第9話

僕とロボット
16
2025/04/25 11:00 更新
身体の痛みで目が覚めると、私には左腕がなかった。そして身体には長くてとても汚れている1本のロープが繋がっている。でも何故だろう。そんなことは些細なことで、もっと大切な何かを忘れている気がする...。そう思える程に私は記憶がなかった。

ナゼワタシハココニイル...。

そう呟いた私は辺りを見回すと、たくさんのものが散らばっていた。中には不思議な物もあって見知らぬ女性が写った写真や、不思議な星のようなデザインのネックレス、買い物袋の中には紙オムツや日用品などが入っていて、他には電源のつかない割れたスマートフォンなどが転がっていた。そして何よりも目を奪われたのはひっくり返り、燃えている車だった。そしてその向こうには地面はなく、奈落が続いていた。それを見て不思議と怖くなる。私はまた燃えている車を見て、その中に何かぶら下がっているものを見たような気がした。その時だ。私は割れるような痛みと共に、何故か少しだけ心が満たされるのを感じた。

ナゼダロウ。シラナイハズナノニ、ワタシハコレヲシッテイル...。

痛みが収まると私は辺りに散らばっていた物を拾い集め、背中についている長いロープを引き摺って歩き始めた。車の中にあったものは結局何も無く、燃え盛っている車を後にした。しばらく歩くとそこには何も無かった。永遠と地の果てまで続くように見えるこの大地は凹凸も何も無く、味気ない。でも何故かその大地に永遠と足跡が続いている。私はそれを追って歩き始めた。

この場所は不思議だ。空は永遠と夜だが、いくら見渡しても月がない。さらに永遠とも一瞬とも取れる感覚の中でいくら歩いても景色は変わらない。先程後にした燃え盛る車は振り返っても面影すらなくなっていた。漠然と不安を感じるが、私はそれを振り払うように頭を振り、ガラクタを手に持って足跡に沿って歩いていった。

歩いて歩いて歩いて歩いて......そして私は初めて歩みを止めた。足跡が途切れたのだ。そして前には、どこから現れたのか、大きな木がそびえ立っていた。その木の上にはツリーハウスが建てられていて、私はそこに入っていった。

中に入った私はまた痛みに襲われた。そして思い出す。

ココハボクノへヤ...

でも何故ここにあるのだろう。そんな疑問を持ちながら私は持っていたガラクタを机の上に並べた。そしてそこにあるソファに腰かけた途端、テレビがついた。私は驚きながらそれを見ることにした。テレビには親しみのある男とあの見知らぬ女性が映っていた。その2人はこのツリーハウスと同じ部屋で、今私が座っているソファに腰かけて幸せそうに話している。

画面は変わり、緊張した面持ちで見知らぬ女性と何故か親しみを覚える男が緊張した面持ちで医者と話していた。かと思えば様子は一変し、泣きながら喜んでいる。
子供ができたようだ。

再度画面が変わり、またこの部屋の画面に切り替わる。
男が女のお腹をさすり、命の鼓動を感じて驚いている。2人はいつでも幸せそうだ。

また画面が切り替わる。女のお腹はとても膨れていて、もうすぐ出産のようだった。そんな彼女に別れを告げ、男は車に向かう。買い物袋を車に積み、不思議なデザインのネックレスを揺らしながら運転席に乗る。見知らぬ女性の写真が1つ飾られている車の天井には男が小さい頃から持っているであろう、ロボットのキーホルダーが細長い紐に括りつけられ、ぶら下がっていた。今思えばどの画面にもこのロボットのキーホルダーは男と共にあった。

画面が暗転し、また映し出された。男が先程の車を運転している。買い物袋の中には紙オムツや日用品が入っていて買い物が終わって帰るようだ。男は青信号を直進し、車を走らせる。その時だった。トラックが大きなクラクションの音と共に男の車に向かって突っ込んでくる。車は大きく吹っ飛び、ひっくり返った。

そこでテレビがザザッと音を鳴らし電源が切れた。暗くなった画面に、自分の姿が映る。そこに映ったのはロボットの形をした私だった。その時、私は割れるような痛みに悲鳴をあげた。身体が壊れそうになる。身体の表面が崩れ落ち、人肌が現れる。

そうだ...そうだった。全部思い出した...!

辛い苦しい痛い消えたい終わりたい、でも終わりたくない...!そんな感情が身体を駆け巡る。私を支えてるのは彼女に会うためだ。妻に会うためだ。妻と私の子供を置いて死ぬことは出来ない。しかしこの痛みに私は耐えることしかできない。想像を絶する痛みが全身を襲い、混濁する意識の中での抵抗も虚しく、痛みに蹂躙されるのみだった。この痛みに耐えきれなければ、二度と目を覚ませない。本能でそれがわかってても力が溢れ落ちる。

もう...ダメだ....

ツリーハウスが崩れ、何も無い世界の地面がガタガタと揺れる。地面に大量のヒビが入り、今にも崩れそうだ。
そんな折、突如としてこの世界に泣き声が響き始める。
赤ちゃんの泣き声のようだ。あぁそうか、これは私の子だ、妻と私の子供の声だ。

今死ぬ訳には行かない..!

身体の表面が崩れ始めロボットのキーホルダーから、親しみある男の姿へ変わる。自分が何者かはっきりした私は、痛みを忘れて走りだした。どこに行けばいいのか、なんとなくわかる気がした。走って走って駆け抜けたその先には、燃え盛る車が1台、ひっくり返っていた。私は深呼吸すると、燃え盛る車の中に入り、ロボットのキーホルダーを手にした。私は深呼吸して少し歩くと、目を覚ました時に引き返した底の見えない奈落に向かう。私はロボットのキーホルダーと共に奈落へ飛び込む。その時ロボットのキーホルダーが光を放ち、夜の世界を明るく照らした。その眩しさに目をやられ、視界が霞む。そしてゆっくりと目を開けるとそこは病室だった。

おとしゃ...?

そう言って僕を見つめる可愛い赤ちゃんと、見知らぬ女性、いや、僕の最愛の女性が泣きながらこちらを見ていることに気がついた。僕は身体を震わせて言う。

ただいま

僕は視界の端の窓枠にロボットのキーホルダーが不思議と笑ってこちらを見た気がした。
以下からはわわの独り言です。
なんかファンタジー書こうとしたら変に曲がって曲がってこんな駄作になってしまったぁ...。ってことでファンタジー作品は諦めます。おつ!

プリ小説オーディオドラマ