第84話

告げられた言葉
3,249
2022/04/24 07:54
イソップ・カール
行き場の無くなった人達がここに来ているんです










イソップの声が頭の中で再生される













(なまえ)
あなた
……辛い過去……皆はそれを乗り越えているのか…忘れているのか…
(なまえ)
あなた
…私にはどうして過去を思い出さずにあんな楽しくできるのかが知りたい
(なまえ)
あなた
…人の頭の中なんか覗けないから…何も分からない








私がここに来た理由は前までの暮らしよりもこっちに来たら幸せなのではと言う軽い考えで来たこと。







人が居たら居たで私の偽りの姿でまんまと騙されていく人間を裏で侮辱しては笑い見下す




そのつもりだった




でもここに来てからは考えが変わった





今のままでは人間と同類ではないかと






ちっぽけな脳みそしかない人間と同類にはなりたくもない






挙句の果て限った人間にしか優しくできないって言う哀れな存在となった今







人間以下の無能なのだろうか












中庭の木陰に来ては木の下で小さくなって目を閉じた







冷ややかな風が当たると共に自然の香りもするこの場所はお気に入りだった







直ぐに落ち着いた





















(なまえ)
あなた
……




「こんな所で寝るの?貴方は」







女性の声…








瞑っていた目を開ける










(なまえ)
あなた
…誰
マリー
私よ、マリー
(なまえ)
あなた
……





横の窓のない四角に空いた枠に寄りかかっているマリー










マリー
どうして貴方がこんな所に来たの
マリー
人殺し…?行き場の無くなった女の子?
(なまえ)
あなた
………どちらも違いますね
マリー
…あら…
(なまえ)
あなた
…そういうマリーは何こんな所に来て
マリー
私は………そうね……少し昔話をしてあげようかしら?……






少しどこか寂しそうなマリーを表すように段々曇り始めた空。










その中たんたんと言葉を発していった













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富と権力に対する妬みが




かの有名な逸話を生み出した






「農民は食べるパンも無い様子で」





「お菓子を食べればいいのではなくて?」







人々の訴えに女王は困惑した。








断首台に女王が繋がれても、その困惑は一層深まるばかり







「何故…どうして…」









粗末な白いドレスが少しずつ紅に染まってゆく








その時やっと女王は理解したの







王妃なんて代替に利く、単純な駒に過ぎない…












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マリー
…人は哀れ…とても可哀想な生き物…。
マリー
…何故私にパンなどの場の違う所で話題を作るのかは知らない…
(なまえ)
あなた
その女王は貴方のことなのね
マリー
ええ、そうよ。もう昔の話だけど…
マリー
…白くて綺麗なドレスも…私の血に染まってしまった汚いドレスよ
マリー
民が私の素敵なドレスを汚した
マリー
…でももうそんな昔のことなんて気にしてられないわ
マリー
昔を見続けても何も変わらないからただひたすらに前だけを見るの
(なまえ)
あなた
……前だけを…
マリー
貴方も過去に囚われずに未来に進むといいわ。そうすれば貴方も変わる
(なまえ)
あなた
……







窓枠に寄りかかっていたマリーはコツコツと足音を立てて行ってしまった




























(なまえ)
あなた
…じゃあ、他の皆も…前だけを見てるの…?












私はマリーに告げられた言葉が私の頭の中で回転する












(なまえ)
あなた
………過去を忘れない限り前を向くなんて無理。







再び私は目を瞑って夢に落ちる

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