第136話

焦燥
1,007
2023/10/14 03:01 更新
ころんside




一瞬の事だった。
ころん
ころん
さとみくッ……たすけてッッ゙!!!
パンパンッ!


さとみくんの名前を呼んだ瞬間体が浮き、視界が覆われて再び地面に叩きつけられた。


ダンッ!
ころん
ころん
ぃ゙ッ!?
……ドサッ
クレーメンス
っが……ッ
遮られて聞こえる、人の崩れ落ちる音と微かな呻き声。


目を白黒させるも視界は塞がれたままで、状況も分からずにただ混乱する。


それでも、どくんどくんと早鐘を打つ鼓動と荒い呼吸音だけはやけにはっきり感じて……
さとみ
さとみ
ッ……はあッ、はぁ、ふッ…はぁ
あれ、これ僕の鼓動じゃない?
ななもり
ななもり
さとみくん、大丈夫?
さとみ
さとみ
だっ…ぃ、じょッ……はッ…
ジェル
ジェル
お、起きれる……?
さとみ
さとみ
……ん、ッ
さとみくんが起き上がると、僕に乗っていた重みも減って視界が開けた。


ふと見るとさとみくんは、見た事もないくらいすごく怒った表情をしていて……
さとみ
さとみ
……怪我、ねぇか?
ころん
ころん
な、いよ……ありがとさとみくん
つい、声が震えた。


壁にもたれかかってぐったりしたなーくんが、ジェルくんに声をかける。
ななもり
ななもり
ジェルくん生死確認してきて、最大限警戒ね
ジェル
ジェル
ジェルくんはそっと魔族2人に近づいて、足元を見回す。


しばらくして、肩の力を抜いてこっちに戻ってきた。
ジェル
ジェル
……実弾、ガッツリ急所やったわ
ころん
ころん
ななもり
ななもり
あの早撃ちで……やっぱすごいね、さとみくん
ジェル
ジェル
……うん
ななもり
ななもり
さとみくん退いてあげて、ころちゃん動けない
さとみ
さとみ
ぁ……わり
そう呟いたさとみくんは僕の上から退いて、両手に持っていた銃を鞄にしまう。
ころん
ころん
さとッ……おこってる?
さとみ
さとみ
………
振り向いたさとみくんは、鋭い目でこっちを見る。


……やば、何も考えずに聞いちゃった。
ころん
ころん
や、えっと……ごめッ
さとみ
さとみ
そりゃ怒るだろ
ころん
ころん
っ、え
さとみ
さとみ
大事なもん目の前で傷付けられて、奪われそうになったんだから……許せる訳ねぇだろ?
そう言いながらさとみくんは、僕の頬を優しく撫でる。
ころん
ころん
なッ!……なに言ってんの、
さとみ
さとみ
本当のことだよ……焦ったし怖かったし、ざけんなってめっちゃキレた
さとみくんに真っ直ぐな瞳で見つめられて、じわじわと顔が熱くなってきた。
ころん
ころん
そんな真剣な顔で言わないでよ……ッ
さとみ
さとみ
あれ、照れちゃったの?w
ころん
ころん
っ、ねぇ誰か止めて!?//
ななもり
ななもり
仲良いねぇ……w
ジェル
ジェル
目の前でイチャイチャ見せつけんといてくれる?w
ころん
ころん
見せつけてないっ!
僕は、さとみくんの手を振り払って立ち上がる。


すると……



グイッ
ころん
ころん
わッ
さっきから一言も喋ってなかったるぅとくんに、突然手を掴まれた。


パッと顔を見ると、ビックリするくらい不安そうで泣きそうな暗い顔で……
ころん
ころん
え、どしたのるぅとくん
るぅと
るぅと
なんで、なんであんな無理したんですか
ころん
ころん
あ……ごめんねるぅとくん、でも結局大丈夫だったし
るぅと
るぅと
……ジトッ
ころん
ころん
ビクッ
え、何、めっちゃ睨むじゃん。
ころん
ころん
ほら、フランシスカの気持ち無駄にするみたいで嫌だったんだよ……僕もやばくなったらちゃんと助け求めるつもりだったよ?
るぅと
るぅと
………
僕が何か言う度に、何故かじっと睨まれる。


苛立ちや焦燥や不安が真っ黒に渦巻いたような、目だけで殺されそうなレベルの気迫が……


普段の柔和な笑顔とのギャップのせいで、余計に怖い。
ころん
ころん
……っ、
いや怖、さっきの鬼の形相のさとみくんより余裕で怖ッ!


るぅとくんにこんな睨まれるなんて初めて……


いや、出会った最初に泣かされたわ。
ジェル
ジェル
るッ……
ななもり
ななもり
ジェルくん、待って
ジェル
ジェル
……っ、
頼みの綱のななジェルは、何も言ってくれず。


さとみくんはさっき僕から振り払っちゃったし。
るぅと
るぅと
……ころちゃんにとっての''やばい''って、なんなんですか?
ころん
ころん
……え
るぅと
るぅと
さとみくんの弾が魔王の時みたいに弾かれたらどうなってたか、わかってるんですか?
るぅと
るぅと
あの短時間で致命傷6回も負ったの、わかってるんですか?
ころん
ころん
そ、れは……
口ごもると、るぅとくんにガッと肩を掴まれた。
るぅと
るぅと
僕が治してなきゃとっくに死んでたの、わかってるんですか!?
ころん
ころん
っ、!
るぅと
るぅと
わかってないですよねその顔、どんだけ馬鹿なの!?
るぅと
るぅと
全員生き残れるように、魔族に下手に近づくなって指示、ちゃんと聞いてた!?
るぅと
るぅと
ジェルくんもなーくんも遠くからじゃ守れないし、僕の魔力も無限じゃないの!
るぅと
るぅと
お願いだから……お願いだから、あんな無理二度としないで!
今まで聞いた事もない、切実で悲痛なるぅとくんの叫び声。
ころん
ころん
!……るッ
るぅと
るぅと
怖かったんですよ……もうカルステンは死んでるのに何度もころちゃん傷付けられて、なのに助けは求めてくれなくて、僕の魔力だけがどんどん減ってって
るぅと
るぅと
すごく、怖くって……ッ!
そう言って僕の肩を掴むるぅとくんの手は、尋常じゃないくらい震えていて……


あの場で誰よりも僕の命を握っていた彼に、どれだけ心配を掛けていたのか、


どれだけ怖い思いをさせていたのか、


どれだけ魔力的にも精神的にも追い詰めていたのか、


そこまで怒られて、僕はようやく理解した。
ころん
ころん
ごめん……ごめんね、もうあんな無理しない
るぅと
るぅと
……次やったら絶対許さないから
ころん
ころん
うん、わかった
僕が頷くとるぅとくんはいつもの表情に戻って、僕の肩から手を離した。
ななもり
ななもり
ほらジェルくん、止めちゃダメだったでしょ?
ジェル
ジェル
せやな……ちょっと浅はかやったわ、俺
コッ……コッ…コッ、コッ
さとみ
さとみ
っ、足音……!
全員-1
全員-1
!?
さとみくんの言葉で、僕達は扉の向こうに一斉に振り向く。
ななもり
ななもり
ころちゃん、寝室でフランシスカ匿って
ころん
ころん
僕は指示を聞いて、気絶したフランシスカをバッと抱き上げる。
ななもり
ななもり
るぅとくんも寝室、来るのが敵か味方か分かんないから必要に応じて援護して
るぅと
るぅと
は、はいっ
ジェル
ジェル
なーくんも隠れッ……
ななもり
ななもり
敵じゃなかった時のこと考えたら、俺は退くべきじゃないよ
ジェル
ジェル
っ、……
さとみ
さとみ
寝室で莉犬も気絶してる、ころん3人守れるか?
ころん
ころん
頑張る、行こるぅとくん!
るぅと
るぅと
う、うんッ
そうして僕達は寝室に駆け込み、入口からの死角にフランシスカと莉犬くんを寝かせる。
るぅと
るぅと
……はっ、ふッ
隣で荒い呼吸をするるぅとくんの肩は、ぶるぶると震えていて……

僕は、左手をそっとるぅとくんの背中に添えた。
ころん
ころん
……大丈夫
いつでもナイフを持てるように鞄に右手を添えて、壊れた扉を覗き見る。


見ると、赤いマントを羽織った魔族の男がこっちに歩いてきていた。
ころん
ころん
ジェルくんはななさとをバッと背に庇い、その魔族に向かって叫ぶ。
ジェル
ジェル
っ、誰や!
長
我は魔王アーデルベルトだ、そう怯えるな人間よ
例の新魔王……!
長
3階の者の通報により出向いたが、一体何の騒ぎだ……説明出来る者はおらぬのか?
ななもり
ななもり
俺が説明します……傷を負って動けないのでこのままの状態ですが
長
構わぬ、命に別状は?
ななもり
ななもり
大丈夫ですよ
そうなーくんが答えると、魔王は膝をついて大人組と向き合った。
長
説明は事細かに頼む、事情を把握せねば3階の者が安心せぬからな
ななもり
ななもり
では、……
そうしてなーくんは、さっき起こったことを隅から隅まで全部話す。


あの極限状態だったのに、なーくんの視野があまりにも広くてびっくりした。
長
致命傷を負った仲間や前王の娘は死んだのか?
ななもり
ななもり
意識のない者はいますが全員命に別状はありません、治癒魔法を使える者が治したので
長
そうか、ならばよいのだ
長
カルステンを殺したのは前王の娘で、クレーメンスとメローディアは……
ジェル
ジェル
メローディア……?
長
クレーメンスの妹……その女の名だ
大人組
大人組
!?
え゙、あいつら兄妹だったの!?


いやでも角の形同じだし、そっか……
さとみ
さとみ
2人は俺が殺しました
さとみ
さとみ
魔族のルールで罪に問われるなら、俺が全部責任を取ります……だからどうか仲間だけは、
長
待て待て、先に向こうから手を出したのならば不問だ
そう言いながら、魔王は手をひらひらと振る。
長
葬儀はこちらで済ませておく、まだ8時にはなっておらぬしな
そう言いながらその魔王は、土魔法で箱を作って魔族3人の遺体を詰め込む。
長
前王の娘も念の為医療塔に預けたい、今は何処に?
ななもり
ななもり
寝室です……扉が壊れているとはいえ、ここよりは安全かと思って
長
そうか、少し失礼するぞ
そう言って魔王は、瓦礫を避けて寝室に入ってくる。


魔王は死角にいる僕達に気付かずに、部屋を見回した。
長
……?
ふと、魔族特有の深紅の瞳と目が合った瞬間……
ころん
ころん
ひゅッ……
押さえつけられた時の恐怖がぶわっと戻ってきて、一瞬で身動きが取れなくなる。
長
うおっ、そんな所におったのか……とりあえずその娘をこちらに、
るぅと
るぅと
ビクッ……
僕は肩を跳ねさせたるぅとくんを背に庇って、魔王に向かってバッとナイフを突き出した。
ころん
ころん
っ、くるな゙ッ!
長
お、落ち着け……害意は無い、
こわい



いやだ
ころん
ころん
くるな、来るなッッ!!!
なにもわかんなくて、何故か死ぬほど焦って、ただ叫び散らす。
長
待て、我は……
ころん
ころん
来るな、やだ、こないでッ!
守んなきゃ



こないで



しにたくないッ
さとみ
さとみ
おい、落ち着けお前ら
ころん
ころん
うゎッ
いつの間にかこっちに来ていたさとみくんにナイフを取り上げられて、るぅとくんと一緒に抱き寄せられた。


頭が混乱してる中で、苦しそうなるぅとくんの呼吸音だけが耳に入る。
るぅと
るぅと
ひゅっ……ふ、はッ
ころん
ころん
さ、とッ……
さとみ
さとみ
すみません、2人共かなり怯えてるみたいで……
長
あぁ……酷い目に合ったのだから無理もない、こちらこそいきなり距離を詰めすぎた
さとみ
さとみ
ころん、害意はないって言ってるだろ……大丈夫だから
さとみくんに優しく諭されて、ちょっと気持ちが落ち着く。
ころん
ころん
っ、ごめんなさい……
長
構わぬ、我も思慮が足らずにすまなかったな
さとみ
さとみ
ほら、るぅとも大丈夫……やり方知ってるだろ、ちゃんと息しろ?
るぅと
るぅと
はーッ、はぁっ……ふッ
さとみ
さとみ
そうそう、上手
るぅと
るぅと
ごめ、なさっ……はぁッ
さとみ
さとみ
いいんだよ、ちょっと焦り過ぎたんだよな
ふと、立っていた魔王は膝をついて、僕達と目線を合わせる。
長
その娘は連れて行くが……怪我がないか確認し、意識が戻るまで保護するだけだ
長
それに医療塔はこの城で1番安全な場所であるし常に女性もいる、どうか安心して欲しい
ころん
ころん
……コクッ
僕は全力で拒んじゃったのに、誠意を込めて話しかけてくれて……ちゃんと信用できる人だと思えた。


確かに、魔族達から人柄とか人望で選ばれた魔王ってのも納得だわ。
長
我は壁を修復したら早目に去ろう、これ以上怯えさせるのも酷であろうからな
そう言いながら魔王は羽織っていたマントでフランシスカを包み込み、風に浮かせた。


……あ、これ前に莉犬くんもやってたやつだ。


魔王は、壁や扉を土魔法で修復しながら言葉を零す。
長
前王の復讐に巻き込まれた無関係の人間には、申し訳ないと思っている
ジェル
ジェル
っ、いや……
長
幼くして孤立した彼への暴力を見て見ぬふりし、カルステンらの凶行を見過ごし……その負い目から復讐を阻止できなかった我々にも非はあろう
ななもり
ななもり
……そう、かもしれませんね
長
我々は其方らが前王を殺したことを咎める気はない、むしろ我々が責任を取って殺すべきであったろう
ななもり
ななもり
………
長
応急処置だが、ひとまず直ったぞ
ジェル
ジェル
ほんまや……すご
長
我は今から此奴らを弔いにゆくから其方らはもう休め、明日発つのであろう?
そう言いながら、仕事を終わらせた魔王はさっさと部屋から出て行って扉を閉めた。


バタン……
さとみ
さとみ
っ、はーッ……めっちゃ緊張した
ななもり
ななもり
ね、よかった敵じゃなくて
ジェル
ジェル
てか、なんでなーくん鼻押さえてんの?
ななもり
ななもり
あー、なんか鼻血出ちゃって……w
るぅと
るぅと
ななもり
ななもり
ぶっちゃけ、意識もやッばい……
さとジェル
さとジェル
!?
るぅと
るぅと
ご、ごめんなさいすぐ治しますッ!
サッと青ざめたるぅとくんは、慌ててなーくんに駆け寄って魔力を流した。


バシュッ……
ななもり
ななもり
ん、ありがと
るぅと
るぅと
えっと……脳って、軽傷だったら無理に魔力流すより自然治癒の方がいいんです
るぅと
るぅと
とりあえず外傷と血管は修復したので、今晩は安静にしててください
ななもり
ななもり
うん、わかった
ころん
ころん
ごめんね、僕のせいで……
ななもり
ななもり
いやいや、飛び出しちゃったのは俺の方だし気にしないで
さとみ
さとみ
……いや、言えよ不調なら
ななもり
ななもり
言える?あの空気で
さとジェル
さとジェル
言えよ!
ななもり
ななもり
んふ、ごめんごめんw
るぅと
るぅと
もう……本当焦った
さとみ
さとみ
まぁ中々満身創痍だし、今日はもう全員寝ようぜ
ころん
ころん
だね〜
ななもり
ななもり
ごめん動けない、ジェルくん連れてって
ジェル
ジェル
おっけおっけ、よっと……
ジェルくんは、サラッとなーくんを抱き上げて立ち上がる。


……あなた右半身麻痺してるんじゃなかったのか。
るぅと
るぅと
すご、ナチュラルにお姫様抱っこを……
ころん
ころん
いっけめーん
ジェル
ジェル
うっさいな外野w
さとみ
さとみ
早く寝ろよお前らも
るぅと
るぅと
はいw
ころん
ころん
おやすみー
結局なんだかんだでバタバタしつつ、僕はさとみくんとなーくんの隣で布団を被った。



とっくに限界の、不安や恐怖心やストレスを発散出来ないまま……


不自然に早い鼓動や呼吸に、自分でも気付かないまま。
………………………………………………………………
ぴよこ(作者)
ぴよこ(作者)
今回はるぅころメインで進めていきました。遠慮がちだった頃を思うと、るぅとくんも随分素直になりましたね。
ぴよこ(作者)
ぴよこ(作者)
そして、新魔王が後始末をしに来てくれました。アーデルベルトさんは46歳で、子供や女性に優しく仕事も出来る、城内の人気者だそう。
ぴよこ(作者)
ぴよこ(作者)
今回の挿絵は、怯えきったるぅころです。るぅとくんは過重なプレッシャーから、ころんくんはシンプルな蹂躙や暴力への恐怖から、それぞれパニックになってしまった様です。
ころん
ころん
怖かった……
ぴよこ(作者)
ぴよこ(作者)
それではまた次回。

プリ小説オーディオドラマ