第188話

答えられない問い【羽京/微甘】
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2026/03/09 03:10 更新




* クラスメイトな羽京







その日、私は日直当番で
授業終わりに黒板を消していた。




「ごめんね……!
職員室行ってて遅くなった」




同じく日直当番の羽京くんが
少し申し訳なさそうな顔をして
教室に駆け込んでくる。




「ううん、大丈夫!あと少しだし」




私はそう言って
もう一度黒板に向き直った。

チョークの粉がふわっと舞って
少しだけくしゃみが出そうになる。


けど、今はそんなことよりも

今日あった出来事が
ずっと頭の中に引っかかっていた。




( なんであんな言い方
しちゃったんだろ…… )




友達との何気ないやり取り。

それは、喧嘩したとか
そんなわけじゃない。


けど、

もっとこう言えばよかった、とか
こう伝えていたら、なんて


そんな些細なことが
小さな棘みたいに心の中に
引っかかっていた。




──── ツン




「……?」



ほっぺを軽くつつかれて
思わず振り向くと

黒板消しを片手に持った羽京が
私に視線を合わせるようにして立っていた。



「なんだか、元気ないね」

「え?そ、そんなことないよ?」



……顔に、
出てしまってただろうか。




「そう?」

「うん!ほんとほんと!」




誤魔化すように黒板を消し続ける私を
羽京くんはしばらく黙って見ていたけれど。




「あなた」



その声にもう一度顔を向けると
羽京くんは目を細めて笑っていた。




「……放課後、ちょっと付き合ってよ」

「え?」

「いいでしょ。日直当番のお礼ってことで」





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──── 放課後



羽京くんが連れて来てくれたのは
駅前の小さなカフェ。



「好きなの頼んでいいよ」

「えぇ、そんなの悪いよ……!」

「言ったでしょ?お礼って」



その言葉に甘えながら
メニュー表のスイーツを見た瞬間、
思わず顔が緩んでしまう。



「わぁ……!これ美味しそう」

「ほんとだ」

「ん~、でもこっちも気になるなぁ……」



季節のケーキも捨てがたいけど、
チョコのも美味しそう……




「……ふふ」

「え?」

「うぅん、真剣なのが可愛くって」



か、可愛い……?

思わず面食らう私なんて気にせず
目の前の彼はニコニコと笑っている。



「目が、すごいキラキラしてる」

「だ、だって美味しそうなんだもん……」

「うん、知ってるよ」





「あなたってさ」




羽京くんは
手元のメニュー表を眺めながら
言葉を続けた。




「嬉しいとき、すぐ顔に出るよね」

「え」

「あと、人が困ってるとすぐ気づく」



こんなふうに
自分のことをまっすぐ言われるなんて
あんまりない。



「あとね、



頑張ってるのに
それをあんまり人に見せないようにしてる」

「……」



その言葉に
思わず黙ってしまう。




「ほんとは、さっき
ちょっと落ち込んでたでしょ?」

「……そんな顔してたかな?」

「してた。わかるよ、僕にはね」




……これって、




ただのクラスメイトに言う事
なんだろうか。





「……ねぇ、羽京くん」

「ん?」



「なんでそんなに、私のことわかるの?」





答えを聞きたいような、
聞くのが怖いような。


でも、ふたりきりの
この空気に背中を押されて
聞かずにはいられなかった。






「……その質問には、」




羽京くんは少しだけ首を傾けて
頬杖をついたまま、意味深に笑った。




「なんて答えたら、
あなたはさっきみたいに笑ってくれる?」





思わず息が止まった。




「教えてほしいな
あなたが、一番嬉しい答え」




そう言って、やさしく目を細める。

その視線から
もう、目を逸らせなかった。




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