冬の空気は、やけに澄んでいた
グラウンドの白線が、やけにくっきり見える
千切は、一歩も踏み出せなかった
膝が動かない
いや、動かせる。だけど……“怖い”
あの日の音が、まだ耳に残っている
ブチッ
あの…嫌な音。
一人で笑う
笑っていないと、崩れそうだった
_____その時
背後から、低い声
振り返らなくてもわかる
糸師凛は、いつも通り無表情でそこに立っていた
けど、その目だけが____やけに鋭い
即答だった
でも、足は一歩も出ない
凛は一歩近づく
答えられない
言葉にしたら、全部壊れる気がしたから
静かに言われて、胸が締め付けられる
否定できなかった
悔しくて
視界がにじむ
やっと絞り出した声は、“震えていた”
凛の声が低くなる
胸に刺さる、痛いくらいに
凛がぐっと距離を詰める
その一言で…何かが崩れる
涙が…溢れる
止めようとしても、無理だった
その瞬間
心の奥に押し込んでいたものが、全部引きずり出された
涙が止まらない
グシャグシャで…格好悪くて…



一瞬言葉が止まる
ほんの少しだけ…声が揺れた



凛は、まっすぐこっちをみていた
逃げも…嘘もない目
一歩離れて、手を差し伸べる












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。