*・゜゚・*:.。..。.:*・
アイエンside
夜、1人で研究所の屋上に出る
今夜は満月
大きくまん丸の月が、闇夜を照らしていた
アイエン
「きれい……」
ーガチャ
バンチャン
「あれ…イエナ、何してるの?」
アイエン
「わっ、チャニヒョン…」
思いがけず、やってきたのはチャニヒョンだった
片手にブランケットと小さなランタンを持っている
バンチャン
「…今日、月綺麗だよね
1人でお月見でもしようかと思ってたけど、イエナがいるとは」
アイエン
「ふふっ…じゃあ、一緒に……」
ヒョンの隣に腰掛ける
さりげなく肩にふわふわのブランケットをかけてくれた
ヒョン…やっぱりあったかい……
バンチャン
「イエナは月見るの好きなの?」
アイエン
「んー……」
好き…なのかな
アイエン
「……アッパとオンマが生きていた頃…一緒に月を見たような気がするんです」
ユンガの実験で、ほとんど消されてしまった両親との記憶
それでも唯一、漠然と残る小さな思い出があった
アッパとオンマと、小さな家の窓から今日みたいな満月を見たような……
アイエン
「まぁ…僕の気のせいだと思いますけどね
その時、2人がどんな顔をしていたかももう覚えていないですし……」
アッパとオンマがいたのは、もうずっと昔の話
2人が死んでしまった時、僕が寂しさから作り出した記憶だと言われても否定できない
バンチャン
「…僕は気のせいなんかじゃないと思うけどな
イエナにとって、それが大切な思い出なら」
チャニヒョンがそう言って、優しく笑った
胸の中が、じんわりと温かくなって
なんだか少しだけ、寂しくなった
前から思ってたけど、チャニヒョンの笑顔って……
アイエン
「でも今は、こうしてチャニヒョンとお月様を見れて…
なんだかアッパ達との思い出と重なったみたいです……」
ヒョンの笑った顔が、僕のアッパに似ていた
優しくて、温かい
ヒョンと初めて出会った時も
そうやって笑ってくれたよね……
バンチャン
「イエナ…寂しいなら、いつでも寂しいって言ってもいいんだよ
急いで大人になろうとしなくてもいいんだから」
アイエン
「っ……」
チャニヒョンの言葉に、つんと胸を突かれたような気がした
両親が亡くなったばかりの頃も、必死に悲しい気持ちを押し込んで
ずっと、表に出すことはなかった
でも……
アイエン
「寂しくなる時もあるけど…寂しくないんです
だって…ヒョンがいるから」
小さい頃の僕に、できるなら教えに行ってあげたい
大丈夫、いつかかけがえのない家族ができる
心から愛してくれる人に、出会えるよって……
チャニヒョンの大きな手が、優しく僕の頬を撫でる
バンチャン
「ずっとイエナには心から笑っていてほしいんだ
イエナの笑顔は、皆を幸せにできるから……」
僕の、笑顔…
アッパとオンマがくれた、1番のプレゼントだと思う
アイエン
「うん……ヒョン達が守ってくれた僕の笑顔、大切にする」
こんなに毎日が幸せなのは
全部、皆が沢山愛してくれたからだよ
だから、僕も……
ーガチャ
ハン
「あれ……チャニヒョン…と、イエナ?」
スンミン
「なんでいるのー?」
アイエン
「えっ」
突然、屋上のドアが開きヒョン達が顔を覗いた
ハニヒョンに、スンミニヒョン…
あれ、もしかして皆いる?
フィリックス
「ちょっと、2人でお月見してたの?
ずるいよぉー!」
チャンビン
「そーだぞ、こんな綺麗な満月を独り占めとは…」
屋上にぞくぞくと上がってくるヒョン達に、チャニヒョンが呆れるように笑った
バンチャン
「あーあ、イエナの笑顔も独り占めしようとしてたのになぁ……」
リノ
「ちょっと、抜け駆け禁止ですよ
久々にイエナに会えて、嬉しいのはヒョンだけじゃないんですから」
皆の賑やかな声が静かな夜の空に響く
綺麗な満月も、そんな僕たちを微笑んでいるみたいに見えた
アイエン
「…………」
アッパ、オンマ…見えてる?
僕、大人になれたよ
こんなに自分を愛してくれる人達に出会えたよ
今はね、パンを作るお仕事をしてるの
腕に自信はないけど、今日ヒョン達が美味しいって食べてくれたからちょっと信じてみる
いつか僕もパンを通してでも、なんでもいいから
誰かに、愛を届けられるようになれるかな……
だからアッパ、オンマ
僕が誰かを幸せにできるその日まで
ずっと、僕を見守っててね……
リノ
「大分冷え込んできたなぁ…
イエナ、一緒にココアでも作らないか?」
アイエン
「わぁ…作りたいです!」
これからも、ヒョン達の側で
幸せな日々がずっとずっと続きますように
心の中で小さく…でも、ずっと強く
そう願った
*・゜゚・*:.。..。.:*Fin
Next…?⤵︎⤵︎⤵︎













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。