第83話

83 私がいるよ
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2026/03/11 11:12 更新
麗日side


蛙水「お茶子ちゃん、本当に大丈夫?」


痛みが走って、思わず眉をひそめる。

でも、それよりも胸の奥を引っかいているものがあった。


麗日「……うん。平気平気!」


そう言って笑ったけれど、
心はどこか落ち着かなかった。



"好きな人がいますよね。"


"その人そのものになりたくなっちゃうよね。"



ふと、あの子の言葉がよぎる。

あの子は、少し変わっている。

でもきっと、それだけじゃない。


言葉にできない何かを、
ずっと抱えている気がしていた。



その時だった。


視界の端に、
地面に仰向けで倒れている人影が入り込む。


麗日「あなたちゃん、!?」


駆け寄ると、そこにいたのは
やっぱりあなたちゃんだった。


あなた「……お茶子ちゃん。」


私の名前を呼ぶ声が、かすかに震えている。


怖いんだ。


この子が、怖がっているのを私は知っている。


蛙水「怪我は無い? あなたちゃん。」


あなた「うん……大丈夫。」

「ただ___義足が壊れちゃってさ。」


そう言いながら、彼女はふらりと体を揺らした。

それでも、誰にも頼らず、
自分の力で立ち上がろうとする。


すぐそばに、支えようとする人がいるのに。


その姿を見た瞬間、
胸がきゅっと締めつけられた。


この子はきっと、
ずっとこうやって生きてきたんだ。


誰にも寄りかからず、
一人で立ち上がることを選んで。




麗日「……あなたちゃん。」




そっと名前を呼ぶ。

そして、手を伸ばした。




「私がいるよ。」




あなたの瞳が、驚いたように大きく見開かれる。


まるで、そんな言葉を
もらえると思っていなかったみたいに。


それから。


少しだけ、安心したように笑って。


あなたちゃんは、私の手を取った。


その手は、思っていたよりも
ずっと、あたたかかった。






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