🐶side
父さんの話というのは
僕が昔いた施設についてだった。
幼少期から「ガイド」としての才能があると見込まれた僕は、
3歳の時、
政府管轄の施設に入った。
詳しいことは分からないけれど、
恐らく能力のある者は皆、その道を辿るようだった。
あの頃の生活はあまり覚えていないけれど、
施設で過ごした2年間は、とにかく
独りぼっちだった。
施設が提案する仕事なんて
「ガイド」の力を使うもの以外あり得ない。
怪しさを孕んでいるけれど、
いつまでもこの家にお世話になってばかりでもいけないと思って、話を聞いてみることにした。
父さんは、僕の決断を心配しながらも
気持ちを汲み取ってくれたのか、引き止めることはしないでいてくれた。
施設に入ってすぐ、
僕が異常な早さでプレゼニングを迎えると同時に、
両親の訃報が届いた。
反政府デモに参加した際、
軍と衝突して
デモ参加者が起こした発砲事件に巻き込まれたそうだ。
僕を手放して、反乱を起こして、
───命を落とした。
身寄りのない僕にとって
「養子」という形であの施設から救い出してくれた黄家はかけがえのないものだ。
それでもこの家で成長するうちに
いつか僕は、僕として
一人でも生きていけるようにならなければ…
そんなことを考えるようになっていた。
部屋に帰らずに、
廊下で待っていたヒョンジナが不安そうにたずねてきた。
今日の自分の様子を
詳しく聞かれたんだと思ってるんだろうなぁ……
今度は不満そうに口を尖らせる。
彼は昔から自分の力に自信がない。
自信がないというより、
認められないの方が的を得ているかもしれない。
抱きつく勢いで僕に向かってくるヒョンジナをなんとなくかわしながら、シールドの様子を伺う。
…だって、ほら
シールドの修復が見違えるくらい早くなってる。
いつか、常に僕がいなくても、
ヒョンジナ1人で何でもこなすことができるようになったとき、
僕が彼の足を引っ張らないためにも
自分で生きる術を見つけておかないと。
その意味で、
もう一度施設に行くことは避けられないことなんだ
と、腹を括った。
さっきの倍くらい尖らせた口と
僕のことを睨みきれていない優しい目。
僕は、本当に十分だと思うんだ。
そう言って手招かれたのは
いつもヒョンジナが寝ているベッド。
その横には、
組み立て式の簡易的なベッドがついていて
何かあった日にはそこで眠ることが多い。
その方がよく眠れるんだそうだ。
小さい時から部屋は一緒で
それぞれ自分の空間も持っているけれど、
こんな日は必ず隣で眠りたがる。
変わらない彼の姿に、笑みが溢れそうになるのを必死で堪えて、今夜の寝床に入った。
眠りに入るヒョンジナを見届けて
僕もゆっくりと目を閉じる。
そっと握られた手に感じるのは
何とも安らかなエネルギーだった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!