その日の夜。
ベッドに入ったのに、なかなか眠れなかった。
原因はわかってる。
放課後の相合傘。
近かった距離。
「あなたの方が大事。」
そう言った太智の声。
あなた 「……もう。」
枕に顔を埋める。
思い出すだけで恥ずかしい。
好きになってしまったせいで、太智の言葉ひとつひとつに振り回されている。
時計を見る。
23時58分。
そろそろ寝よう。
そう思った、その時。
♪♪
スマホが震えた。
画面を見る。
【塩﨑太智】
思わず飛び起きた。
メッセージを開く。
【塩﨑太智】 「起きてる?」
たった4文字なのに心臓が跳ねる。
【あなた】 「起きてる。」
返信すると、すぐに既読がついた。
【塩﨑太智】 「よかった!」
【塩﨑太智】 「寝てるかと思った」
思わず小さく笑う。
【あなた】 「何か用?」
すると少し間が空いた。
そして届いたメッセージ。
【塩﨑太智】 「今日すごく楽しかった」
その1文に、呼吸が止まりそうになる。
【あなた】 「雨だったのに?」
なんとか返す。
【塩﨑太智】 「うん」
【塩﨑太智】 「さゆと帰れたし」
心臓がうるさい。
うるさすぎる。
画面を見るだけで顔が熱くなる。
【あなた】 「そう。」
短く返すことしかできない。
すると。
【塩﨑太智】 「ねぇ」
【塩﨑太智】 「俺たち前より仲良くなったよね?」
その言葉に胸がぎゅっとなる。
【あなた】 「たぶん。」
【塩﨑太智】 「たぶんじゃなくて絶対!」
【塩﨑太智】 「最初めっちゃ冷たかったもん」
【あなた】 「今も普通。」
【塩﨑太智】 「嘘だね」
【塩﨑太智】 「最近いっぱい笑ってくれる」
スマホを握る手に力が入る。
太智は気づいてない。
私が笑う理由。
あなたが好きだからなんて。
絶対知らない。
【あなた】 「ねむい。」
誤魔化すように送る。
【塩﨑太智】 「えー」
【塩﨑太智】 「じゃあ最後に1個だけ」
【あなた】 「何?」
数秒後。
届いたメッセージを見て、私は固まった。
【塩﨑太智】 「明日も一緒に帰ろ?」
胸が大きく高鳴る。
ただそれだけなのに。
嬉しくて仕方ない。
【あなた】 「気が向いたら。」
送信。
するとすぐに。
【塩﨑太智】 「それってOKって意味だよね?笑」
【あなた】 「違う。」
【塩﨑太智】 「絶対そうじゃん笑」
思わず吹き出す。
夜中なのに、1人で笑ってしまった。
【あなた】 「おやすみ。」
【塩﨑太智】 「おやすみ!」
【塩﨑太智】 「また明日ね」
画面が静かになる。
だけど胸は全然静かじゃなかった。
スマホを胸に抱きしめる。
今日一日を思い出す。
学校で話したこと。
相合傘。
そして今のメッセージ。
少し前まで、ただのクラスメイトだった。
なのに今は。
あなた 「……好きだな。」
誰にも聞こえないくらい小さな声。
初めて、自分の気持ちを言葉にした。
すると不思議と胸が暖かくなった。
まだ伝える勇気なんてない。
でも───
明日が楽しみだと思うくらいには、私はもう太智に夢中だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。