フィリックスside
※ リノ過去編。
その日も、僕はリノの病室に訪れていた。
いつものように、学校であったことを話して。
病室にある机を借りて、課題を済ませて。
面会時間も終わりに近づいた頃、コンコンと病室の扉が叩かれる音がした。
...誰だろう。
これまで僕以外の人間が病室を訪れたところを見たことがなかったから、疑問が渦巻く。
じっと扉を眺めていると、そこに現れたのは、長身の、優しそうな顔立ちをした中年男性だった。
......??.....????.....
その男性はリノの名前を呼んだかと思うと、こちらに寄ってきて、リノをそっと抱き締めた。
リノも心做しか、涙ぐんでいて。
誰だか分からないけど、親御さんかな?
でも、それにしては今朝連絡貰ったっていうのは遅すぎだよね。
いやいや、リノは一人暮らしだって言ってたし。
じゃあ親戚のおじさん...?
グルグルと考えてみたけれど、どれもパッとしない。
そもそも、リノの私生活とか、あんまり聞いたことないしなぁ。
今度聞いてみようかな。
取り敢えず、二人の時間を邪魔してはいけないと思い、病室を去ることにした。
結局、押しに負けた僕は "先生" に家まで送って貰うことになった。
...まぁ、大丈夫だよね。
悪い人じゃ無さそうだし、リノの関係者っぽいし。
涙が止まらなかった。
あんな、天使みたいな子が、そんな酷い過去を抱えていただなんて。
そんな大変な目に遭っても、自分で立ち上がろうとしていたリノが、あんな事件に巻き込まれなければいけなかっただなんて。
支えたい。もっと知って欲しい。幸せを。
キム先生は、そう言って温かく笑った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。