楓side
ワァァァァァァッ!!
この瞬間、女子100mの準決勝第3組目が終わった。
つまり、女子100m短距離走の決勝へ行く選手が決まった瞬間でもある。
第3組目のトップ通過は予想通り、怜だった。
2位通過は強豪校、光南高校の水上 由希。
これで、決勝進出の6人がわかった。
決勝はこの6人と、各準決勝3位以下の人の中から2人選ばれて、合計8人で争われる。
凛と風華の2人に責め立てられて思わず尻込みしていると…
さっきからバタバタ暴れている凛を優月が優しくなだめてくれた。
そのプラス2の選手は────
その瞬間、大城高校と悠然高校の生徒たちが一気に盛り上がった。それにつられ、会場全体も盛り上がる。
私は正直、この選手たちの中で、この怪我で優勝できるのかと今更不安になってきた。
どうやらまた私の顔に出ていたらしい。だが、今となってはそのクセがちょっと嬉しい…凛の気遣いが私の心に染みるようだった。
凛の言葉には素直に頷くことができたが、風華の言葉にはぎこちなく頷くことしかできなかった。
…これでようやく出揃った。
決勝進出は七瀬 凛、大野 雫、三条 琴音、伊藤 楓、仙波 怜、水上 由希、風間 由香里、仙波 愛の8名となった。
────負けるもんか…絶対に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!