小さい頃、大好きな人がいた。
優しく笑ってくれて。
泣くたびに頭を撫でてくれた。
『大丈夫。俺がいる。』
その言葉だけは、今でも覚えてる。
でも――。
顔も、名前も思い出せない。
思い出そうとすると、胸が苦しくなる。
だから、考えるのをやめた。
消しゴムが頭に当たる。
クラス中から笑い声。
誰も止めない。
先生も気づかないふり。
私は黙って消しゴムを拾う。
慣れてるから。
昼休み。
机の中を開ける。
お弁当がない
後ろから笑い声。
ゴミ箱の中には、ぐちゃぐちゃになったお弁当。
笑いながら教室を出ていくいじめっ子たち
放課後。
なるべく人が少ないところを通って帰ろうとする。
でも。
腕を掴まれる
怖い。痛い。
でも、助けなんて来ない。
そう思った、その時。
低い声が響く。
全員の動きが止まった。
振り向くと、数人の男の人が立っている。
その真ん中にいた人が、私の前へ歩いてきた。
その声を聞いた瞬間。
胸の奥が、ドクンと鳴る。
――この声。
どこかで、聞いたことがある。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。