第13話

ep.10 あの子の先生
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2025/08/18 13:26 更新
フィリックスside

※ リノ過去編。














その日も、僕はリノの病室に訪れていた。

いつものように、学校であったことを話して。
病室にある机を借りて、課題を済ませて。

面会時間も終わりに近づいた頃、コンコンと病室の扉が叩かれる音がした。

...誰だろう。
これまで僕以外の人間が病室を訪れたところを見たことがなかったから、疑問が渦巻く。

じっと扉を眺めていると、そこに現れたのは、長身の、優しそうな顔立ちをした中年男性だった。

??
.......っ、リノ!!!!
🐰リノ
.....っ!!!!!!


......??.....????.....

その男性はリノの名前を呼んだかと思うと、こちらに寄ってきて、リノをそっと抱き締めた。

リノも心做しか、涙ぐんでいて。

??
リノ....心配したよ。
??
担任の先生から今朝方連絡を貰ったんだ。来るのが遅くなってごめんね。
🐰リノ
............グスッ.....


誰だか分からないけど、親御さんかな?
でも、それにしては今朝連絡貰ったっていうのは遅すぎだよね。
いやいや、リノは一人暮らしだって言ってたし。
じゃあ親戚のおじさん...?

グルグルと考えてみたけれど、どれもパッとしない。
そもそも、リノの私生活とか、あんまり聞いたことないしなぁ。
今度聞いてみようかな。

取り敢えず、二人の時間を邪魔してはいけないと思い、病室を去ることにした。

フィリックス
あ...じゃあ僕はこれで......。
リノ、また明日ね。
??
え、あ、待って!!!
フィリックス
は、はぃ.....?
??
君、リノを助けてくれた子だよね?
フィリックス
え....あ、まぁ、助けたというか…。
??
家まで送っていくよ。
お礼もしたいし。
フィリックス
え、っと......。
??
突然ごめんね、怪しい者じゃないんだ。
??
リノの保護者をさせて貰ってる、キムです。リノには "せんせい" って呼ばれてる。









結局、押しに負けた僕は "先生" に家まで送って貰うことになった。

...まぁ、大丈夫だよね。

悪い人じゃ無さそうだし、リノの関係者っぽいし。

キム先生
フィリックス君、リノを助けてくれてありがとうね。
フィリックス
あ、いえ...もっと早くに見つけられていたならって、後悔してます。
キム先生
いやいや...本当に助かった。
キム先生
君が助けてくれていなかったなら、あの子は...。
フィリックス
......キム先生?
キム先生
あぁ....ごめん。
キム先生
...フィリックス君はさ、リノの昔の話とか、聞いたことある?
フィリックス
え?...いや、今は一人暮らしをしてることくらいしか...。
キム先生
...あの子の昔の話、してもいいかな。
君になら、あの子も許してくれると思うんだ。
フィリックス
..........。
キム先生
...あの子ね、実は君より二歳年上なんだよ。小学校も中学校も行けてないから、二年間勉強して高校を受けたんだ。
キム先生
あの子の親がね、酷い親で...。
小さい頃から虐待されてたんだ。
キム先生
幼い頃から身体を売らされてね。
僕の施設に保護された時は、酷い有様だったよ。
キム先生
あの子は、"たすけて" も "やめて" も "いやだ" も知らなかった。
キム先生
だからね、今回の事件で、 "やめて" って、"いやだ" って、"たすけて" って思ったってあの子が教えてくれた時、涙が出るほど安心した。
キム先生
不謹慎だけどね。あんな事件があったのに、安心しただなんて。
キム先生
君が教えてくれたんだよね、あの子に。
"幸せ" が何か。
キム先生
君がいてくれなかったら、あの子はもう立ち直れなかったかもしれない。
キム先生
だけど、さっき顔を見たら、君のことをすごく楽しそうに見つめてて、嬉しそうで、温かそうだった。
キム先生
本当に、ありがとう。
キム先生
これからもあの子と仲良くしてやってくれないかな。


涙が止まらなかった。

あんな、天使みたいな子が、そんな酷い過去を抱えていただなんて。

そんな大変な目に遭っても、自分で立ち上がろうとしていたリノが、あんな事件に巻き込まれなければいけなかっただなんて。

支えたい。もっと知って欲しい。幸せを。

フィリックス
....うぅっ....グスッ.....もちろん、です。
キム先生
ありがとう......。


キム先生は、そう言って温かく笑った。














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