第8話

閑話 嫌いなあの子
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2025/12/10 07:00 更新
大江知世が、嫌いだった。
大江 知世
大江 知世
小塚先輩!ごめんなさい!
資料作るの忘れちゃって……!
小塚 梅子
小塚 梅子
……いいのよ。気にしないで。
ドジで要領が悪くて、いつも私に迷惑ばかりかけるあの子。
大江 知世
大江 知世
よかったら、退勤後ご飯行きませんか?
小塚 梅子
小塚 梅子
……あのねえ!!
そういうのは、資料作りを終わらせてから言ってくれる?!
大江 知世
大江 知世
ごめんなさい…!



小塚 梅子
小塚 梅子
はあ………。
頭を冷やすために廊下に出た私は、ため息をついた。
あんなふうに感情的になるのはいけない事だった。
自動販売機でカフェラテを買った私は、九条くんに声をかけられた。
偶然用事があってうちの部署に来ていた彼は、さきほどのやり取りを見ていたようだ。
九条 玲衣
九条 玲衣
大江も大江なりに頑張っているんだから、さっきみたいに言ったら可哀想ですよ。
私は、大江と違って嫌いではないけれど九条礼衣という男が得意ではなかった。

柔らかな印象を与える立ち振る舞いに、穏やかで優しい笑顔。
その瞳の奥がひどく冷たいように私には見えた。
小塚 梅子
小塚 梅子
そうね…………。
……不気味な優男。
彼と交際していた女性が立て続けに行方不明になっているという奇妙な噂があるのも怖いし、あまり関わりたくない相手だ。
九条玲衣はそのまま去っていった。
三崎 朱夏
三崎 朱夏
小塚さん、お疲れ様です。
小塚 梅子
小塚 梅子
三崎くん…だっけ。
お疲れ様。
いつの間にか隣に立っていた彼に少し驚き挨拶を返す。

三崎朱夏。隣の部署の新入社員。私の2つ年下で、とても優秀だと噂を聞いている。そのきれいな見目にうちの部署の後輩たちが騒いでいたのを見た。
……そういえば、大江知世とも同い年だっけ。本当に、彼の爪の垢を煎じて飲んで欲しい。
三崎 朱夏
三崎 朱夏
さっきは九条先輩と何を話していたんですか?
小塚 梅子
小塚 梅子
いや……大した事は話してないよ。
何も知らない彼に、大江知世との出来事を説明するのは面倒だった。
三崎 朱夏
三崎 朱夏
小塚先輩と九条先輩が話してるのが珍しいなって思って。
仲良いんですか?
小塚 梅子
小塚 梅子
うーん。部署が違うと関わり合いが少ないからなぁ…。
三崎 朱夏
三崎 朱夏
へぇ…。
こちらをじっと見つめたあとふいに微笑んだ三崎は軽く会釈をして立ち去っていった。
憂鬱な気分で仕事場へ戻る。
田沼 三郎
田沼 三郎
あれ?梅子じゃん。
……最悪だ。
田沼 三郎
田沼 三郎
なぁそろそろ機嫌直せよ。
もう俺謝ったじゃん。
小塚 梅子
小塚 梅子
……機嫌の問題じゃない。
もう貴方に好意はないから、そういうのはやめて。
2ヶ月前まで付き合っていた彼は、別の女と二股した挙句開き直って私が悪いと言い出したクズだ。
別れたのにいつまでもこうして付き纏ってくる。
田沼 三郎
田沼 三郎
はあ?調子乗んなよ。
そうやってバカみたいに真面目なとこ、うぜえよ。
だからお前はみんなに嫌われてるんだよ。
小塚 梅子
小塚 梅子
……っ。
こんなの私の気を引こうとしているだけのくだらない妄言だ。
分かっているはずなのに、傷ついた自分がいた。
田沼 三郎
田沼 三郎
大体お前は付き合ってる時から余計な世話ばっかり焼いて口うるさいし。
田沼 三郎
田沼 三郎
お前みたいなのを好きな奴なんていねぇよ。
………。
大江 知世
大江 知世
撤回してください!!
キッと力強く彼を睨みつけた大江は私を庇うようにして、私と彼の間に立ち塞がった。
田沼 三郎
田沼 三郎
あ?何、君…。
大江 知世
大江 知世
こ、小塚先輩は!!
いつもバカな私に優しく教えて面倒を見てくれています!
大江 知世
大江 知世
おしゃれでコミュ力も高くて!
仕事もできて!!
大江 知世
大江 知世
あなたみたいな人が、分かったように言わないでください!!
小塚 梅子
小塚 梅子
………。
部が悪いと悟ったのか、田沼は小さく舌打ちをするとそそくさと立ち去っていった。
大江 知世
大江 知世
先輩、さっきはごめんなさい。
私いつもミスばっかりで…。
小塚 梅子
小塚 梅子
…っううん!
小塚 梅子
小塚 梅子
私の方こそ……怒鳴ってしまってごめんなさい。


大江知世が嫌いだった。

でも今は嫌いってわけじゃ、ない。
作者
作者
✨わくわく☆あとがきコーナー!!✨
作者
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今話は、小塚視点の過去回想でした!!
今まで九条視点だとよく分からなかった(であろう)小塚という人物について書いてます!
作者
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次話では、引き続き小塚視点で、小塚の思惑が明かされます!!
作者
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