ころんside
一瞬の事だった。
パンパンッ!
さとみくんの名前を呼んだ瞬間体が浮き、視界が覆われて再び地面に叩きつけられた。
ダンッ!
……ドサッ
遮られて聞こえる、人の崩れ落ちる音と微かな呻き声。
目を白黒させるも視界は塞がれたままで、状況も分からずにただ混乱する。
それでも、どくんどくんと早鐘を打つ鼓動と荒い呼吸音だけはやけにはっきり感じて……
あれ、これ僕の鼓動じゃない?
さとみくんが起き上がると、僕に乗っていた重みも減って視界が開けた。
ふと見るとさとみくんは、見た事もないくらいすごく怒った表情をしていて……
つい、声が震えた。
壁にもたれかかってぐったりしたなーくんが、ジェルくんに声をかける。
ジェルくんはそっと魔族2人に近づいて、足元を見回す。
しばらくして、肩の力を抜いてこっちに戻ってきた。
そう呟いたさとみくんは僕の上から退いて、両手に持っていた銃を鞄にしまう。
振り向いたさとみくんは、鋭い目でこっちを見る。
……やば、何も考えずに聞いちゃった。
そう言いながらさとみくんは、僕の頬を優しく撫でる。
さとみくんに真っ直ぐな瞳で見つめられて、じわじわと顔が熱くなってきた。
僕は、さとみくんの手を振り払って立ち上がる。
すると……
グイッ
さっきから一言も喋ってなかったるぅとくんに、突然手を掴まれた。
パッと顔を見ると、ビックリするくらい不安そうで泣きそうな暗い顔で……
え、何、めっちゃ睨むじゃん。
僕が何か言う度に、何故かじっと睨まれる。
苛立ちや焦燥や不安が真っ黒に渦巻いたような、目だけで殺されそうなレベルの気迫が……
普段の柔和な笑顔とのギャップのせいで、余計に怖い。
いや怖、さっきの鬼の形相のさとみくんより余裕で怖ッ!
るぅとくんにこんな睨まれるなんて初めて……
いや、出会った最初に泣かされたわ。
頼みの綱のななジェルは、何も言ってくれず。
さとみくんはさっき僕から振り払っちゃったし。
口ごもると、るぅとくんにガッと肩を掴まれた。
今まで聞いた事もない、切実で悲痛なるぅとくんの叫び声。
そう言って僕の肩を掴むるぅとくんの手は、尋常じゃないくらい震えていて……
あの場で誰よりも僕の命を握っていた彼に、どれだけ心配を掛けていたのか、
どれだけ怖い思いをさせていたのか、
どれだけ魔力的にも精神的にも追い詰めていたのか、
そこまで怒られて、僕はようやく理解した。
僕が頷くとるぅとくんはいつもの表情に戻って、僕の肩から手を離した。
コッ……コッ…コッ、コッさとみくんの言葉で、僕達は扉の向こうに一斉に振り向く。
僕は指示を聞いて、気絶したフランシスカをバッと抱き上げる。
そうして僕達は寝室に駆け込み、入口からの死角にフランシスカと莉犬くんを寝かせる。
隣で荒い呼吸をするるぅとくんの肩は、ぶるぶると震えていて……
僕は、左手をそっとるぅとくんの背中に添えた。
いつでもナイフを持てるように鞄に右手を添えて、壊れた扉を覗き見る。
見ると、赤いマントを羽織った魔族の男がこっちに歩いてきていた。
ジェルくんはななさとをバッと背に庇い、その魔族に向かって叫ぶ。
例の新魔王……!
そうなーくんが答えると、魔王は膝をついて大人組と向き合った。
そうしてなーくんは、さっき起こったことを隅から隅まで全部話す。
あの極限状態だったのに、なーくんの視野があまりにも広くてびっくりした。
え゙、あいつら兄妹だったの!?
いやでも角の形同じだし、そっか……
そう言いながら、魔王は手をひらひらと振る。
そう言いながらその魔王は、土魔法で箱を作って魔族3人の遺体を詰め込む。
そう言って魔王は、瓦礫を避けて寝室に入ってくる。
魔王は死角にいる僕達に気付かずに、部屋を見回した。
ふと、魔族特有の深紅の瞳と目が合った瞬間……
押さえつけられた時の恐怖がぶわっと戻ってきて、一瞬で身動きが取れなくなる。
僕は肩を跳ねさせたるぅとくんを背に庇って、魔王に向かってバッとナイフを突き出した。

こわい
いやだ
なにもわかんなくて、何故か死ぬほど焦って、ただ叫び散らす。
守んなきゃ
こないで
しにたくないッ
いつの間にかこっちに来ていたさとみくんにナイフを取り上げられて、るぅとくんと一緒に抱き寄せられた。
頭が混乱してる中で、苦しそうなるぅとくんの呼吸音だけが耳に入る。
さとみくんに優しく諭されて、ちょっと気持ちが落ち着く。
ふと、立っていた魔王は膝をついて、僕達と目線を合わせる。
僕は全力で拒んじゃったのに、誠意を込めて話しかけてくれて……ちゃんと信用できる人だと思えた。
確かに、魔族達から人柄とか人望で選ばれた魔王ってのも納得だわ。
そう言いながら魔王は羽織っていたマントでフランシスカを包み込み、風に浮かせた。
……あ、これ前に莉犬くんもやってたやつだ。
魔王は、壁や扉を土魔法で修復しながら言葉を零す。
そう言いながら、仕事を終わらせた魔王はさっさと部屋から出て行って扉を閉めた。
バタン……
サッと青ざめたるぅとくんは、慌ててなーくんに駆け寄って魔力を流した。
バシュッ……
ジェルくんは、サラッとなーくんを抱き上げて立ち上がる。
……あなた右半身麻痺してるんじゃなかったのか。
結局なんだかんだでバタバタしつつ、僕はさとみくんとなーくんの隣で布団を被った。
とっくに限界の、不安や恐怖心やストレスを発散出来ないまま……
不自然に早い鼓動や呼吸に、自分でも気付かないまま。
………………………………………………………………






















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。