☕️ side
紬希は 、村のみんなを見渡し、ぎこちなく笑った。
最後の最期に 、村長へ向けて
感謝の言葉を口にし 、暗闇へと消えた。
私 、日比 來春 は ありったけの怒りを抑えようと、
必死に下唇を噛んだ。なんで、なんで 紬希なの?
そう問い詰めて、殴りかかってしまいたい思いを
必死に堪える。悔しくて悔しくて、涙が溢れた。
私と紬希は幼馴染だった。
成績優秀な優等生である紬希と、学校一の問題児の私。
言い争うこともあったし、沢山喧嘩もした。
だけど紬希は、私にとって一番の親友だった。
なんで紬希じゃなくちゃいけなかったの?
どうして、どうしてどうして?どうして?
泣きじゃくっていた私に声をかけてきたのは
三年の先輩である家門先輩。
優しさでかけてくれた言葉なんだろうけど、今の
私にとっては 、八つ当たりの材料にしかならない。
自分の顔なんて気にする余地もなく、
顔を上げて家門先輩を睨みつけた。
私の気持ちなんて、分からないくせに 。
視界がぼやけてよく見えなかった、けれど家門先輩は確かに、確かに 、悲しそうな、辛そうな、何かを必死に耐えているような、そんな顔をしていた。
見計らったかのように、母が声をかけてきた。
語気が強く、明らかに苛立っていることが見て取れた。温厚な母にしては珍しいことだ。
母は家門先輩に向き直り、分かりやすく、にっこりと笑顔を作ってみせる。
母に手を取られ 、家門先輩に挨拶する間もなく
その場を去ることになってしまった。
なんだか申し訳ないな、という思い。
先輩のさっきの表情への疑問。
そして、紬希が消えてしまったことへの喪失感。
この三つの思いで、私の頭の中は大渋滞していた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!