「す、すまねえ花京院」
J・ガイルとホル・ホースから逃れ、数分。
車のエンジン音しか聞こえない車内で初めて言葉を発したのはポルナレフだった。
「お、おれは・・・おれは妹の仇をとるなら死んでもいいと思っていた。」
ポルナレフの独白のようなそれを、花京院は静かに聞く。
「でも・・・分かったよ、アヴドゥルの気持ちが分かったよ・・・奴の気持ちを無駄にはしない。生きるために闘う・・・!」
「ほんとに分かったのですか」
「ああ」
瞬間、ポルナレフの顔面に花京院の右肘がバギィッと音を立ててめり込む。
「それは仲直りの握手の代わりだ、ポルナレフ」
「ああ、サ、サンキュー、花京院、ブ、」
「今度奴らが襲ってきたら!僕達ふたりが倒すッ!」
そう決意を顕にした花京院の瞳には、涙が浮かんでいた。
「おれはたしかに・・・たしかにヤツを剣で突いた。だが命中はしなかった、手応えは無かったんだ。」
そう言うとポルナレフは車のミラーをバキ、とちぎった。
「ヤツのスタンド、ハングドマンは鏡が割れても小さくなった破片の中からまた攻撃して来た、ヤツは鏡の中で鏡の中のオレを襲う!オレのスタンドは鏡の中には入れない。鏡の世界なんてどうやって攻撃すればいいのだ?」
「くっそおーーッ!」
ポルナレフが車のミラーを苛立ちに任せて投げると、ガシャァァンという音と共にミラーが砕け散る。
「ポルナレフ。鏡の中とか鏡の世界とか盛んに言ってますが、鏡に''中の世界''なんてありませんよ・・・ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから。」
「何言ってんだ、おめーも見ただろ。鏡の中だけにいて、振り向くといねーんだぜ」
花京院のその言葉にポルナレフはポカンとしながらもそう返すと、花京院は「ええ、しかし鏡っていうのは''光の反射''ただそれだけです」と言う。
「教えてもらわなくたって知っとるぜーッ、いいか!この場合だぜ!今の場合を言っとるんだよ!スタンドがあるなら鏡の中の世界だってあるだろ!」
「無いです」
「おめーなぁ〜」
呆れたようにポルナレフは花京院を見る。けれど花京院は自分の意見を曲げる気は無いようだ。
「ハングドマンの謎はきっとその点にあると思うのです。スタンドはスタンドで倒せるのなら!我々にはまだ知らぬ奴の謎・・・」
そう続けようとした時、花京院の目にハンドルのメッキの中に潜んだハングドマンの姿が見える。
思わず振り返るが、姿はメッキの中にしか無い。
「ポルナレフッ、ハンドルのメッキに奴がいるッ!奴は追いついているッ!」
「なにッ!」
瞬間、ハングドマンによって座席の後ろの鏡が割られる。
「あぶないッ!」
ハングドマンが刃を出すのを見た花京院は、すぐさま急ブレーキをかける。
その衝撃で車はドグゥンと音を立てて跳ね返り、上下逆さまに落ちた。
「うげげ・・・・・・だ、大丈夫か!花京院」
「う、う・・・厶・・・胸を打ったが大丈夫だ」
そう言う花京院にホッと胸をなで下ろしたのもつかの間。
「!なにッ」
ポルナレフの目に移動する光が見えた。
光を目で追ってみると、そこにはハングドマンの姿があり、今にもポルナレフに刃を突き刺そうとしていた。
「うおああああーーーッ!チャリオッツ!」
咄嗟にシルバーチャリオッツを出してハングドマンの映っていた車のバンパーを斬った。
「ちっ、ちくしょうッ!花京院ッ!映るものから逃げるんだッ!」
ポルナレフのその叫びに従い、花京院とポルナレフは近くの岩陰に逃げ込むような形で隠れる。
「わ、分かった・・・・・・・・・い・・・今・・・見えたんだ・・・」
ポルナレフのその言葉に、花京院は目を見開く。
「やつは鏡から鏡へ!映るものから映るものへ!飛び移って移動しているッ、反射を繰り返してここまで追ってきたんだ・・・・・・!」
「反射?つまり奴は''光''かッ!奴の正体は光のスタンドということか!?」
「花京院!やつは今車のバンパーに居た!バンパーからなにかに反射して移動するに違いない!映るもののそばへは行くなッ!体からも映るようなものははずせぃ!制服のボタンも取れッ!」
「おにいちゃんたち、車の事故はだいじょうぶ?お薬もってこよーか?」
ポルナレフと花京院が映るものを片っ端から取っていたところに、一人の少年がやって来た。
「ン!おい小僧!向こうへ行けッ」
「は!」
そこで花京院がある事に気づく。
「ねえ、車めちゃめちゃだけど。ねえ、血が出てるけど・・・」
「え!?」
ポルナレフも、遅れて気づく。
「けがは・・・だいじょうぶ?」
──そう、少年の瞳の中に、ハングドマンが潜んでいたのだ。
「ククク」
「や、野郎ッ!」
「・・・・・・子供の目の中に・・・!」
「おい小僧、おれたちを見るなッ!」
「え」
「見るなと言ってるだろーがあッ!目で追うなこらァ!」
「えっ、けがしてるよ」
「大丈夫だよ!ほら、ピンピンしてるよ〜・・・だからあっち見ろ!」
「えっ血出てるよ」
「向こう向けッ!ガキャア!」
「えっ」
怪我人を見るなと言われても無理だ、と少年は見るのをやめない。
「野郎ォ〜〜〜っJ・ガイル!」
「ククク、どうするね!まさか・・・このカワイイ子供の目を、その剣で潰すと言うのかね?ポルナレフ──クククククク」
どうしようもなくなったポルナレフの首を、ハングドマンが手の跡が残るくらいガシリと掴む。
「うぐぐ・・・!」
「ついに捕らえたぞ・・・もう逃れられん、子供の目を潰さん限りなあ、ククク」
「なんて卑劣な男だ・・・・・・アヴドゥルを卑怯にも後ろから刺し、そして今!子供を攻撃できないのを知って利用する・・・・・・許さん!」
「クククク」
「おい花京院・・・・・・この場合!そういうセリフを言うんじゃねぇ。」
「?」
いきなりそんな事を言い出したポルナレフに、ハングドマンも花京院も目を瞬かせる。
「いいか・・・こういう場合!仇を討つ時というのは、今から言うようなセリフを吐いてたたかうんだ・・・」
「『我が名はJ・P・ポルナレフ、我が妹の魂の名誉の為に!我が友アヴドゥルの心の安らぎの為に』・・・・・・『この俺が貴様を絶望の淵へブチ込んでやる』J・ガイル・・・・・・こう言って決めるんだぜ」
「許せ小僧!後でキャラメル買ってやるからな!」
そう言うとポルナレフは地面を蹴り上げた。
「うああーーッ!目に砂がーーッ!」
少年が目を閉じた瞬間。
高速でポルナレフの元に移動する光に向けてシルバーチャリオッツが剣を振るう。
「ポ、ポルナレフの瞳に!」
「原理はよく分からんがこいつは光並みの速さで動く。普通ならとても剣では見切れねえスピードさ・・・だが子供の目が閉じたなら、こいつが次に移動するのはおれの瞳だろうということは分かっていたのさ。だからこいつがおれの目に飛び込んでくる軌道は分かっていた・・・その軌道がよめれば、剣で斬るのは・・・・・・・・・容易い!」
ハングドマンの体が切れた瞬間、ギャァアアという叫び声がポルナレフと花京院の耳に届く。
「あそこに居るな!本体!J・ガイルの野郎、なぶり殺してくれるぜ」











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。