッ……
ルシファー
ルシファー
あァ、死んではないさ。会えないだけ。
バッと全員の注目を浴びるルシファー。
居心地が悪そうにルシファーは咳払いした。
ルシファー
ルシファー
……彼女は、戻ったんだ。居るべき場所へ。
ルシファーは上を指さした。上にあるの天国と、現世。
ルシファー
ルシファー
…ニンゲンは良い行いばかり出来るものでは無い。
ルシファー
ルシファー
嘘をつくこともあるし、
ルシファー
ルシファー
裏切ることもある。
ルシファー
ルシファー
だが、そうなると全員が地獄行きになってしまう。
ルシファー
ルシファー
じゃあどうする?と、なった時に出来たのが、
ルシファー
ルシファー
あなたの使った扉だよ。
ルシファー
ルシファー
馬鹿げた話さ、お試しで地獄か天国に行ける。前準備とかレッスン不要でな!はは!
ルシファー
ルシファー
お試しだから、いつかは帰らなければならないがな。
チャーリー
チャーリー
そんな……あんなにここを気に入ってくれてたのに……それがさっきだったって言うの?あんまりだわ…
しん、と静まり返る。そんな中エンジェルは手を上げた。
エンジェル
エンジェル
でも…それ、生きたニンゲン、たくさん来ちゃうんじゃない?
ヴァギー
ヴァギー
確かに。なんでわざわざそんなリスキーなことを…
ルシファー
ルシファー
いや、制限が多くてね、あなたも一京分の1ぐらいの確率でここに来ているんだ。
ルシファー
ルシファー
(今は誰も使わないハズの禁忌のはず、だが…)
ルシファー
ルシファー
さぁ、これが天使の誰の仕業かだが…
「ーーーー……ーーーあーーー!ーーー」

ルシファーはふっと笑った。
ルシファー
ルシファー
もう、探る必要はなさそうだ。
チャーリー
チャーリー
アラスター、あなたのこと、は、その……
アラスター
アラスター
……
ニフティ
ニフティ
おねーちゃん……
ヴァギー
ヴァギー
あなた……
あーーーー……ぁーーーー
エンジェル
エンジェル
?なんか聞こえない?
ハスク
ハスク
あ?なんかって?
ルシファー
ルシファー
あァ、上じゃないか?
アラスター
アラスター
ッ!!!
……あ……あぁ……


空耳のようだった。幻聴かとも思った。
彼女の声が、聞こえる。
居るはずのない空を見上げると、全員が『あ』と大きな口を開けた。
アラスターは飛び出した。
触手の影を空に伸ばし、自身も影と一緒に移動する。
今度は、絶対、
掴まえる。
(なまえ)
あなた
ああああ!!
アラスター
アラスター
まったく……
ドサァ...!!



思った程、衝撃なく、瞑っていた目を恐る恐るあけると、会いたくて仕方がなかった彼が私を抱え込んでいた。
アラスター
アラスター
世話が焼けますねェ?
(なまえ)
あなた
ァ……
(なまえ)
あなた
アラスタァーッ!!
あなたはアラスターに抱きつく。ゆっくりと地面に降ろされると、再度アラスターの胸に飛び込んだ。
(なまえ)
あなた
聞いて、アラスター、私ね
アラスター
アラスター
いえ、待ってくださいあなた
アラスターはあなたの頬を触り髪を撫でる。そして、震える手であなたの肩や腰、首の形をなぞると、力強く抱きしめた。
アラスター
アラスター
あなただっ……!!ここに、ちゃんとあなたがいる……!!
泣き出しそうな程、声を震わせるアラスターにあなたは笑顔を見せる。そして、アラスターは気がついた。彼女の異変に。
アラスター
アラスター
あなた、アナタ、右目が…?!
(なまえ)
あなた
え?
あなたの右目は眼球が赤く染まっていた。アラスターがあなたの匂いを嗅ぐ。念入りに念入りに。アラスターは首を傾げた。
アラスター
アラスター
ニンゲンの、匂いでは、なくなっている?
(なまえ)
あなた
...アラスター、私、悪魔になった、らしいよ。
(なまえ)
あなた
...ようやく、《自由》だ。
(なまえ)
あなた
...覚えてる?アラスター、私が自由になった暁には
アラスター
アラスター
結婚しよう
アラスター
アラスター
そうですね?
アラスター
アラスター
一生手放す気はありませんからね?覚悟はいいですか?
(なまえ)
あなた
ふはっ、アラスターの血肉になるなら本望言ったけど、一生一緒にいるのも…悪くなさそう。
(なまえ)
あなた
愛してる、アラスター
アラスター
アラスター
愛してる、もう二度と離さない
二人はお互いの頬に触れると口付けを交わした。


そして、ホテルの住人たちがあなた目掛けて一目散に走りだすと、ルシファーは遠目に彼らの様子を見つめる。
ルシファー
ルシファー
ようこそ地獄へ
新たな住人を心から歓迎した地獄の王は静かに笑みを浮かべていた。
セラ
(...はぁ、なんてこと。)
セラ
(まさか地獄に行きたがるなんて…)
セラ
(二度とこのような事例が出ないようにしなければ。)
セラは本を閉じると、厳重な鍵を本に施した後、燃やしてしまった。
エミリー
セラ?何をしているの?
セラ
!いいえ、なんでもないわ、大丈夫よ、さぁ、行きましょう。
セラ
(あの本に書かれていた生身の人間を地獄か天国に一時的に拘束する方法……)
セラ
(条件は天国にも地獄にもいけるぐらいの徳と罪を持っていてなおかつ...死にたがっている者)
セラ
(一時的とは言え、まさか地獄に行きたいと言われるなんて…徳が足りなかった?だとしたら儀式自体が失敗ということに…)
セラ
燃やして正解ね
エミリー
何の話?
セラ
(今後こんなことが起きることはないでしょう。)
そう、あの扉の条件が揃ったとしても、媒介の、本が、今はもうないのだから。
アラスター
アラスター
あなた、
(なまえ)
あなた
なに?アラスター
アラスター
アラスター
アナタは【何の】悪魔になったんですか?
(なまえ)
あなた
ふ、聞いたら笑うと、多分。
アラスター
アラスター
おや、興味深い教えてください?
(なまえ)
あなた
純愛の悪魔
アラスター
アラスター
……ほう
アラスター
アラスター
たしかにたしかに、アナタにとっても、ワタシとっても
アラスター
アラスター
この愛は純愛ですね。
アラスター
アラスター
同じ悪魔になってくれたのは本当に嬉しいです、が、今はそれより味が気になってしまった。
(なまえ)
あなた
は、味?
アラスター
アラスター
今、よろしいですか?
(なまえ)
あなた
だから、なにが?
アラスター
アラスター
噛んで舐め回してめちゃくちゃにしたい
(なまえ)
あなた
ッ~!!
アラスター
アラスター
良いですか?
(なまえ)
あなた
良いわけないでしょ?!!//アラスターのどこが純愛なの?!//
アラスター
アラスター
悪魔になっても、変わらず素直じゃありませんねぇ!
アラスター
アラスター
そういう所も含めて愛しいですよ♪♪
(なまえ)
あなた
~ッもう!!
アラスター
アラスター
あなた、
(なまえ)
あなた
今度は何!
アラスター
アラスター
愛してる
(なまえ)
あなた
...私も、愛してますよ、ご主人様
アラスター
アラスター
Haha、
(なまえ)
あなた
ふ、
はははははっ!
2人揃って笑ってしまう。

恋人になっても呼んでしまう『ご主人様』。
これらは愛の印である。きっとこの先も、この言葉は、彼だけに送られる。彼が旦那様になった時も、彼女は彼にこう声かけるのかな?
(なまえ)
あなた
おかえりなさいませ、ご主人様!
おしまい
作者:まる
作者:まる
皆様のおかげをもちまして、夢主ちゃんは悪魔になって、ハッピーエンドでございます。
ずっと人間のままなのか、はたまた天使になるのではないか、色んな憶測飛びましたが、アラスターと同じ悪魔堕ちでございます。
これから2人にはどんな未来が待っているのでしょうね?
結婚?子供?2人での新生活??
それらを考えるのもとてもいい時間ですねぇ♡♡

ここまで見ていただきありがとうございました^^
感想などいただけると歓喜します…♡

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