第4話

【第三章】夏祭りの夜、二人だけの時間。
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2025/10/14 21:00 更新
夕暮れが落ちて、港町の広場はにぎわっていた。
赤や黄色の提灯がぶら下がり、潮の香りに混じって甘い綿菓子の匂いが流れてくる。
来栖 咲季
「……人、結構いるね」
七瀬 未來
「でも、咲季と一緒なら大丈夫。」
未來は相変わらずふっと笑って、カメラを構えて、祭りの光を切り取っていく。
パシャ。
シャッターの音に、ボクは少し肩をすくめた。
> 屋台の笑い声
金魚すくい、りんご飴、射的。
どの屋台も賑やかで、ボクの胸は少しだけ高鳴る。
来栖 咲季
「ボク、やってみたい!金魚すくい!」
七瀬 未來
「いいよ。頑張って」
ポイを手にして、必死に追いかけるが――
紙はすぐに破れて、水の中に沈んだ。
来栖 咲季
「……あ」
七瀬 未來
「残念。でも、頑張ってる姿かわいかったよっ」
来栖 咲季
「み、未來……っ!」
未來がいじると顔が熱く、赤くなる。
屋台の光が揺れて、笑い声に溶けていく。
>花火の下で
もう夏祭りも終盤という所で、夜空にドン、と大きな音が響いた。
赤、青、黄色や、緑。
色とりどりの花火が弾けて、水面に映り込む。
来栖 咲季
「わぁ…きれい……」
七瀬 未來
「うん、でも、咲季の横顔の方が、もっときれい」
未來の横顔を盗み見る。その時、未來もまたボクを見ていた。
その目は真剣で、花火よりも眩しくて。
胸がぎゅっと痛くなる。
――言いたい。
でも言ったら、きっと壊れてしまう。
来栖 咲季
「……ボク、ずっとこうしてたいな」
七瀬 未來
「……わたしもだよ」
花火の音にかき消されながら、二人の声は夜に溶けた。
>帰り道
祭りの後、静かな小道を歩く。
足元には屋台の落とした紙屑、どこかでまだ遠く花火の音。
来栖 咲季
「ねぇ、未來」
七瀬 未來
「ん?」
来栖 咲季
「もし、ボクが突然いなくなったら……どうする?」
ボクが一言呟くと、未來は立ち止まり、ボクを見つめた。
その瞳は花火の残光を映して、かすかに震えている。
七瀬 未來
「急に、どうしたの?そんな馬鹿げたことを。」
来栖 咲季
「…気になっちゃって……」
七瀬 未來
「…どうだろ、今は、想像もつかないな」
来栖 咲季
「……そっか、」
未來は笑う。
でも胸の奥ではまた呟く。
――しにたい。けど、勇気がないから、また今度。
未來が差し出した手に、ボクはそっと触れた。
その温もりを確かめるように。
To be continued……

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