第20話

風邪っぴき兎
431
2024/01/01 16:04












紫さーん?
寝室のドアを開けると顔の赤い兎と目が合った。
いつもキリッとしている目はとろりと溶けていておでこに冷えピタがはられている。
ごほっと咳をして鼻声で兎は喋り始めた。
さ"とみくんみんなは?
もうすぐ来るってよ
兎の頭をがしがし撫でながら言う。





数十分前、俺はグループLINEに"紫くん熱出たから俺の家来て"とラインを入れた。


するとすぐに既読がつき"秒で行きます"と青い猿から返信がきて、各メンバーもそれに続きメッセージが送られた。


俺の時はすぐに既読つかないくせにと不服に思っていると可愛くないくしゃみが部屋に響く。
…寒い?
寒すぎる。ここは北極…?
あー俺の家ですね




北極なわけないだろと思いながら上から兎に覆い被さった。
半年前から付き合っている俺たち。
付き合った理由も兎が無理して風邪引いたからだった。ひょろひょろの体でどこ行くのやら見守っているといきなり倒れた兎。
これがきっかけって言う訳じゃないけど今まで溜めていたコップが溢れたみたいに兎に恋に落ちた。
真っ赤な顔、うるうるな目、掠れている声、いつもこの先の何もかも見透かした瞳をしているのに、行先もない困りに困った瞳をしている兎をみて守りたいと素直に思えた。





今の彼が半年前の彼と重なる。
あったかいでs
どんどんと玄関から結構なボリュームの音がした。
桃くん早く開けて!!
息遣いが荒いメンバーをみるとなんだか笑えてくる。
ななにちゅっとキスをして玄関に俺は向かった。













もう駄作しか生み出せない

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