武道と話した後、ダッシュでアジトまで帰ってきた。
中には幹部がいると思い、できるだけ人が入らないような裏口からアジトに入った。
足音を立てないよう入ると、机に置き手紙。
『俺、三途、蘭で情報流してる奴らを殺りに行ってくる
鶴蝶と竜胆は取引でアジトにいない
ココは事務所にいるけど膨大な資料を作ってるから邪魔しないほうがいい
多分深夜くらいに帰ると思うから飯は自分でなんとかしろよ
戸締り厳守』
紙にはそう、マイキーの字で記してあった。
深夜までは、ほぼ一人みたいなもんだ。
よかった。誰とも顔を合わさないから楽だ
なんでだ、私
『誰とも顔を合わさないから楽』……?
なんでそんなことを思うんだろう
今までは幹部たちが好きで顔を合わせたくないとか考えたことも無かった。
もう、私の心は黒い衝動に蝕まれている。
そう確信した
もう戻れないのかな…
ココが作業しているという部屋の前を通り過ぎる。
鬼のようなタイピング音が聞こえてくるんだけど…。
ていうかこんなに早くタイピングできるって何?ココやばいな
なんてことも思いながら、心の隅で
『顔を合わせることがなくてよかった』
なんて思っちゃっているのだから、
黒いアイツが追いかけてくるように感じ、階段を駆け上がった。
急いで自分の部屋のドアを閉める。
なぜか勝手に涙が出てきた。
ベッドの上でうずくまって横になると、少しだけ心が安定する気がする。
私は知らなかった。
自分自身の精神がどれだけ危ない状態なのか
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。