あの後は早めに帰って私もすぐに布団に入った。
そうたはまだゲームをやりたがってたけど笑
休ませないといけないし…まなとたちも。
次の日、じゅのんはだいぶ回復していて
念のためその日は休みを取ってもらったけど
その翌日にはすっかり元気な顔でリハに合流した。
あの時の少し弱った表情が嘘みたいで
ほっとしたのをよく覚えてる。
そして今日は、私の引っ越しの日。
社長が用意してくれた、私たちのマンション。
“一緒に住む”って言葉は簡単だけど
実際どんな毎日になるんだろう。
想像できるようで、まだ全然できてない。
会社の人事部の人たちが手際よく進めてくれて
荷物の搬送はあっという間に終わった。
がらんとした部屋に一人残されて
何もなくなった床を見渡す。
…小さくそう言ってみる。
今の会社に就職してから、ずっと住んでた部屋。
嬉しいことも、落ち込んだ夜も
全部ここに置いてきた気がする。
ドアを閉める前に、もう一度だけ振り返って。
会社手配のタクシーに乗って
新しいマンションへ向かう。
窓の外を流れる景色をぼんやり眺めながら
これから始まる生活のことを考えていた。
マンションの敷地に入った瞬間、思わず息が漏れる。
さっき通った道からは
ここに入口があるなんて分からなかった。
外からはほとんど見えない構造で
人目につかないように徹底されている。
……すごいな。
アーティストが、安心して帰ってこれる場所。
ただ住むためじゃなくて
守られるための場所なんだって、自然と思った。
ここでの生活は、今までみたいにはいかないかも。
距離も、関係も、全部近くなる。
その分…逃げ場もなくなる。
タクシーが止まり、ドアが開く。
車を降りた、その瞬間。
後ろから掛けられた声に、思わず振り返った。
思わず間の抜けた声が出る。
いないだろうと思ってた人がそこにいた。
そう言って、その人は笑う。
いつも通りの笑顔。
社長は、やっぱり社長だった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!