No side.
通路は静かだった。
警報は鳴らない。
追跡もない。
通信越しにノイズが走る。
フィリックスは一歩進む。
床のセンサーも、反応しない。
数秒の沈黙。
別室から低い声が入る。
即座に足を止める。
淡々とした声。
その言葉に、空気が変わる。
一泊。
フィリックスの眉がわずかに動く。
アイエンが急いで解析を回す。
沈黙。
冷たい声。
フィリックスは前を見つめる。
開いたままのデータ扉。
短い肯定。
静かな断言。
その言葉に、アイエンが息をのむ。
フィリックスの視線が鋭くなる。
だが声は迷っていない。
重い沈黙。
フィリックスはさらに1歩、踏み出す。
通信越しの静寂。
そして、
アイエンがタイマーを走らせる。
フィリックスは開いた扉の奥へ入る。
暗い空間。
中央に、目的のデータコア。
──簡単すぎる。
その瞬間。
画面の端に、見慣れない署名が走る。
端末に警告が灯る。
一瞬。
モニターに表示された識別コード。
アイエンの声が、かすかに震える。
フィリックスの目が揺れる。
あの時、終わったはずの案件。
消えたはずのアクセスキー。
初めて強い口調になる。
タイマーがゼロを刻む。
その瞬間、通路の光が赤く変わった。
フィリックスは歯を食いしばる。
データコアを掴むか、退くか。
赤い光が、迫る。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。