第170話

It's Already Too Late
760
2024/04/29 12:08 更新







夜の8時過ぎ
 
長い長い一日の職務を終え、

やっとのことで家まで辿り着く。



帰ったらあなたが出迎えてくれることだけを希望に

今日一日中あくせく働いた。
 
もうすぐにでも抱き締めてキスして

あなたの手作りのご飯食べて(あーんしてもらって)

一緒に寝るんだから。




あなたからの「おかえり」を期待して、

俺は「ただいま」と玄関の扉を開けた。







_@_
_@_
…え?




一気に身体中から抜け出ていく高揚感。
 
目の前の信じられない光景に

思わず手にしていた荷物を床に落とす。





_@_
あなた……?
 
_@_
…ッ、そ、そんな
_@_
あなた……っ!




玄関の床に倒れ込んでいるあなたに

慌てて駆け寄って、


声を張り上げながら体を揺すった。




_@_
あなた、あなた…!




あぁもうなんで、
なんでこうなるんだ
 
朝まではいつも通りだったのに
 
毎回ほんの少し離れてただけで
俺の知らない間にこんなことが起こる




_@_
あなた…っ!




あなたは俺の呼び掛けに返事をしないが、

脈は正常だし呼吸もあった。
 
ただ眠っているように見えるけど、

目元や頬が涙に濡れ赤くなっている。




とにかく救急車を呼ぶために

スマホを取り出そうとした時、


床に何かが転がっていることに気付いた。




_@_
何これ…、




それは幾分か年季の入った

小さなテディベアのストラップ。
 
こんなもの、あなたは持っていただろうか。




_@_
っ…




ひどい胸騒ぎを覚えながらも

自分にはどうすることもできない。
 
救急車を呼んで彼女が目を覚ますのを待つしか

今の俺にはできることがないんだ。





























あなたが病院のベッドで目覚めたのは

それから丸2日経ったあとだった。




あなたの体内から

何かしらの毒物が検出されたわけではないが、


基準値オーバーの強力な睡眠薬を

希釈せずに直接注射されたらしい。
 
その睡眠薬の成分は

以前 Alley から押収したものと全く同じ。




要するにあなたに睡眠薬を注射したのは

Alleyの人間だった。
 
ここ最近の事件と関連づけてしまえば、


自然に犯人像として浮かび上がるのは

たった一人なわけで。







_@_
あなた…!
_@_
良かった、目が覚めて…!
…じょん、ぐく




まだ状況が掴めていないといった様子で

あなたはゆっくりと辺りを見渡す。
 
それから数秒と経たず、


突然何かを思い出したかのように

あなたはバッ!と身を起こした。




_@_
どうかしたの?
…ッジョングガ、大変です!
早く止めないと
殺人事件が…っ!
_@_
ち、ちょっと落ち着いて
_@_
まだ起きたばっかりなんだから
そんな激しく動いちゃダメだよ
でも、…っ




俺の服にすがりつく勢いで

物騒なことを叫ぶあなた。
 
肩をそっと押してベッドに寝かせようとするが

彼女はひどく何かに焦っている。




どうしても安静にしてくれないあなたに

困っていたところで、


俺と同じく仕事終わりのユンギヒョンが

病室の扉を開けて入ってきた。




_@_
…起きて早々どうしたんだよあなた
_@_
お前の声、廊下まで聞こえるぞ
ゆ、ユンギ…っ
 
私が眠っている間に
何か事件が起こりましたか…?




ギュッと俺の服の裾を掴んだまま

そう尋ねるあなたは震えていて、


ユンギヒョンはほんの数秒沈黙する。
 
そして、重々しい口調で答えた。




_@_
…あぁ
_@_
あったよ。2つ




「2つ」という付け加えられた言葉が

あなたを打ちのめしたようで、


彼女は抑えきれなくなった涙を零して

俺の服に顔を埋めた。

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