🥟side
その日の夕刻。
いつものように見回りと題して
幼馴染のフィリックスの元を訪れた。
もちろん、スンミナも一緒だ。
よく喋るおじさんだったからね
と言いかけたところでスンミナに一瞥される。
フィリックスは、
俺とスンミナが出会った頃に
この町にやってきた薬屋の一人息子で、
幼い頃からよく集まっていたメンバーの1人である。
この町で俺の「センチネル」の力を知っている人間は少ない。
むしろ、スンミナを含めた家族と、幼馴染ぐらいじゃないか…?
これは父親の意向で、
表に出すと施設に入ることになるとか言って
昔から隠してきたらしい。
いつもツンデレなスンミナに褒められると
なんだか妙に照れ臭い。
当の本人も耳を赤くしている。
俺たちがこのフィリックスの元を訪ねているのは、
つい半年前、彼にもプレゼニングが起こったからだ。
※プレゼニング:センチネル、パーシャル、ガイドが能力を覚醒させること。
彼の場合、ある特定の感覚のみが突出して優れている「パーシャル」の性質が出現したようで、
それを聞かされた時は
「薬屋にぴったりだね」なんて、不安がるフィリックスを2人で励ました。
スンミナが「ガイド」であることも知っているので
こうやって定期的に訪問しては、体調を崩していないか確認しているのだ。
珍しく言葉を濁すフィリックス。
力を使いたいわけじゃないけど、なんとなく読み取れた。
「ボンド」
センチネルとガイドが結ぶ契約のようなもの。
なるほど
それを気にしていたのか。
意外といった表情で俺たちを見つめる。
確かに、一般論で考えると
常に一緒にいるセンチネルとガイドは
パートナーとして契りを交わしていることが多い。
そこまでこの性質が浸透しているわけではないけれど
それなりに認知度も上がってきて、
世の中に受け入れられ始めているから
フィリックスなりに考えてくれていたのだろう。
俺たちのやり取りを聞いてホッとしたのか
先ほどよりもずいぶん安心した様子のフリックス。
そりゃそうだ。
急なプレゼニングで、しかも時期が遅くて、相当不安があったはず…
俺は逆に早すぎたくらいだったけれど
少しでも気持ちを共有できる仲間がいるって、
すごく心強いことだと思う。
スンミナはガイドとして
フィリックスのことを本気で心配している。
それは当たり前のことなんだけど、
どこか心が曇ってしまうのは…俺の性格の問題なのか。
自分だけのガイドで
心強い相棒で、兄弟で……
これがガイドに依存している証なのか。
なんとも言い難い感情に埋もれそうな俺は
スンミナのいくらか先を歩く形で
暗くなり始めた町を進み始めた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。