第44話

9月3日③
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2024/08/15 22:56 更新
















キルア
動いたぜ、どうする?





































44 9月3日③




























































キルア
何度も言うけど、戦って勝てる相手じゃないからな
レオリオ
…何とかするさ。しなきゃなんねーんだろ
ゴン
うん…!黙って帰るわけにはいかないもんね

レオリオとゴンの覚悟を確認したキルアは
軽くため息を吐き、立ち上がった。
キルア
オーケイ。んじゃ、オレの言うこと
よく聞いてくれ

ゴンに携帯電話を出させ、同じように操作するよう
指示をしながら説明を始めるキルア。
キルア
尾行はオレとゴンでやる。
こっから先は絶対奴等に姿を見られちゃいけないから
キルア
"絶"を使う。………………_

ス……


そう言うキルアの瞳の奥から光が消える。
レオリオ
(すげェ…。ここにいるのに存在感が虚ろになった。
急にキルアが薄くなったような気さえするぜ)

五体行のひとつ、"絶"という技を見てレオリオは
驚きと同時に、並外れたキルアの気配断ちに感心した。
キルア
ゴン、2つ約束を守れ。
奴等に姿を見られたら尾行は即中止。
速やかにその場を離れること。

その以外にも俺がこれ以上追跡不可能と思ったら中止。
いいな?
ゴン
うん
キルア
それと、ここからはオレとゴン二人とも
他の人からの着信は取れない
ゴン
うん
レオリオ
そうなるな
キルア
もし、あなたから連絡が来た場合…
レオリオ
あなた…って、え?あのあなたちゃんか!?
え、どういうことだよ!?

あなたという名前を聞き驚きながらまくし立てるレオリオ。
ゴン
あ!そういえばレオリオと合流した時
あなたのこと話してなかったね
キルア
…俺は敢えて黙ってた
ゴン
え、なんで?
キルア
…………こうなるから
レオリオ
なぁ!おいっ、聞いてんだろ!?
あなたちゃん無事だったのか!?
なぁ、おいってば!

キルアの肩を揺すりながら唾を撒き散らすレオリオに
キルアは目を瞑りながら耐えた。




























_…
キルア
で、話 戻すけど
レオリオ
んで俺が殴られんだよ…
キルア
人にこんだけ唾飛ばしといて文句言える立場かよ!
てか、んなことよりあなたのことだ。

さっきアイツに暫く電話出来ないことはメールした。
あと連絡を取りたい時はレオリオの携帯にしてもらうよう番号も教えといた
レオリオ
あなたちゃんから電話!
キルア
念のためな!何もなかったらかかってこねーよ
レオリオ
それより何であなたちゃんはお前らと来たのに
一緒に居ねーんだよ?
キルア
それ話してたら旅団に逃げられるから
またあとでな。
とりあえずレオリオはあなたの事も頭に置きつつ
ゼパイルと連絡とって競売を担当してくれ
レオリオ
しゃーねぇ。今回は裏方に回ってやるよ。
…二人とも気をつけろよ。命あっての物種だからな
ゴン
うん…!
キルア
ああ

再度、連絡の取り合いの確認をした二人は
その場から駆け出していった。

















































まただ。




また、あの夢だ。

















煌めく水の中で





自由に泳ぐ人魚の影。





綺麗な歌声…_。





喜びも、哀しみも、





あの声にのせて伝えてくれてる。





















あれ?いつもはここら辺で夢が終わるのにな…?




あなた
(……………、)


ふと、振り返った人魚と目が合う。







『………………。』





あなた
(…!………)



私の目を見て微笑む彼女。





なんでだろう。





会ったことがないのに、懐かしい感じ…。






もしかして…、私の…

あなた
(あの…、)


声を掛けようと発したが、言葉が泡になるだけで
私の声は出なかった。

あなた
!?




咄嗟に喉を抑える。





今まで声が出なかった、なんてことはなかったから。






あなた
(…夢っ、だから出ないだけ、だよね?)



焦った…。





もし、声がなくなったら、わたし…














『…………………。』







あなた
(あ…、)


揺らめく尾びれを光らせながら
海面に上がっていく人魚。




自分の意思とは関係なく、まるで場面が変わるように
わたしは気づいたら海面に立っていた。



























〜…♪











近くから聞こえた歌声に顔を向けると、
海岸に二つの影が見えた。






あなた
(あれは…)



ぐったりと倒れる男性に尾を貸し、彼を寝かせる人魚。




あなた
(やっぱり、あれは…人魚姫?)


空の下で歌う人魚姫の、なんとも言えない美しさに
私は息を呑んだ。





自身の尾に彼の頭を置き、ぴくりとも動かない
愛しき人を見つめながら歌う彼女。





慈愛に満ちた瞳から大粒の涙が彼に降り注ぐ。





愛しあえていたはずの人との別れ。





それなのに、なんで…………………









あなた
…なんで、そんなに嬉しそうなの…?





自然と声が出ていた。






自分にしか聞こえないくらい小さい呟きだったのに







離れた場所で歌っている彼女と目が合った。




































『…_わたしが消え去っても、歌は響きつづける…』



あなた
…………………!




『…この意志は、きっと受け継がれてゆくわ…_』



あなた
(なんて…幸せそうに、笑うの…)





『私は見つけた。…わたしの幸せを…』





あなた
(しあわ…せ…?)














『_…だから貴女もきっと見つけてね。』












『自分だけの答えを…_』






そう言う彼女は彼の唇に自分の唇を重ねた。
あなた
待っ…!



その瞬間、温かな光が彼女を纏い、
光が拡散していくと共に泡となって彼女の姿が消えていった。
















『…………………ん、』












あなた
…………………


目を覚まさなかった男性が、ゆっくりと起き上がった。





"ひとり"、知らない場所にいたのを不思議に思ったのか
周りをきょろきょろと見回している。





私の方にも目を向けているはずなのに、彼は気づかない。






あなた
(私のことは見えてない、のかな…?)



そして、彼の目が一点の空を捉えた。




あなた
、………………



光る泡がふわふわと男性の真上に留まっていた。






私にはアレが泡となって消えた人魚姫だというのは分かっている。





でもきっと、彼には分からない。





人魚姫が貴方を生かす為に、自らを犠牲にしたことも。





そして…愛していたことも。





互いに愛していたのにその思いを伝えられずに
二人は会えなくなってしまう。





悲劇の恋。…………………























あなた
(…………………)





『…………………。』












黙って泡を見つめる青年が、フ…と笑いながら口を開いた。












『俺も思っている…ずっと、ずっと君を…』



あなた
……………っ!




彼のその言葉を聞くととどまっていた泡が
その言葉を待っていたかのように大海原へと吹き抜けていった。


























叶わなかった、訳じゃなかったんだ…。







人魚姫は、ちゃんと







好きな人と愛しあえていたんだ。







たとえそれが悲劇だと言われても







共に生きてゆけなくても







あの二人には確かに






愛があったんだ…。
























_… 『私は見つけた。…わたしの幸せを…』































愛する者を、守り抜くための力。






それが「人魚の涙」…。














あなた
(…………………。)




















































はぁ…はぁ…


キルア
…………………、


全身の神経をとがらせて浅くなる酸素を肺に送る。



一瞬でも気を抜くと相手が振り向くかもしれない。



嫌なイメージを想像してしまう。



キルア
(…大丈夫、バレちゃいない…!奴らがオレ達の位置に気づけば必ずどこかに変化が生じる)


ゴンと一緒に旅団クモを追って半刻が過ぎた。



奴等もただ歩いているだけじゃない。



常に尾行を警戒しているのが俺なら分かる。



多分それが日常ふつうなんだろう。



だからこそ変化がわかりにくい。


キルア
(くそ…っ、)


あなたの行方も気になるってのに…



いや、今はこっちに集中しねぇと。



でも…………………

キルア
…………………。


ヤバい…………………



どんどん人気ひとけのない方に移動してる。
キルア
(さすがにもう尾行してることは
バレてるかもな…)


数十メートル先を行く標的ターゲット
歩みをとめることなく淡々と進んでいく。

キルア
(罠か、アジトか…?どっちだ…)


罠なら即脱出。アジトならもう少し追う……


キルア
(奴らの態度に不自然なトコはない…)



…ポチョ、







地面を触る手に汗が滴り落ちる。







キルア
(…………………続行だ…!)



































ヒョォォォ…




風が窓のない建物内を吹き抜けてゆく。




人気のない廃ビルに囲まれた中庭に立つ男女のペアは
あたりの気配に気を配りながら立ち尽くしていた。




マチ
…誘いに乗ってこないね
ノブナガ
…………………


腕組みをしながら自分たちを付けてきた連中が
いまだに姿を現さないことに首をかしげた。
ノブナガ
鎖野郎じゃないかもな

あたりを探る中、マチの問いかけに答えるノブナガ。
マチ
なんで?
ノブナガ
こいつらは複数だ。だが鎖野郎はおそらく単独で動いてる
マチ
根拠は?
ノブナガ
奴はノストラードファミリーの人間なわけだろ。にも関わらずウボォーとは一対一で戦ってる節がある。
なぜならマフィア側に全く動きがねぇからな。組が関わってれば今ごろウボォーは俺たちへの脅しに晒し上げられてるはず。それがねーってことは鎖野郎が一人でウボォーを倒し、しかもそれを組に報告してねェってことだ。
組に雇われてる奴が組抜きで動いてる理由てのはなんだ?


持っている鞘袋を見つめるノブナガ。
ノブナガ
たぶん私怨だ
マチ
おそらくとか多分とか多くない?
ノブナガ
うるせェな
ノブナガ
マフィアの後ろ盾抜きで復讐を考える奴が他の連中と組むとは考えづらい。
ゆえに鎖野郎は単独犯でいま俺たちを張ってる奴等とは違う
マチ
なんか、穴がボコボコの理論だけど
ノブナガ
じゃーおめェはどう思うんだよ

マチに自分の考えを否定され少し声を荒げながら聞く。
マチ
ん〜…そうだねェ
周りを見渡すマチ。
マチ
わたしは、この追跡者も鎖野郎と
関わりがあると思うけどね
ノブナガ
勘か?
マチ
勘だ
ノブナガ
…………………
表情ひとつ変えず「勘」というマチの横顔を見て
ノブナガはため息を吐いた。
ノブナガ
〜ったくよォ、閃きだけの人間に理論が
どーたら言われたくねェな








































──…


ゴン
『…どう?キルア』
キルア
『待ち合わせか…オレ達を誘ってるか、どっちかだな』


一方、尾けていたゴンとキルアは建物の中から
マチとノブナガのいる中庭を見下ろしながら
小声で連絡を取り合っていた。
ゴン
『俺たちを?まさか尾行がバレてんの?』
キルア
『…五分五分だな。でも位置はバレてねぇよ。
誘いだとしたらオレ達がどこにいるかわかんないから
「姿見せろ」って言いたいわけさ』
変化のない旅団クモを見て、持久戦になるかもな。
と予期したキルアはため息を吐いた。
ゴン
『どうする?』
キルア
『待ち合わせの可能性もある。
動かず様子を見……、』

ピルルルルルル
キルア
!!

ふいになった携帯音に、キルアは心臓を鳴らす。
目をやると男の方がポケットから携帯を取り出していた。
キルア
『ゴン!一度切るぞ、注意して見てろ…!』

緊迫した空気が纏わりつく。
キルア
『奴等の顔やしぐさに少しでも違和感 感じたらすぐ逃げるぞ…!
俺がケータイ鳴らしたらソッコー脱出だ。いいな…!』


ピッ、



そう言ってゴンと通話を切った。











ドクン、ドクン…









キルア
(くそ…心臓の音うるせ…)


すぅ…





身体の緊張をほぐそうと、一回だけ深呼吸しようとした


























その瞬間ときだった


































バヂッ


キルア
っっ…!!!





ダッ!!








間違いなく俺たちの場所を把握した目とあった。




頭が逃げろと信号を出す前に
自然と身体がその場から走り出していた。







キルア
っ!?



ザッ




部屋の出口に別の男が立ちはだかっていた。



キルア
…はぁ…はぁ…っ、





もしこいつらに捕まったら…






いくら俺たちが子どもでも






相手はあの幻影旅団_…。







タダで帰してくれる保証はどこにもねぇ








キルア
(くそ…!どうする…っ)






最悪、ここで殺される場合だってある…!














ドクン、ドクン…



















汗で湿った手を服の裾を掴んで拭う。












































──…『キルア!』































_…ハッ












キルア
っ、!




頭に浮かぶあなたの顔。










その瞬間全力で部屋の中を走り回った。











逃げるんだ、絶対に。














あなたが待ってる。














ガッ!









キルア
っ、!



ビュッ!


右足を捕まれ体勢を崩されたが
その隙に手に持った石つぶてを相手に投げつける。



それも最も簡単に全て避けられてしまった。







のは、計算づくだ…!













ヒュ…!












フィンクス
(つぶては布石か…!)
キルア
(…!入る!)


相手の死角へ左足を飛ばすキルア。













ガッ
キルア
!(余裕で止めやがった!左手一本で…!)


スピードも角度も完璧だった蹴りを
ノーダメージで止められたことに驚くキルア。


キルア
(っ、!)



ガッ!!





両足を捕らえられたキルアは両手を床に突き立て
目一杯の力を入れて身体をよじらせた。








ギリ…、ミシ…ッ





キルア
……………ッ、
フィンクス
、!




ギャオッ、ブチブチッ!!



フィンクスの手を振り解くため
足に回転をかけ振り切るキルア。




その際に掴まれていた箇所の肉を
フィンクスにちぎられてしまう。









フィンクス
ヒョォ…♪



キルアの捨て身の行動に思わず口笛を鳴らすフィンクス。


キルア
…………………っ


引き千切られた両足首からは痛々しく血がでていたが
今のキルアには痛みを感じている余裕はなかった。

キルア
(どうする…下の奴らが来る前になんとか逃げねーと…!)
ノブナガ
よぉ──ォ、フィンクス
キルア
!?
ノブナガ
なんでおめェがここにいる?
団長と一緒にお出かけじゃなかったのか?
キルア
(ここ四階だぞ…!?)

扉ではなく窓から現れたノブナガの存在に
驚くキルアは、挟み撃ちにされてしまい立ちすくんだ。
キルア
(二重尾行…!ヒゲと女には
知らされてなかったのか!やられた…!)
ノブナガ
さて、ニイちゃん。
いくつか聞きてェことがあるんだが
キルア
(…………………。)


自分よりも遥かに強いと確信ができる相手に挟まれ、
成す術をなくしたキルアは静かに目を瞑り
一緒に捕まってるであろうゴンと、




そして、行方の分からなくなったあなたの顔を思い出していた。
























to be…













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